ESG/SDGsの取り組み全般を説明、リモート接続ソリューションによるCO2排出回避効果も定量化し示す
TeamViewer、水産資源保護などでESLやさくらインターネット研究所と連携
2021年03月29日 07時00分更新
リモート接続ソリューションを展開するTeamViewerジャパンは2021年3月25日、環境や社会に対して責任ある事業活動を目指すESG(環境/社会/ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)についての取り組みを紹介する記者説明会を開催した。
多様なリモート接続ソリューションの活用により顧客企業で実現している二酸化炭素(CO2)排出回避効果について具体的数値を示したほか、サステナビリティに向けた取り組みとして、環境シミュレーション研究所(ESL)、さくらインターネット研究所との協働による実証実験についても紹介した。
TeamViewer活用による環境効果は「自動車1100万台の年間排ガス量」に匹敵
説明会ではまず、TeamViewerジャパン ビジネス開発部長の小宮崇博氏がTeamViewerの最新状況アップデートを説明した。
TeamViewerでは多様なリモート接続ソリューションを提供している。リモートからのITサポートやモニタリング、テレワーク、オンライン会議などの「ITサポート領域」、工場の製造機械やロボットなどのリモート制御やアラート、AR(拡張現実)技術を活用したリモートからの現場サポートなどの「OTサポート領域」でそれぞれソリューションを展開しており、現在は世界65万以上のサブスクライバーがあり、25億以上のデバイスにインストールされている。
顧客企業はTeamViewerのリモート接続ソリューションを活用することで、現場サポートを行うための出張や移動のコストを削減している。それと同時に、人の移動を抑えることで、飛行機などの交通機関利用による二酸化炭素排出の回避にもつながっている。では、その効果はどの程度のものなのか。
TeamViewerでは調査機関(ドイツのDFGE)と連携し、国際基準に準拠した科学的根拠に基づく定量的試算を実施した。その結果、昨年1年間でTeamViewerの平均的な登録者1人あたり二酸化炭素換算(CO2e)で平均4トン、グローバルのTeamViewer利用者全体では年間およそ3700万トンの排出回避効果を生んでいることがわかったという。
「3700万トンという数字は、自動車1100万台が1年間で排出する排ガスの平均量、あるいは35億本の木(オーストラリアの森林全体と同等)が1年間に吸収する二酸化炭素量に相当する。日本のみで見ると90万トンと少ないが、それでも26万7000台の自動車の年間排ガス平均量に相当する」(小宮氏)
TeamViewerソリューションの活用で出張を減らしている顧客の一例として、ドイツの海運業向けシステム会社、maresystemsにおけるリモートアクセス/ARソリューションの活用例を紹介した。
maresystemsでは、船舶上の技術システムにおけるあらゆるプロセスを記録/評価し、船舶上のコンピュータで可視化する船舶自動化システムを提供している。しかし、航行中の顧客船舶で何か技術トラブルが生じた場合、これまではリモートからサポートする手段がなく、エンジニアが船やヘリコプターで直接船舶に乗り込むしかなかった。
そこで同社では「TeamViewer Pilot」を導入し、リモートアクセスやARの機能を使って、エンジニアがリモートからサポートを行い、問題解決できる仕組みを備えることにした。リモートからトラブルをリアルタイムに検出できるほか、リモート操作およびAR機能による乗組員の視覚共有とリモート指示を通じて、現場に乗り込むことなく課題解決ができるようになったという。「たとえば部品交換が必要だが、現場乗組員はどの部品をどう交換すればわからないといった場合に、エンジニアがARを通じてリモートから支援できる」(小宮氏)。
TeamViewerではさらにCO2排出量削減の取り組みを強めていく方針だ。サービス提供に利用するデータセンター事業者との連携強化により、再生可能エネルギーの供給量増加やPUE(電力使用効率)の向上に努めているほか、従業員の出張日数削減のためのトラベルポリシー調整、公共交通機関や社用自転車による通勤への補助金強化など、幅広い取り組みを行う。これにより、2025年までに1人の従業員につき業務上のCO2排出量の50%削減を、さらに2030年までにすべての(企業全体としての)CO2排出量50%削減を目指すとしている。
水産資源と漁業のサステナビリティを目的に、ESL/さくらインターネット研究所と協業
2つめの「サステナビリティ」については、水産資源の保護と漁業の継続可能なエコシステム構築に向けた新たな取り組みを紹介した。海洋/水産領域ではすでに環境シミュレーション研究所、さくらインターネット研究所との実証実験を行っており、今後さらに両者とも連携しながら取り組みを進化させていく方針だ。
まず小宮氏は、上述した水産資源/漁業エコシステムで現在考えている取り組みの方向性を説明した。全国の漁業者が漁船で魚を水揚げする際に、魚種や漁獲量、さらにいつ/どこで/誰が/どういう方法で水揚げしたのかという情報を、TeamViewerのリモート接続ソリューションを使って収集/記録する。このデータを活用することで、乱獲の防止による水産資源の保護に加えて、データに基づく効率的な漁業の実現、さらに安心安全でエシカル(倫理的)な水産資源の流通や消費を可能にしていくというものだ。
具体的にはまず、漁場や海底地形に関する「より高度な可視化」の部分について、TeamViewer、環境シミュレーション研究所、さくらインターネット研究所の3者の枠組みで今春から実証実験を開始するという。また水産物のトレーサビリティ実現というより大きな目標については、オープンな枠組みとして流通や小売の事業者や研究機関などの参画も募っていきたいと述べた。
環境シミュレーション研究所、さくらインターネット研究所からはそれぞれ、これまでのTeamViewerソリューション活用事例について紹介された。
環境シミュレーション研究所では、漁船に搭載するGPSデータロガーを提供しており、漁場環境データ(水深/水温/潮流など)や漁獲データなどを収集/分析/活用できるシステムを構築している。これは水産庁が推進する「スマート水産業」「データ連係基盤」といった取り組みにもつながるものだ。全国の漁場、漁船に展開するこのGPSロガーのリモートメンテナンスにTeamViewer IoTを採用することで、出張の回数を減らすなどの成果を挙げている。
さらに現在は、海底地形図作成の新技術開発を支援する「DeSET project(海底探査技術開発プロジェクト)」にも参画しており、ここでもリモートからのデバイスモニタリングにTeamViewer IoTを活用する。
さくらインターネット研究所の松本氏は「見える化」をテーマとして幅広い研究活動を行っており、その1つが「水産資源の見える化」だという。近年テクノロジーが高度化している市販の魚群探知機や各種センサーデバイスがどれだけ“使える”ものになっているか、それらを連携させることでどの程度のことができるのかを調査研究している。
そのフィールド実証実験として、都内の池で水中の様子を可視化する実験を行った。市販の水中ソナーやライブカメラをスマートフォンにUSB接続し、そのデータや映像をモバイル通信網経由で陸上に転送した。このスマートフォンにはTeamViewerがインストールされており、これが難しい仕組みなしでリモート操作やデータ連携を可能にしているという。
「たとえば最近の三次元ライブ魚探(魚群探知機)を使うと、目視では見えない湖底の地形もリアルタイムに見ることができる。池の中の水棲生物の巣穴、さらに生物の挙動もリアルタイムに可視化できるが、TeamViewerを使って、このライブ映像をリアルタイムにリモートで見ることができ、なおかつデータセンター内のデータ処理基盤に送って、いま何が起きているのかといった分析をオンデマンドに処理できる」(松本氏)
TeamViewerが取り組む3点目、ダイバーシティについては、日本の情報サービス業における女性比率の平均が23%であるところ、同社では56%に達していると紹介した(日本のビジネスを行っている東京、豪アデレードの正社員において)。またTeamViewerジャパンのカントリー・マネジャーも女性(西尾則子氏)が務めている。
まとめとしてTeamViewerの小宮氏は、同社が掲げる「Connected Operational Technology」ビジョンを種お買いした。これは、TeamViewerを用いてビジネスに関わるヒト/モノ/プロセス/情報を結合し、“ビジネスのデジタルツイン”を構築しようというものだ。これを通じて「距離/機会損失/ミス/連携時間をゼロにする」ことを実現し、その結果としてCO2排出回避や資源保護、サステナビリティにつながると説明した。