デザインディテールと“体験の質”へのこだわり生み出すiMacの魅力
話をいったん、iMacに絞り込もう。
24インチ版iMacを見て感じたのは、iPadにおけるiPad Airの位置付けとの近似性だ。iPad Airがそうであるように、24インチ版iMacは必要十分以上の高性能と、ディスプレー、マイク、スピーカー、カメラなどへの並々ならぬこだわり、デザインディテールへの細かなこだわりなどが読み取れる。
有線LANのコードが見えないようにと電源アダプタ側にコネクタを設定し、本体と電源の間は美しくデザインされたコード1本で接続。方向性もなく軽く近づけるだけで装着できるACインレット(マグネットは強力で従来の電源インレットと同じ力をかけなければ抜けないよう設計されている)など、単に薄く美しく仕上げられているだけではない配慮がなされている。
単純にコンピュータのスペックだけを見れば、24インチ版iMacはDisplay-P3に対応した色再現性の高い4.5KディスプレーにMac miniを内蔵し、USB 3.0のポートを追加した“だけ”が、実のところここまで色再現性の調整まで行われて出荷されている、高精細なディスプレーというのも見つからない。
しかし、たとえあったとしても全体のデザインや一体化されたシンプルな使い勝手が高品位ディスプレーとセットになって、さらに20万円以内で購入できるのだからお買い得に感じる。
マイクやスピーカーの音質に対するこだわりも、他メーカーにはないほどのものだ。最終的な判断は製品版で下したいが、ここ数年に発売されてきたアップル製品のオーディオ品質と、M1に内蔵されている最新の信号処理プロセッサの性能を考えれば、極めて高い品質を備えるだろうことは想像にがたくない。
当然、これは内蔵カメラの品質にも言える。iMacの27インチモデルに内蔵されていた1080P対応カメラはセンサーサイズが拡大され、より優れた画質が実現されていた。この新型センサーは24インチモデルに引き継がれているが、M1に内蔵された最新のイメージ信号処理で、さらにより高い画質と機能性どへとアップグレードされている。
こうした体験の質の統一と改善は、徹底したiPhoneの開発資産活用からもたらされている。
徹底したiPhone資産の活用
アップル製品の要はなんといってもiPhoneだ。もっとも多く販売され、もっとも多くのユーザーがいる。故にiPhone向けに新しいSoCが設計され、SoCの新機能とセットでOSやアプリケーションが開発されている。
OSとSoCをタイトに統合した開発は、例えば音声処理、スピーカー音質の改善、動画処理、カメラの映像処理、セキュリティ機能、AI処理などさまざまなジャンルに及ぶ。このiPhone向けに生み出される数々の価値を、iPhone以外にも適用することで、一貫性のある体験の質をもたらしている。
先に挙げたiMacの内蔵カメラ画質、スピーカーやマイクの音質などはまさにその典型的な例だ。それらはM1に内蔵されている最新のISPで信号処理される。
実はこれまでのインテルMacでも、T2チップを搭載することでiPhone向け開発資産が活用されてきた。Tシリーズと名付けられているが、Aシリーズとの共通性が高くiPhoneでの開発成果を応用しやすい。
それがM1となって最新世代の信号処理プロセッサが活用可能となり、より深く高い品質でその優位性をMacにも適応できるようになったわけだ。

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