コンテナ保護のKastenはVeeamリポジトリに統合へ、“全方位型バックアップ”をさらに強化
Veeam、次期バージョンでRed Hat Virtualizationもサポート
2021年06月10日 07時00分更新
Veeam Softwareが2021年5月26日と27日、年次カンファレンス「VeeamON 2021」をオンラインで開催した。2021年下半期にかけての製品ロードマップを発表し、「Veeam Backup & Replication」や「Veeam Backup for Microsoft Office 365」などの主要製品次期バージョンにおける新機能予定を紹介した。
13四半期連続の2ケタ成長、バックアップ市場ではシェア2位に
最初に登場した同社CEOのビル・ラージェント氏は、「データの爆発的増加」というトレンドから切り出した。「(2020年には)59ゼタバイトのデータが生成されたと言われている。これは地球上のすべての人が、1人あたり7500ギガバイトのデータを生成した計算になる」。生成されたデータは当然、管理と保護、安全な保管を行い、いつでも必要なときにアクセスできる状態にしなければならない。「簡単なことではない。Veeamはこれを支援する」。
2006年設立のVeeamは、バックアップ市場においては後発と言えるかもしれないが、これまで急ピッチで成長してきた。5月初めに発表した2021年第1四半期の決算では、年間経常収益(ARR)が25%伸びるなど好調な業績を報告している。2ケタ成長は13四半期連続だ。
市場の評価も高まっている。Gartnerのマジック・クアドラント(データセンターバックアップおよびリカバリソリューション分野)では、すでに4回連続で「リーダー」に位置付けられている。さらに、2020年前半のIDC調査(データのレプリケーションおよび保護ソフトウェア)では、売上ベースでシェア2位となった。創業16年目にして初めてのシェア2位獲得だが、ラージェント氏は「もちろん満足していない。1位を目指す」と続ける。
「Veeamはモダンデータ保護を実現する――これがわれわれのフォーカスだ。単一のプラットフォームで、クラウド、仮想マシン、Kubernetes、物理マシンにあるデータをすべて保護することができる」(ラージェント氏)
ソフトウェア定義により実現する“全方位型バックアップ”
続いて登場したCTO 兼 製品戦略部門 SVPのダニー・アラン氏も、「Veeamは『モダンデータ保護』を実現する、最も信頼されるバックアップソリューションを提供するプロバイダを目指している」と述べ、その具体的な姿について説明した。
Veeamのバックアップ製品は、仮想マシン、物理マシン、クラウド、SaaSと対象を拡大し、この1年ではコンテナにもその範囲を広げている。重要データの「バックアップとリカバリ」だけでなく、ワークロードを最適な環境に移行できる「クラウドモビリティ」、パフォーマンスの「モニタリングとアナリティクス」、多様な環境での復旧やマイグレーションを統合する「オーケストレーションと自動化」、ランサムウェアなどのサイバー脅威から保護する「ガバナンスとコンプライアンス」の5つの要素を備えた、新たな時代のデータ保護=モダンデータ保護を実現するというのがVeeamのビジョンだ。
こうしたVeeamソリューションの柔軟さと広がりを可能にしているのが、「ソフトウェア定義(Software-Defined)」だとアラン氏は語る。この特徴により、ハードウェアやクラウドプラットフォームに依存しないソリューションを実現している。「ソフトウェア定義がわれわれの差別化要素となる。それぞれの技術は特徴が異なり、顧客は自社に最適な技術を利用できる。Veeamはそこに対してバックアップと復旧を提供する」(アラン氏)。
さらに、システム規模に関係なく同一のソフトウェアでカバーする「シンプルさ」、80種類以上のプライマリストレージ、85種類以上のセカンダリストレージ、37種類のオブジェクトストレージをサポートする「柔軟さ」、“It Just Works”=とにかく動作する「信頼性」、という3つの特徴も紹介した。
こうした戦略やソリューション特徴が功を奏して、旗艦製品である「Veeam Backup &Replication(VBR)」のアクティブインストール数は100万を超えた。「これはデータ保護市場では最大のフットプリントだ」とアラン氏は胸を張る。
この1年間で、Veeamでは17ものプロダクトリリースを行っている。こうした迅速なリリースができるのは、「ソリューションがネイティブで開発されているからだ」とアラン氏は説明する。VMware向けソリューションならばVMwareの、AWS向けならばAWSの、それぞれのネイティブ機能(APIなど)を活用して開発を進めるという意味だ。
「Veeamはモダンデータ保護のアプローチとして、ネイティブソリューションを構築している。それにより、ソリューションを目的に合わせて設計・構築でき、高速にイテレーションできるからだ」(アラン氏)
そして、こうしたネイティブソリューション群を統合管理、オーケストレーションするのが「Veeam Platform」だ。この共通プラットフォームには、旗艦製品のVBRに加えて、DRやマイグレーションを管理する「Veeam Disaster Recovery(DR) Orchestrator」、モニタリングとレポートの「Veeam ONE」が含まれる。
さらには、これらのソリューション群をマネージドサービスとして提供したいプロバイダー向けに「Veeam Service Provider Console」も提供する。現在は1万社以上のサービスプロバイダーが、マルチテナント環境を通じてエンドユーザーに“サービスとして”Veeamソリューションを展開している。
なお基調講演の中では、“VBRの父”と呼ばれる同社 製品管理部門SVPのアントン・ゴステフ(Anton Gostev)氏が、Veeam Platformの今後の予定として、オンプレミスのオブジェクトストレージを活用するユースケースにフォーカスした機能を強化することなどを明らかにしている。
次期VBRはRed Hat Virtualization(RHV)もサポートへ
VBRが対応する仮想化プラットフォーム(ハイパーバイザ)に「Red Hat Virtualization(RHV)」が追加される予定も発表された。Veeamではこれまで「VMware vSphere」と「Microsoft Hyper-V」、そしてRHVと同じKVMベースの「Nutanix AHV」をサポートしてきた。今回、エンタープライズやサービスプロバイダーといった顧客からの要望に応え、第4の対応ハイパーバイザとしてRHVを追加する。
これにより、エージェントなしでRHV仮想マシンをイメージレベルでバックアップ/リカバリすることができるようになる。さらに、RHV仮想マシンにおいても、バックアップリポジトリでの管理の一元化、CBT(変更ブロックのトラッキング)による効率的なデータ保護なども実現する。RHVサポートは今年夏から提供開始する予定だ。
VBO v6はセルフサービスポータル導入でユーザー自身が操作可能に
このほか、既存製品の次期バージョンや新機能の予定も明らかにした。
Microsoft 365(Office 365)向けの「Veeam Backup for Microsoft Office 365(VBO)」の次期バージョン(v6)では、エンドユーザー自身でリストア操作ができるセルフサービスポータルを導入する予定だ。たとえば誤操作で削除してしまったファイルやメールの復元を、管理者の手をわずらわせることなくユーザー自身で実行できる。
また、VBOのバックアップデータを保存するストレージで、従来の「Azure Blob」ストレージに加えて「Azure Archive Storage」をサポートする。これにより、バックアップデータ長期保管時のコスト削減を実現する。
なお、VBOはVeeam史上で最も急速に成長している製品だという。売上高は前年比220%増、17万5000以上の企業がダウンロードしており、アラン氏は「Office 365のデータ保護市場において、Veeamは最大のベンダーだ」と語った。
なお、パブリッククラウド向けのバックアップ製品(Veeam Backup for AWS/Microsoft Azure/Google Cloud)においても、それぞれ各社のアーカイブストレージサービス(Amazon S3 Glacier/Glacier Deep Archive、Azure Archive Storage、Archive Cloud Storage)に対応予定であることが発表されている。
さらに、これらのクラウド向けデータ保護製品において、AWSのファイルストレージ「Amazon EFS(Elastic File System)」やMicrosoftの「Azure SQL」にもサポートを拡大することも明らかにしている。
KastenとVeeam Platformの統合が始まる
最後にアラン氏は、「次世代のIT」としてコンテナ環境に対する戦略を語った。
「業界は現在、変革期にある。この変革はコンテナをベースとしている」(アラン氏)。昨年6月のVeeamOn 2020では、コンテナのデータ保護/管理ベンダーKastenとの提携を発表し、新たにコンテナ領域もカバーしていく姿勢を明らかにしていた。その後、昨年10月にVeeamはKastenを買収し、自社製品として正式にコンテナ保護をラインアップに加えた。
Kastenの買収についてアラン氏は、「人は短期的な変化を過大評価する一方で、長期的な変化を過小評価する傾向がある。次の10年はコンテナの時代になるが、これ(この長期的な変化)は大きなインパクトをもたらすことになる」と述べ、市場に先んじる姿勢を強調した。
アラン氏は、コンテナはステートレスで永続的ではなく一時的なものであり、移植性が高いこと、DevOpsとの相性が良いため迅速な開発と展開による最新機能の提供を可能にすることなど、コンテナの特徴を説明した。Veeam自身も、コンテナを使った開発により最新機能のリリースを高速化させているという。
Kastenは今年4月末、Kubernetesイベント「KubeCon」に合わせて最新版の「Kasten K10 v4」を発表しているが、今回のVeeamOnでは、新たにVeeamストレージリポジトリとの統合計画を披露した。
これにより、VeeamとKastenのバックアップデータを一元的に管理することが可能になり、オンプレミスストレージも含む保存先が選択可能になる。また、Veeamによるポリシー管理の中にKastenのコンテナワークロードも含めることができるようになる。