音の正確な方向が分かる左右バランスに注目
ゲーミングエディションの開発経緯についてAZLAに質問してみた。
その回答によると、実はすでにオリジナルのAZELも本国(韓国)ではゲーミング用イヤホンとして1万台以上販売するほどのニーズがあったということだ。そこでゲーミング専用でプロゲーマーたちと協業してアップグレードした製品を企画した。それをさらに日本向けに改良したのが、国内で販売されるAZEL Edition Gで、ケーブルのシールド処理の改善と硬化防止を意図したケーブルジャケットのグレードアップを図っているそうだ。
また、AZLAに「ゲーミングイヤホンに必要な条件とはどういうものか」と問い合わせてみた。
それに対しては「特に左右バランスの完璧さが最大のポイントだと考えている」という回答があった。左右バランスは音のピンポイントの定位、音の来る方向を知るために重要なポイントだ。方向感覚と敵の位置を探すためには左側と右側から聞こえる音が同じでなければならない。
サウンド自体の品質、周波数特性、マイクの感度など、重要な要素はもちろん多いが、開発過程で市販イヤホンの多くが左右のバランスを崩していることに注目したとのこと。AZEL Edition Gでは韓国一の人気プロゲーマーKim Seong-Tae以外にも様々なプロゲーマーやFPS専門ストリーマー(ゲーム実況者)と開発を行った。さらに、足音や様々な音を分析し最適な特性を研究したということだ。
実際に添付のLRバランス図を見ると分かるが左右(赤青の線)のずれている部分がほとんどない。これは高度にチャンネルマッチングが行なわれている証拠となる。
完璧な左右バランスを得るためにはチャンネルマッチングと呼ばれる製造上の工程が重要となる。これは高級イヤホンではよく行われている工程だが、その過程で数多くの廃棄品が出るためコストにはなかなか見合わない。一万円以下の価格帯の製品ではなかなか珍しいだろう。
AZEL Edition Gは、FPSにおいて最も重要な方向感覚をユーザーが完璧に得られるよう、業界最高レベルの左右バランステストを3回行い、検査をクリアしたイヤホンだけが出荷されるという。こうしたことからAZEL Edition Gがかなり綿密に計画され、手間をかけて開発されたことがわかると思う。
ゲーミングのために高級イヤホンが必要とされる証左
AZEL Edition Gの開発においては、V字型のサウンドバランスをベースにし、音の高低差や交戦時に近づいてくる相手の足音などを区別しやすい低域や中高域の再生ができるチューニングがなされているということだ。低域だけを強調したり、特定の帯域を不自然に強調すると、低域、中域、高域が一緒に聞こえる森の中や建物の上下区分(敵の位置)の把握が難しくなるそうだ。
AZEL Edition Gではマイク性能にもこだわりがあるという。イヤホンでFPSゲームをプレーすると、自分が射撃した銃声がマイクを通じてチームメンバーに伝わる現象があるが、これを解決するためにAZEL Edition Gではマイクとドライバー再生用のケーブルをシールド処理することにより解決したという。「こうした取り組みがなされた例はこれまであまりないのではないか」ということだ。
ゲーミング向けイヤホンと言うと単なる企画ものと思われがちだが、実は本格的な取り組みが必要とされることがわかる。こうした取り組みを経て世に出た製品がAZEL Edition Gと言えるだろう。
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