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荻窪圭の“這いつくばって猫に近づけ” 第706回

富士フイルム 「X-T4」に望遠レンズ縛りで猫を撮影した

2021年03月30日 12時00分更新

文● 荻窪圭/猫写真家 編集●ASCII

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真正面から猫の大あくびズーム。妙に可愛いと思ったら犬歯がないのであった。2021年3月 富士フイルム X-T4

 X-T4にXF 70-300mm F4-5.6を装着して自転車で散歩に出たのである。散歩がてら猫に会えたらいいな、と、無謀にも望遠ズーム縛りである。

富士フイルムのX-T4+XF 70-300mm F4-5.6 R LM OIS WR。レンズフードも装着。その望遠性能の割にコンパクトで機動力高し

 今まで走ったことない道を走ろうと、ちょっとした裏道に入ったら鶏の鳴き声がする。近くに養鶏場なんてないはずだし、と気になってきょろきょろすると、鶏の声が聞こえてくる大きなおうちに猫がいたのである。

 かなりヨレヨレなんだけど、耳はカットされていて一応世話されているらしい。道路から撮っているので300mmでもこのくらい。

 その猫ときたら、しきりに後ろを気にしてる。なんだろと遠くを見ると、いた。鶏である。猫にピントを合わせてるのでボケてるけど、遠くに赤いものがみえるはず。あれ、とさかである。

旧家の勝手口っぽいとこで猫を発見。でも猫は後ろを気にしてる。遠くに鶏がいるのだ。2021年3月 富士フイルム X-T4

 その鶏たちが猫に向かって歩いてきたので「お、これは鶏と猫の邂逅の一瞬を撮れるかも」と息を殺して待つ。今年、35mm判換算で450mm相当ともなれば遠近感がない、つまり実際より鶏と猫が近づいてるような写真を撮れるわけで、それを狙うことにしたのだ。ひょんなことから有名になった望遠レンズによる圧縮効果である。

 猫と鶏たちがちょうどよい距離になったところでシャッターを押すつもりでファインダーを覗きながら、まだちょっと遠いぞ、あとちょっとだ、と息を凝らしていたら、猫がいきなりダダッと逃げたのである。えっ、ちょっとまってって感じ。ギリギリまで待ってシャッターを切るぞ、と思ってたらタイミングを逃したというか、しかも猫が急に動いてブレちゃったとかもう失敗写真なんだけど、鶏が迫ってきて猫が逃げたって感じにはなったので載っけちゃいます。

鶏たちが迫ってきたので慌てて逃げる猫の図。いや逃げるのはやすぎ、と思いながら慌ててシャッターを切ったのだった。2021年3月 富士フイルム X-T4

 いやあ、難しいですな。まあ、願った通りに動いてくれないのが猫の猫らしさなので、それはそれでよいのだ。

 さらに自転車を走らせて、昔見つけた猫スポットへ。周りに農地が残ってる郊外で、猫たちも伸び伸びと遊んでた場所。今は新しい道路を作るため土地が分断されてしまって、猫はどうなったかなとちょっと心配していたのだけど、めちゃ健在なのだった。

 日がよく当たるアスファルトの上で2匹がまったりお昼寝中。まったりしてるので、カメラを地面すれすれに置いて撮影。気持ちよさそうで何より。

日向のアスファルトにべちゃっと張り付いて溶けるように寝てたので遠くから地面すれすれアングルで撮影。2021年3月 富士フイルム X-T4

 ほのぼのと見てたら片方が起きたので、望遠端まで伸ばして顔のアップを。

むむって感じ。この距離感で撮れるのは70-300mmの良さ。遠くからこれだけ狙えるのだから望遠は楽しい。2021年3月 富士フイルム X-T4

 この猫、比較的にのんびりしてて近寄ってもあまり逃げない。今日は望遠ズームしか持ってきてないので、近寄られちゃうと逆に撮影できなくなっちゃうのだけど、ほどよい距離でアップで撮らせてくれたのだ。

 そこでじっとしゃがんで見つめあいつつ、望遠で表情を見ていると突然ほわーっとあくび。口をめいっぱい開けた瞬間をゲット。いつもなら目にピントを合わせるのだけど、今回はほわっと開いた口が大事なのでフォーカスは口元に。なんか可愛いなと思ったら、歯がないのであった。冒頭写真である。

 70-300mmなんて望遠ズーム縛りをしてると、やっぱ超望遠は表情をぐっと捉えられるから、望遠楽しい病が首をもたげてきてつい望遠端でばかり撮っちゃうから危険だ。冒頭写真のおおあくび顔みたいなのは超望遠が楽しいし、気持ちよさそうに寝てる猫も超望遠でぐっと迫りたい。遠くから猫を起こさないで顔のアップを撮れるってのはいいもんだ。

お昼寝中の別の猫。ちょっと昭和な感じが似合うかなとフィルムシミュレーションの「クラシックネガ」で撮ってみた。2021年3月 富士フイルム X-T4

 でも、アップばかりだと単調になっちゃう。猫のみにフォーカスしたいのか、その猫の状況も一緒に撮りたいのかでうまく構図を決めていくのが大事だ。

 さて今回の最後は黒猫。1匹だけ黒猫がいたのだけど、警戒心が強くて、なかなか撮らせてくれない。そろっとカメラを構えると、タタタッと逃げて、ちょっと離れたところでこっちを振り向く。様子伺いである。その姿がよかったのだが、完全に逆光。逆光の黒猫とか難易度高し。でも、印象に残ったのは逆光ならではの光の当たり方であり、そこに佇む猫は幸いにも無彩色の黒猫。

 そういうときは光と影だけにフォーカスするのだ。幸い、フィルムシミュレーションに「ACROS」というカッコよく撮れるモノクロモードがある。というわけで、とっさにフィルムシミュレーションを「ACROS」に切り替えて狙ってみた。

フィルムシミュレーション「ACROS」で逆光の黒猫。イメージ通り、色がない方が光と影が強調されてカッコいい。2021年3月 富士フイルム X-T4

 旅立つ黒猫って感じがした。

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筆者紹介─荻窪圭

 
著者近影 荻窪圭

老舗のデジタル系ライターだが、最近はMacとデジカメがメイン。ウェブ媒体やカメラ雑誌などに連載を持ちつつ、毎月何かしらの新型デジカメをレビューをしている。趣味はネコと自転車と古道散歩。単行本は『ともかくもっとカッコイイ写真が撮りたい!』(MdN。共著)、『デジカメ撮影の知恵 (宝島社新書) (宝島社新書)』(宝島社新書)、『デジタル一眼レフカメラが上手くなる本』(翔泳社。共著)、『東京古道散歩』(中経文庫)、『古地図とめぐる東京歴史探訪』(ソフトバンク新書)、『古地図でめぐる今昔 東京さんぽガイド 』(玄光社MOOK)。Twitterアカウント @ogikubokei。ブログは http://ogikubokei.blogspot.com/

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