アプリと関連データをまとめてバックアップ、他リージョンのクラスタに移動/リストアも可能
ネットアップ、Kubernetesアプリとデータの統合管理「NetApp Astra」発表
2021年04月01日 06時30分更新
ネットアップは2021年3月30日、Kubernetesアプリケーションと関連データの統合管理サービス「NetApp Astra」を発表した。4月1日から提供を開始する。記者発表会にはネットアップ 常務執行役員 CTOの近藤正孝氏が出席し、Astraの紹介とあわせて同社のKubernetes戦略についても説明を行った。
Kubernetesアプリと関連データを“丸ごと”バックアップ/リストア
今回発表されたNetApp Astraでは、マルチクラウド/ハイブリッドクラウド/オンプレミスといった環境を問わず、Kubernetes上に展開されたアプリケーションとその関連データを簡単な操作で丸ごとスナップショット、またはバックアップ/リストア/クローンできる。ネットアップによるフルマネージドサービス、SaaSとして提供される。
「Kubernetes上で『アプリ』と『関連データ』をまとめて管理するのは困難を伴うが、Astraでは、これを初めて解決でき、アプリケーションの開発や運用、データ活用を効率よく行えるように支援できる」
Astraではアプリケーションと関連データを、ひとつの“パッケージ”のようにして扱うことができる。同じリージョン内だけでなく、異なるリージョンにある別のKubernetesクラスタをリストア先にすることも可能だ。これにより、Kubernetes上にあるアプリケーションのディザスタリカバリ(DR)も容易に実現できる。
Astraにユーザーが管理対象としたいKubernetesクラスタを登録すると、Astraはそのクラスタに存在するすべてのアプリケーションが自動認識される。また、ストレージオーケストレーターの「Trident」が、ストレージとストレージクラスをプロビジョニングする。
ネットアップでは昨年7月からAstraをベータ版として提供してきたが、4月1日から正式版(製品版)として提供を開始する。当初はGoogle Cloud Platformのみの対応だが、Microsoft Azure、Amazon Web Services(AWS)、オンプレミス環境にも順次対応を拡大していく。参考構成価格は月額900ドル(アプリケーション数:常時使用2、緊急対応のみ5、アプリ開発4の構成)。
ビッグデータ分析基盤の最適化を図る「Spot Wave by NetApp」も発表
今回は同時に、クラウドサービスの利用状況をAI分析して最適化を図る「Spot by NetAppシリーズ」の新サービスとして、ビッグデータ分析基盤を最適化する「Spot Wave by NetApp」も発表された。こちらも4月1日から提供開始する。
Spot Waveは、「Apache Spark」環境でビッグデータ処理を行うアプリケーションの運用管理に際して、クラウドインフラのプロビジョニングや導入、自動拡張、最適化のプロセスをKubernetesクラスタ上で自動化するためのクラウドサービスとなる。分析基盤に必要なインフラのパフォーマンスとコストをAIで分析することで、最適なクラウドサービスプランを探し、自動的に切り替えることで、パフォーマンスを担保すると同時にクラウドコストの最適化を図ることができる。
このSpot Waveは、Kubernetesコンテナ環境の全自動スケーリングによるコスト最適化を実現するコンテナエンジン「Spot Ocean」の実績をもとに提供するものだ。このSpot Oceanではこれまで「Amazon ECS」「Amazon EKS」および「Google Kubernetes Engine(GKE)」をサポートしていたが、4月1日から新たに「Microsoft Azure Kubernetes Service(AKS)」もサポート対象とする。
なお、Spot WaveとSpot Oceanの利用料金体系は、クラウドサービスへの支払削減額に基づく“成果報酬型”となっている。ユーザーの利用環境で支払額をどれだけ最適化できるかについては、無料試用版に含まれる「Cloud Analyzer」で確認することができる。
「Kubernetes向けに、さらなる製品/サービスの拡充を進める」
ネットアップでは、Kubernetesアプリケーションの開発や運用向けに、今回発表されたAstraやSpot Wave、Spot Oceanのほかにもさまざまな製品を提供している。ネットアップの製品、サービス全体のオーケストレーションをする「Cloud Manager」、永続的なボリュームを格納する「ONTAP」、クラウドサービスとして提供する「Cloud Volumes Platform」、Kubernetesのモニタリングや分析機能を持つ「Cloud Insights」などだ。
「これらによって、あらゆるワークロード、あらゆるKubernetes、あらゆるクラウドやオンプレミスに対応する。すでに日本でもサイバーエージェントやヤフー、ZLabなどがネットアップの製品/サービスを利用して、Kubernetesを堅牢な環境で利用している。ただし、ネットアップの製品やサービスはこれで完成形ではない。Kubernetesに関して、さらなる拡充を進める」
コンテナアプリケーションに堅牢な永続データ環境を提供する「NetApp Trident」についても説明した。Tridentによって、コンテナ化されたアプリケーションからネットアップのストレージやクラウドストレージサービスへデータを保存したり、アクセスしたりすることが可能になる。近藤氏は「Kubernetesの最新版に合わせてリリースを継続的に行っており、Kubernetesに必要なストレージ自体の信頼性、動的プロビジョニングのサポートを実現できる」とした。
また、ハイブリッド/マルチクラウド環境とオンプレミス環境全体の可視化と最適化を図るサービス「Cloud Insights」も紹介した。フルスタックでの可視化とインサイトに基づく最適化、さらにはAIによるアクセスパターンの把握などにより、内部不正も含む脅威対応も可能になる。もちろんKubernetes環境にも適用できるとした。
「Kubernetes環境も監視し、ストレージ使用率をワークロードと簡単に関連づけて、リソース使用量を最適化。Kubernetesクラスタのなかで、どこに、どのレベルで問題があるか、サービスパスのなかでどこに問題があり、どのアプリが影響を受けるのかといったことを可視化できる」
近藤氏は、こうしたソリューション群の提供により、ネットアップではKubernetes環境に対してエンタープライズレベルのデータ管理、監視、インフラ最適化の手段を提供していくと語った。
「Kubernetesでは、ステートレスなアプリの開発運用実績は多いもののステートフルなアプリはまだ比較的少ない。アプリケーションデータの保護が複雑であること、データ保護やDRのための標準的な仕組みがないこと、運用面で監視が複雑になってしまうこと、負荷需要の変化が激しいアプリに対するコスト最適なインフラ設計が困難であること、クラウドスプロール/クラスタスプロールの状況が生まれやすいこと、といった課題がある。こうした課題を解決するために、ネットアップはKubernetesアプリの開発や運用において、エンタープライズレベルのデータ管理方法や監視方法、最適インフラ選択方法を提供していく」