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自然に高品質の音源が聞きたくなる素直な高音質と、極めて自然な空間オーディオ

【AirPods Maxレビュー】iPhoneやiPadで最高の音響体験を求めるなら迷わず買い!

2021年03月10日 12時00分更新

文● 柴田文彦 編集●飯島恵里子/ASCII

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ごくごく自然ながら悪音に厳しい再生音質

 ヘッドフォンにとって、もっとも重要な要素は、なんと言っても音質だ。それでいて、定量的な評価がほとんど不可能なので、レビューで良さを伝えるのが難しい。AirPods Maxの基本的な音質は、非常に素直なもの、という表現がもっとも適していると思われる。高音を強調したり、低音の迫力を増強したりといった味付けがまったく感じられない、良質なモニターヘッドフォンの音質なのだ。もちろん、ワイヤレスだからといって、周波数レンジの狭さなどは微塵も感じられない。かなりフラットな印象だ。

 素直で高精細なだけに、ソースの音質には敏感だ。たとえば、圧縮率の高いYouTubeなどの音源に特有の音の濁りのようなものは、はっきりと聞き分けられる。つまり悪いものは悪く、良いものは良く聞こえるというわけ。もし、主な用途としてYouTubeの視聴用を考えているなら、AirPods Maxを選ぶべきではないだろう。圧縮率の低い音源でも、適当に味付けして、アラが目立たないように聴かせるヘッドフォンは、ほかにいくらでもある。AirPods Maxでは、聞き慣れた音楽を再生する場合でも、より高品位の音源を自然と選びたくなるはずだ。

 後で述べるように、AirPods Maxの1つのウリは、次に述べるような「コンピューテーショナルオーディオ」にある。これは、アップル純正のH1チップによって、計算され、状況に応じて調整され尽くした再生を実現するもの。もちろんヘッドフォンとしての基本設計がしっかりできていなければ、そうした調整の範囲も狭くなり、狙った音質を実現することは難しい。それにしてもこのような高度な調整を経た音が、これだけ素直に聴こえるのは、かえって新鮮な驚きを感じる。

自分の鼓動が聞こえるほどの静寂を実現するノイキャン性能

 AirPods Maxのノイキャン性能は、かなり優秀だ。エアコンなどの空調ノイズ、電車の走行ノイズといった定常的な音はもちろん、周囲にいる人の話し声、室内で鳴っているテレビやラジオの音声、BGMといったものまで、かなりのレベルまで低減してくれる。試用中にちょっと驚くほど効果的だと感じたのは、自分自身のキーボードのタイプ音が、ほとんど聞こえなくなることだった。音によって危険を察知することができなくなるため、屋外で使うのは、ちょっと危険だと感じるほどだ。

 もちろん周囲の状況を知りたい際には、ワンタッチで外部音取り込みモードに切り替えられる。とはいえ、ノイキャン性能の高さや、後で述べる空間オーディオの機能によって、没入状態になりやすいため、常に注意は必要だ。なお、外部音を取り込んだ音質は、マイクの特性がそのまま反映されているためか、若干キンキンした感じとなる。ノイズも含めてよく拾うので、自分の着ている服の衣擦れの音が気になるほど。ただし、これはけっして観賞用の音ではないので、それくらいの感度があることは、むしろ安心だろう。

 このノイキャン機能の欠点を1つ挙げるとすれば、あまりにも静寂になり過ぎるためか、何も再生していないときには自分自身の鼓動(血流)の音が、わずかながら聞こえるようになること。おそらく耳の周辺の動脈の振動を拾っているものと思われるが、気にし始めるとだんだん気になってくる。とはいえ、音量的にはわずかなものなので、音楽などを再生中にはまったく気にならない。

 このような高効率のノイキャン機能を実現しているのが、前述したコンピュテーショナルオーディオだ。H1チップは、左右のカップに独立して1つずつ搭載しており、その各々に10個のオーディオコアを内蔵しているという。これにより、ユーザーの頭の形状や大きさによって異なるイヤークッションの吸着度、密閉度に合わせて、再生音を調整するアダプティブイコライゼーション機能も備えている。どのような状況でも、非常に素直な特性を実現できるのも、実はこのような緻密な調整機能があるからだろう。

 このような適応的な調整が、使用中に常に動作しているのかどうかは不明だが、ノイキャンと外部音取り込みを切り替える際に、ちょっと耳障りなチャイムのような音が聞こえるのは、そのためかもしれない。つまり、その音をイヤークッションの内外でモニターすることで、クッションによる物理的な遮音性を判断し、調整のパラメータに反映しているのではないかと考えられる。

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