古舘社長が2021年の事業方向性も説明、「今年はSMB市場も積極的に取りに行く」
Veeam、主力製品の最新版「Veeam Backup & Replication v11」提供開始
2021年02月26日 07時00分更新
ヴィーム・ソフトウェア(Veeam Software)は2021年2月25日、主力製品の最新版「Veeam Backup & Replication v11(以下、VBR v11)」の一般提供を開始した。同日開催された記者説明会では、同社社長の古舘正清氏が最新のビジネスアップデートや2021年の事業方針を報告したほか、VBR v11で追加された「継続的データ保護(CDP)」などの新機能についての紹介がなされた。
最新版「Veeam Backup & Replication v11」の特徴を紹介
VBR v11の特徴や新機能については、同社 システムズエンジニア本部 本部長の吉田慎次氏、ソリューション・アーキテクトの高橋正裕氏が説明を行った。
VeeamではVBR v11について、バックアップ/レプリケーション/ストレージスナップショット/継続的データ保護(CDP)の機能をすべて備えた「4 in 1ソリューション」だと表現している。吉田氏は、現在の顧客企業がデータの管理と保護において直面するさまざまな課題を解消するために、VBR v11では200以上の機能拡張がなされたと説明した。
説明会では特に注目される5つの主要新機能/機能拡張ポイントが紹介された。なおASCII.jpでは、
これらのVBR v11新機能についてより詳しく紹介した記事を掲載しているので、合わせてお読みいただきたい。新機能の継続的データ保護は、従来から提供してきたスナップショットベースのレプリケーション機能(RPO:5~15分)よりもさらに短い、秒単位のRPO(目標復旧時点)を実現可能にするもの。これにより、特に重要度の高いワークロードにおいてほぼ最新の状態への復元が可能になる。
高橋氏は、この新機能によって、複雑なレプリケーションシステム構築の必要なく、低コストで事業継続性やワークロードの高いSLA(サービスレベル保証)を実現できると説明した。さらに、RPO設定やカスタマイズが簡単にでき、プロキシ性能や帯域幅のカリキュレーターも備えており、「CDPを『使える』機能として実装している」と強調する。
VBR v11では、Linuxリポジトリも強化されており、バックアップデータを書き換え不能状態でリポジトリに保存できるようになった。これは特に、昨今被害が増えているランサムウェアによるバックアップデータの破壊を防ぐうえで効果的だと、高橋氏は説明する。また、ストレージ機種に依存しないXFSファイルシステムを採用し、「合成フルバックアップの作成もかなり高速にできる」と述べた。
クラウドストレージ関連の機能では、新たにコールドストレージサービス(AWS S3 Glacier、Azure Archive Storage)への長期アーカイブにも対応している。これにより「長期アーカイブにかかるコストを最大20分の1に削減できる」と高橋氏は語る。また、従来のパフォーマンス層やキャパシティ層と同じポリシーベースの設定でアーカイブ層を構成/管理することができ、手間と時間がかかるコールドストレージからのデータ取り出し作業についてもVBRが自動化してくれると紹介した。
またVBR v11では、キャパシティ層のクラウドストレージとして新たに「Google Cloud Storage」もサポートし、選択肢を拡大している。
インスタントリカバリ機能では、新たにデータベース(Microsoft SQL Server、Oracle Database)やNASのインスタントリカバリにも対応している。これらのシステムに障害が発生した場合でも、長時間かかるリストア処理を待つことなく、小さいRTO(目標復旧時間)で迅速にサービスを復旧して業務を継続できる。なおもうひとつ、VBR v11では仮想マシンのHyper-V環境へのインスタントリカバリ処理も可能になっている。
VBRの機能をサービスとして提供したいサービスプロバイダー向けに、BaaS(Backup as a Service)とDRaaS(Disaster Recovery as a Service)の機能も強化された。サービスプロバイダー向け「Veeam Service Provider Console v5」を通じて、リモートワーク/在宅勤務環境のエンドポイント(VBR v11で新たにMac用エージェントも追加)のリモートバックアップ、AWSやAzureのクラウドネイティブバックアップの監視なども実現している。
高橋氏はそのほか、「Veeam ONE」や「Veeam Disaster Recovery Orchestrator(旧称:Veeam Availability Orchestrator)」もv11ベースとなり、新しいUIやVBR v11の継続的データ保護のサポートといった機能拡張がなされたことを紹介した。
2021年の方向性、SMBマーケットも「積極的に取りにいく」
古舘氏は2020年のビジネスの振り返りと、2021年の事業方針を説明した。
2020年のVeeamは、グローバルで前年比22%の売上成長を遂げた。マーケットシェアは前年の4位から3位へと上昇し、顧客数は40万社以上となった。日本市場単独の数字は公表していないが、売上成長については「グローバルをはるかに上回る成長」(古舘氏)だという。
こうした順調な成長の背景について古舘氏は、Veeamが従来の強みとしてきた仮想化バックアップ(「Act I」)から、製品、顧客提案ともクラウド・データ・マネジメント(「Act II」)の方向へと大きく舵を切ったことを挙げる。AWSやAzure、Google CloudのIaaSだけでなく、「Office 365」や「Kubernetes」コンテナ環境のバックアップにも対応の幅を広げており、こうしたクラウドフォーカスが時宜を得たものになったという。
「Veeamのクラウドシフト、Act IIが非常によく機能していると言える。顧客ワークロードがパブリッククラウドへと移行する中で、特にマルチクラウドでデータを管理されている顧客からはVeeam製品が最適だと評価いただいている」(古舘氏)。
2021年の事業方向性としては、従来から取り組むエンタープライズ顧客への浸透をさらに加速させる一方で、「今年はSMB(中小企業)マーケットも積極的に取りに行きたい」と述べ、販売体制と製品を強化していく方針を示した。
具体的には、SMB向けの営業専任組織を組成したほか、SMB層への販売窓口となるパートナーを支援すべく、4月には「Veeamパートナーセンター」を開設してパートナー向けのWeb/電話サポートを強化、トレーニングも拡充する。また、製品やドキュメントの日本語化を進めるほか、中小企業向けに特化しらライセンスの販売も進める。
またクラウドサービスプロバイダーとのパートナープログラム(VCSP:Veeam Cloud & Service Provider)において、昨年はKDDIとのパートナーシップ締結に至った。「今年も数多くのパートナーシップを作り上げることにフォーカスしていきたい」(古舘氏)。