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溝口貴弘(モーションリブ)

2021年11月25日 00時00分更新

文● MIT Technology Review Japan

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感触や力加減を制御するチップを開発。繊細な作業が可能なロボットで人手不足の課題解決を支援する。

少子高齢化による人口減少が止まらない日本では、さまざまな産業で深刻な人手不足が続くことが予測される。人間に代わるロボットの導入はその解決策の1つだが、現在産業分野で活躍しているロボットは、人間の何十倍ものパワーを発揮して、製造工程の一部を自動化するために作られた機械だ。

そのため、従来の産業用ロボットは柔軟物や不定形物の取り扱いが難しく、繊細な作業が必要な分野では普及が進んでいない。そこで溝口貴弘は、「力触覚技術(リアルハプティクス)」を容易に実現するICチップ「AbcCore(ABCコア)」を開発し、ロボットが活躍できる場を広げようとしている。

リアルハプティクスは、溝口が所属していた慶應義塾大学で発明された、機械に「触覚」を与える技術だ。​​感触や力加減をデジタル化し、人間の操作によって微妙な感覚を送信したり、あらかじめ計測した力加減を組み込んだりして、ロボットで再現する。これによって、職人や外科医が担ってきた繊細かつ力加減が重要な作業をロボットに任せられるようになる。

溝口は、リアルハプティクスの実装を容易にするためにモーションリブを設立し、リアルハプティクスを搭載した力触覚コントローラーとしてAbcCoreを開発した。AbcCoreはロボットのモーター制御部に組み込むことで、リアルハプティクスを簡単に利用できるようにするもので、モーターにかかる負荷を独自の推定アルゴリズムによって算出する。およそ70社の設備や製品で実験中で、一部は実用化されている。

繊細な力加減が可能なロボットが、介護や農業、食品製造業といった人手不足に悩む業界を救うと溝口は考えている。また、リアルハプティクスは災害時での危険な環境下や、高温・高湿など過酷な環境下での繊細な作業からも人間を解放することになるだろう。リアルハプティクスが解決する課題は、人手不足に止まらない。

(元田光一)

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