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業界人の《ことば》から 第452回

ブロードバンドは人権なのか、オードリー・タン氏が取り残さない社会を作る技術を語る

2021年09月28日 11時00分更新

文● 大河原克行 編集●ASCII

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モノやコトの消費から「イミ」と「将来」について考えるとき

 タン氏は、シチズンテックが開発した、あるアプリについても言及した。

 「スーパーマーケットで売られているクッキーには、価格として、金銭的な価値が表示されているが、シビックテックの技術者が開発したアプリを使うと、そのバーコードをスキャンすると、金銭的価値の代わりに、環境負荷に関する地球的価値を表示することができるようになった。1箱のクッキーから生産する際に排出される二酸化炭素量や、汚染具合を表示し、地球的価値を知ることができるというものである。その結果、価格は安くても、地球的価値ではマイナスになってしまう商品であることを理解できる場合もある。これは、いま、私たちは、クッキーを安く入手したが、将来の世代が代わりにコストを払うことになってしまう可能性を指摘するものになる」

オードリー・タン氏

 タン氏は、「私は同世代の人たちだけでなく、子孫や後世の人たちが、さらに革新していくことを念頭において、完璧な祖先になるのではなく、グッドイナフ(程よい)祖先になるように努力している。これが私の原動力である。後世の人たちへの敬意も大切にしている」としながら、「提案をするたびに、これは、将来の世代から選択肢を奪うことになるのか、それとも選択肢を与えることになるのか、と自問自答している。また、今日のニーズを満たすために、将来の世代の幸福を犠牲にしていないのか、これによって、将来の世代の口座に貯金ができるのかといったことも自問問答している」という。

 デジタルは、いまの世界を良くするだけでなく、将来を豊かにするためのテクノロジーでなくてはいけないというのが、タン氏の基本的な考え方だ。

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