AMD Ryzen 5 5650Uは6コア12スレッド処理対応でビジネスワークが軽快
価格は安いものの、実際の性能はどうなのか。そこで、プロセッサーにIntel「Core i5-1135G7」(4コア/8スレッド、2.4~4.2GHz)を搭載するノートPCを用意して処理能力を比較してみた。比較用に用意したノートPCは、レノボの「ThinkPad L15(Intel搭載)」だ。ディスプレイサイズこそ15.6型と「ThinkPad T14 Gen2 (AMD搭載)」より大きいが、そのほかのスペックはCPU以外、メモリーがDDR4-3200 8GB、ストレージが256GB PCIe/NVMe SSDと合わせてある。
まずはじめに、PCMark 10を利用してビジネス性能をチェックしてみた。PCMark 10ではビジネスシーンで利用される実際のアプリケーション動作を再現しつつ性能を評価するため、そのスコアがビジネスシーンでの快適度を直接示す指標となる。
結果を見ると、Core i5-1135G7搭載ノートPCの総合スコアが4607だったのに対し、Ryzen 5 5650U搭載のThinkPad T14 Gen2は5431と圧倒するスコアが得られた。これだけの大差がついた最大の要因となるのが、CPUコア数の違いだ。
CPUコアの動作クロックはいずれも最大4.2GHzと同じだが、Core i5-1135G7のCPUコアは4コア8スレッド処理に対応しているのに対し、Ryzen 5 5650Uは6コア12スレッド処理対応と、コア数が2、スレッド数が4上回っている。これが、大きなスコア差となった直接的な要因だ。
また、純粋なCPUコアの処理能力を、CINEBENCH R23を利用して計測してみた。その結果は下に示したとおりだが、マルチコア、シングルコアのいずれのスコアもRyzen 5 5650UがCore i5-1135G7を上回った。
これまで、AMD製APUはCPUコアの処理能力がIntel製CPUに劣ると言われることが多かった。しかし、「Ryzen 5000」シリーズではアーキテクチャーと製造プロセス改良の結果、CPUコア処理能力でも競合のIntel製CPUを上回るとされており、CINEBENCH R23の結果もそれを裏付ける形となっている。
これらベンチマークテストの結果から、Ryzen 5 5650Uは競合よりも優れた処理能力を発揮し、非常に快適に利用できると結論づけていいだろう。
近年のビジネス系アプリは、複数のCPUコアを活用したマルチスレッド処理に対応しており、コア数やスレッド数の多いプロセッサーほど動作が速くなる。また、現在はリモートワークを行なう場面が増えており、リモート会議アプリを利用しながらWordやExcel、PowerPointといったOfficeアプリを同時に利用することも多く、プロセッサーの処理能力の差が快適度に大きな影響を与えるようになっている。
そのため、コア数やスレッド数の多いRyzen 5 5650Uでは、通常アプリの利用はもちろん、リモートワークも快適にこなせると言える。
内蔵グラフィックス性能もかなり高い!
続いて内蔵グラフィックス機能の描画能力を、3DMarkの「Night Raid」でチェックしてみた。結果は下に示したとおりで、スコアはCore i5-1135G7とほぼ誤差の範囲内で、拮抗していると言える。
また、定番3Dゲームベンチマーク「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」(以下、FFXVベンチ)も計測してみた。プロセッサー内蔵グラフィックス機能には非常に厳しいテストのため、解像度を「1280×720」に設定して計測したが、こちらはRyzen 5 5650UがCore i5-1135G7を上回るスコアが得られた。
この結果から、Ryzen 5 5650Uが内蔵するAMDのグラフィックス機能は現役最強クラスの描画能力を備えていると言っていいだろう。
モバイルノートPCに優れた3D描画能力が必要なのか、と思う人もいるかもしれない。確かに、ゲームをプレイする機会はほとんどないはずで、3D描画能力はそれほど高くなくてもいいと感じるだろう。
しかし実際には、WebブラウザのEdgeやChrome、Officeアプリなど、ビジネスシーンで利用するさまざまなアプリがグラフィックス機能を活用したアクセラレーション機能を搭載しており、グラフィックス性能の高さがそれらアプリの快適度を左右する。つまり、モバイルノートPCといえどもグラフィック機能の性能は無視できないのだ。
もちろん、カジュアルゲームで息抜きしたいという場合でも、グラフィックス性能が高ければ快適に楽しめることになる。そういった意味でもRyzen 5 5650Uは隙がないと言える。