全体を紙ヤスリで磨きます
リペイントするため、マキタの研磨専用ツール「充電式ランダムオービットサンダBO180DZ」に#240のペーパーを付けてザリザリと塗装を引っ剥がしたマイ中古モトコンポ。狭いところなどサンダーが使えない部分は同じく#240の紙ヤスリを使って手作業で塗装を落とし、そのあと全体を#400の紙ヤスリで磨きます。
見ての通り塗装が完全には落ち切っていないというか残ってる部分の方が多いぐらいですけど、このあと塗る下地用の塗料でグレー一色になるので、色が残っていても全然大丈夫。これ以上磨くとパーツそのもののプラスチック部分を削ってしまいかねないのでこのぐらいにしておきます。
全体的に紙ヤスリで傷を付けるこの作業は「足付け」といって、塗装する素材の表面を荒らすことで塗料を食い付きやすくします。細かい傷に塗料が入り込むみたいな感じですかね。
#240を使ったあと、より細かい#400で改めて全体を磨くのは、#240では荒すぎて深めの傷が付いてしまうためです。#400でもプラスチックにとっては結構荒いので細かい傷が残りますが、あとで下地塗料を塗った時にほぼ消えるので問題ありません。
この足付けの作業、ツルツルの面に塗装するとちょっと爪で引っかいただけで簡単に剥がれてしまうので、結構重要な工程だったりするんですよね。特に今回のように古い塗装が残っている場合、表面のクリア層が残っていると下地の塗料がうまく乗らなかったりするので、しっかりやらないと痛い目に合います。
……後述しますが、手を抜いたワタシはまんまとそんな目に合うわけですけれども(笑)。
塗ろうとする素材によっていろいろある下地塗料
足付けが終わったら次は下地塗料を塗ります。
下地塗料は金属やプラスチック、コンクリート、モルタル、サイディングボード、木部など、塗装する素材や用途によっていろいろな製品が存在します。
プラモデルが趣味のひとつであるワタシの場合、一番身近なのがプラモデル用のサーフェイサー。パテを溶剤で薄めたようなもので、表面の細かい傷を埋めて滑らかにする効果があり、ごくわずかですがプラスチックを溶かして食い付きます。グレーや白、黒、ピンクなど、上に塗る塗料の色に合わせて数種類の色の製品が出回っています。
金属に使うのはプライマー。プラスチックと違って金属は溶剤で溶けないので、接着剤のようにくっ付くことで上に塗る塗料の密着度を上げます。傷を埋めたい場合はこの上にサーフェイサーを吹き付けます。
もうひとつ、もしかしたら一般的にもっとも目にしやすいかもしれないのが、ホームセンターなどの自動車用塗料の棚にあるプラサフです。「プライマー+サーフェイサー」でプラサフ。名前の通り両方の役割を兼ね備えていて、これひとつで密着度のアップと傷埋めが可能です。模型では金属やレジンでできた部品の下地として使ったりしますが、溶剤が強力なためプラモデルの原料であるポリスチレンだと溶けてしまう可能性があるので注意が必要です。
その他の素材用としてシーラーやフィラーなどと呼ばれる下地塗料があります。ワタシは使ったことがありませんが、基本はどれも同じ。凹凸を滑らかにする、上塗りの塗料が吸い込まれないようにする、密着度を高めるといった役割を持っています。
プラモデル用のサーフェイサーを使います
カウルの素材はたぶんABS樹脂だと思います。ポリスチレンより耐衝撃性にすぐれ、曲げや引っ張りに強く、機械的強度が強いプラスチックで、加工が容易、表面に光沢を持たせられる、塗装やメッキも可能など数多くの利点を持っています。
クルマやバイクの内外装のほか、家電品やパソコンなどのケース、家庭用品、生活雑貨、オモチャなどありとあらゆるところで利用されていて、家にいると視界の大半に入り込んでくるぐらい。
短所は、耐光性が弱めで日光に当たっていると強度が落ちてしまう点です。それと、塗装がしやすいということは溶剤が浸透しやすいということで、塗料の食い付きがいい反面、小さい部品の場合は染み込んだ溶剤で脆くなってしまったりすることがあるので要注意です。
幸い、使い慣れたプラモデル用サーフェーサーがABSに対応しているので、それを下地塗料として吹き付けました。
使ったのはGSIクレオスの「Mr.サーフェイサー」の500番。これも紙ヤスリのように番手があって、数字が小さいほど粒子が荒くて傷を埋めやすく、数字が大きいほど粒子が細かく滑らかに仕上がります。
この500番は一番荒いタイプで、製品名のところに「大きなキズ用溶きパテ」と書かれています。溶きパテというのは、プラモデル用のパテを溶剤で溶いてドロドロの液状にしたもの。サーフェーサーというよりはパテを吹き付ける感じで、紙ヤスリで付いた傷を埋めるには最適です。用途欄にABSと明記されていて、安心してカウルに使えるのもポイントです。
傷がしっかり埋まったら1000番のサーフェイサーで下地の仕上げを行なうので、500番は下地の下地みたいな感じですね。
シワができてしまいました
塗料は1回塗りと明記されていない限り、基本的には薄く2、3回に分けて塗り重ねます。一度に厚く塗ると垂れたり固まりができたり、中がなかなか乾かず塗装の表面にヒビ割れができてしまうなんていうこともあるので、なるべく薄く薄く塗るのがコツ。
1回目は下の色が透けても気にせず、軽く吹き付ける程度で十分です。サーフェーサーはすぐ乾くので、15分ぐらいしたら2回目の吹き付け。今度はちょっと丁寧に、全体が均一な色合いになるように吹き付けていきます。そしてまた15分待って、まだ薄いかなという部分があったらそこにシューっと吹いたら完了です。
……が、ここで問題が!
なんと、サイドカウルの真ん中あたりにあるステップの収納部に、細かいシワができてしまいました。これは「リフティング」。「チヂミ」とも呼ばれる現象で、発生の原因は塗り方や塗料の組み合わせが悪いことなど。でも今回は自分のたぶん手抜きのせいです。
手抜きでクリア層を残したせい
この部分は狭くてツールで磨けなかったので、手作業で塗装を落としたんですよね。でもクリアが厚いのか表面に傷が付いた程度でした。それなのに、まいっかと#400の紙ヤスリでササッと磨いて終わりにしていたため、どうやらクリア層が丸ごと残っていたようなのです。
それでなぜシワができるのかというと、それは塗料が縮むせい。
塗料が乾き始めると、乾いた部分が縮もうとします。その際、内部は半乾きですが、ちゃんと食い付いていれば動くこともなく、そのまま全体が乾燥していきます。
問題は塗料が十分に食い付いていない場合で、ツルツルのクリア層があると内部の塗料がクリア層の上を滑ってしまい、表面が縮もうとする力をその場に押しとどめることができず、結果として表面が縮んでシワになってしまうというわけです。
また、ラッカー系塗料の上にウレタン塗料のクリアが塗り重ねられている時、その上にさらにラッカー系塗料を塗ると、「サンドイッチリフティング」という現象が起きてシワができてしまいます。
これはラッカー系塗料の溶剤がウレタンとその下のラッカー系塗料を溶かし、塗装面の境界が緩んで滑るのが原因。ツルツルなのか溶けているのかの違いはありますが、この場合も表面が乾いて縮もうとする力を押しとどめられず、シワができてしまいます。
一瞬このサンドイッチリフティングが起こったのかなとも思ったんですが、Mr.サーフェイサーの溶剤はそこまで強くないはずなのでたぶん違います。
いずれにしても、シワができてしまったのは事実なので補修しなくてはなりません。
ザラザラがなくなるまで磨きます
失敗しちゃったところをやり直す前に、まずは全体のヤスリがけをしてしまいます。サーフェイサーを塗ったところは表面に凹凸がありザラザラなので、全体を紙ヤスリで磨いて滑らかにしていきます。
使った紙ヤスリは#400よりさらに細かい#800。500番のサーフェイサーは傷を埋めるのが主な目的なので、傷部分以外のサーフェイサーは磨いてなくなっちゃっても構いません。磨いては指でスーッと撫でて確認するのを繰り返し、ザラザラを感じなくなるまで磨きます。
磨いていくと傷のところだけサーフェイサーが残り、きっちり傷を埋めてくれているのがわかります。せっかく塗ったのにちょっともったいないですけどね。
シワになったところはやり直します
この調子で全体に#800の紙ヤスリをかけ、シワになってしまったサーフェイサーは#400の紙ヤスリでしっかり磨いて完全に除去しました。
今度はそのあとも磨き続けて足付けは完璧。
この状態で1000番のサーフェイサーを吹き付けちゃってもよかったんですけど、ここでまた手を抜いてやり直しになったらめんどくさいので、ちゃんと処理をします。
サーフェイサーを剥がした部分にもう一度500番を吹き付けて乾かし、#800の紙ヤスリで磨きます。急がば回れです。いまさらですけど。
次回は下地の仕上げをして、いよいよ塗装に入ります!
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