IT、OT(制御技術)、プロダクトの掛け算が強み
Lumadaの立ち上げ以降、日立では、「IT×OT(制御技術)×プロダクト」という言葉を用い、この3つを同時に提供することが日立の強みであると表現することが増えている。また、2021年度以降の事業方針では、「IT」「エネルギー」「インダストリー」「モビリティ」「ライフ」という5つの事業セクター、自動車部品を製造する「日立Astemo」と連携し、それぞれの領域における社会の課題と企業経営の課題を解決することを強調しており、それを具現化するのがLumadaということになる。
「様々なプロダクトを実際に提供しているからこそ、現場でのデータの重要性を理解し、OTやITを使って、顧客や社会の価値に貢献できる。この一連の流れをトータルソリューションとして提供できるのが日立の強みである」(小島次期社長)とする。
Lumada事業の2020年度売上収益は1兆1000億円。これを、2021年度には、1兆6000億円に拡大する考えであり、さらに、東原会長兼社長兼CEOは、「私のイメージでは、2025年にはLumadaの売上収益は、2兆数1,000億円になる」と予測する。
この成果と計画からも、Lumada事業は着実に成果をあげ、様々なセクターとの連携を推進しており、そのベースに、SIの体質変化の成果があることがわかる。小島次期社長も、「協創型にしていく点では、相当進んだと認識している」と自己評価する。
そして、小島次期社長は、「データやデジタルが世界を大きく変える時代が訪れている。日立の使命は、データとテクノロジーをフルに使って、社会インフラを革新し、人々の幸せな生活を支えることであると考えている。データから新たな価値を作り、それを顧客や社会に届けることを、これからも追求していく」と語り、「日立を、社会イノベーション事業のグローバルリーダーにすることに全力を注ぐ」と、今後の方向性を示してみせた。
3年間で最大2.5兆円の投資する日立の中で
日立製作所は、現在取り組んでいる「2021中期経営計画」で、3年間に2兆円~2兆5000億円を投資するという積極的な拡大策を打ち出し、先ごろ発表したGlobalLogicの買収では、国内電機業界では過去最大となる1兆円規模(96億ドル)の投資を行った。
東原会長兼社長兼CEOは、「GlobalLogicの買収により、Lumadaを軸としたグローバルデジタルプラットフォームを構築し、これによって、日立の各ビジネスユニットの成長戦略を強化していくことになる」と意気込む。
また、2020年7月には、エネルギーソリューション事業を行う日立ABBパワーグリッドを設立し、80.1%を出資。これに伴うABBからの事業買収額は、68億5000万ドル(約7400億円)であり、2023年以降には、残りの19.9%の株式を取得して完全子会社化する予定だ。
さらに、2021年1月には、自動車機器事業を行う日立Astemoを発足する一方で、上場子会社であった日立化成や日立金属の売却といった大規模な事業ポートフォリオの変革を実施。今後、日立建機の事業再編が注目されている。
東原会長兼社長兼CEOは、「日立はデジタル化の方向に進んでおり、それとは異なるバランスシートの流れで成長していくものは、連結から外すことにした」と、構造改革の基本姿勢を示しながら、「資産の入れ替えはかなり進んできた。私のイメージでは、9割5分は終わったと考えている」とする。
小島次期社長も、現在の日立の状況を、「社会イノベーション事業をグローバルに展開するためのアセットが揃い、自分の力で成長することが問われるフェーズに入ってきた」と表現。「自らの力で成長する際に、最も重要なのが研究開発分野であり、そこに改めて力を入れていきたい」とする。
技術の日立を形にできるか
国産5馬力モーターの開発でスタートし、111年の歴史を持つ日立製作所の成長を支えてきたのは、まさに「技術」である。2021中期経営計画で目指した構造改革がほぼ完了したいま、改めて「技術」にフォーカスするのは、今後の成長戦略の上で確かに重要なことだ。そこに、研究開発部門出身の小島氏が社長に就任するというのは、まさに絶好のタイミングである。
日立の成長の基盤となる「技術」と、成長の原動力となる「Lumada」を最もよく知る人物の登板ということになる。
「日立製作所が持っている失敗を恐れない起業家精神や、挑戦心を高揚させたい。それが、スピードをあげるのには近道である」と語る小島次期社長の経営執行の手腕に注目が集まる。
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