タッチタイプもできない両手複数指パラレルキーボード入力の筆者だが、パソコンで文字を打つことが多かった関係で、昔からキーボードには多少人より関心があった。
一番最初に心を奪われたキーボードは、日本IBMの5576−003という米国で1985年からある技術の“バックリングスプリング”(座屈バネ機構)を採用した、伝統的なカチャカチャという音の聞こえる重量級キーボードだった。残念ながら20年ほど前に、手違いで断捨離してしまった。
その後、IBMの有名なM型キーボードのテンキーなしモデルであるスペースセーバーキーボード(現在も米UniCompが製造)を使っていた。しかし3年ほど前にCOMPUTEX TAIPEIで見かけたTEXのTrackPoint付きでチェリーのメカニカルMXの緑軸を採用した“Shinobi”と呼ばれるキーボードを気に入り、今はそれを愛用している。
多くのタッチ&フィーリングの違うキースイッチをそろえているチェリーの中でも、緑軸はPOSレジ用のキースイッチとして生まれたようで、その押下圧(おうかあつ)は、1985年のIBMバックリングキーボード(約70cN)やチェリーの名作である青軸(60cN)よりも重い80cNだ。
しかしMXメカニカルキースイッチは、底打ちするまで打ち込むことなく、4mmという深いストロークの途中の2.2mmあたりでスイッチが入り、キー入力信号を発する仕組みだ。なので押下圧の差ほど大きな反発を感じることなく、クリッカブルなタッチと爽やかな打鍵音で、快適なタイピングのできるベストキースイッチのひとつだ。
MXのキースイッチが大好きな筆者は、以前、仲間と遊びで作った“Reboot Anytime”「KACHA」(チェリーMX青軸を使用)という手遊びガジェットをクラウドファンディングしたことがある。その時のユーザー改造オプションパーツとして、当時はまだ数が少なく貴重だった緑軸を採用した。当時も今も、緑軸のMXキースイッチはおそらく一番高価で一番希少だ。
今回ご紹介するのは、そんな緑軸をはじめお気に入りのチェリーメカニカルキースイッチMX規格のキースイッチを活かす、10キー電卓の「TENTAKU」と名付けられた6桁電卓DIY組み立てキットだ。秋葉原近くの末広町にあるキーボード専門店の「遊舎工房」やクリエーターズマーケット「BOOTH」でもウェブ販売されている。
キットの同梱物はカット済みのアクリルパネルが3枚、LED表示装置付き回路基盤が1枚、後は2uサイズのキーキャップを安定して操作するためのスタビライザーが3組、TENTAKU底面のスリップ防止ゴム脚が4個だ。Cherry MX互換キースイッチ17個(ロープロファイル非対応)、テンキーキーキャップ(1uサイズ14個/2uサイズ3個)17個は別途購入手配が必要だ。組み立てにはほかに、はんだ、はんだごて、ドライバ、ピンセットなどが必要だ。

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