7年目の節目の年に
VAIOは、2014年にソニーから独立。2021年7月には満7年を迎える。
山本社長は、「VAIOとして独立する直前は、世界で年間500万台以上のPCを販売していた。しかし、独立にあたり、海外市場からはすべて撤退し、日本国内にフォーカスして再スタートを切った。2015年からは海外展開を再開し、現在では、その地域を北米、中国、南米、欧州、アジア、中東へと拡大させ、海外販売台数比率は50%に迫っている」とする。
実は、今回のVAIO Zは、海外ビジネスを加速する上でも重要な役割を担う。
「7年間に渡り、日本のビジネスパーソンの生産性を高めることに、徹底的にこだわり抜いたモバイル PC を開発し、高い品質、信頼性で製造し、届けすることで、着実に評価を頂き、力を回復してきた。だが、これまでの上位モデルはレガシィの映像端子の搭載など、日本特有のニーズに応えることに振り切り、開発してきたこともあり、残念ながら世界においては、かつてのような評価を得ていない。いま、この7年の結実、そして再び、日本と世界に向けて、『これこそがVAIOだ』という提案をする時を迎えた。VAIOに求められているのが大きな『Wow!』であることは、我々自身が一番わかっている」と語り、今回のVAIO Zを、「VAIOが満を持して、世界に問う製品」と位置づけた。
開発責任者であるVAIO 取締役 執行役員 PC事業本部長の林薫氏は、「この製品が世界中で、日々、モバイルPCの上で、新しいものを生み出す人々のその体験を確信するものになると確信している」と意気込む。
海外展開は、日本の本社が開発した製品をグローバル展開し、VAIOブランドの本質を届ける「グローバルモデル開発スキーム」という方法と、各地域のニーズを熟知した現地のパートナーに商品企画を担ってもらい、そのプランに対して日本の本社がVAIOのUX、設計、デザインのノウハウに基づき、ディレクションと監修を行い、現地のパートナーと共同で商品を作りあげていく「ローカルフィットモデル開発スキーム」という手法がある。
だが、ブランド理念は共有できても、目指すべき商品像を一致させることは簡単ではなく、VAIOとパートナーと、お互いに納得できる商品が実現しはじめたのは最近のことだという。実際、2020年3月に南米で発売したモデルが前年比2倍の実績となったり、2020年11月に中国で発売したモデルは、アワードを受賞したりといった実績につながっており、ここにきて、世界各国で、パートナーとの連携の成果が出てきた。
そうした成果をもとに、グローバルで構築してきたラインアップのなかに、最後のビースとして、VAIO Zが、グローバルフラッグシップとして加わることになる。
「グローバルモデル開発スキーム」によるVAIOのフラッグシップというピースが埋まることになる。
同社では、「世界に、VAIOの体験を届ける準備が整った」とし、「これまで以上に、世界中の多くの人の挑戦を支えていく」と宣言する。
VAIOの海外への本格的な再挑戦に向けて、ピースが揃うという意味でも、VAIO Zは、大きな意味を持つわけだ。
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