“こたつにみかん”という言葉があるとおり、冬にみかんを食べるという方も多いのではないでしょうか?今回は、そんなみかんを食べたときに残る皮を使って、子どもとお家で楽しめる実験をご紹介します。実は、みかんの皮に含まれるリモネンという成分によって、簡単にさまざまな実験ができるのです!
リモネンはさわやかな香りがするので、個人的にはリモネン入りの精油を部屋の香りにしてしまうくらい大好きな成分です。Limoneneという英語表記もお気に入りで、一時期パソコンのフォルダ名にもしていました(笑)。話はそれましたが、お家で過ごすことが増えた今、ぜひ気になる実験がありましたらお試しいただけますと嬉しいです。それでは今日もレッツサイエンス!
■目次
1. みかんの皮で花火実験
2. みかんの皮で風船爆発実験
3. みかんの皮で発泡スチロールが〇〇実験
4. リモネンで立体的なお絵かき実験
■自己紹介
科学のお姉さん/Science Entertainerこと五十嵐美樹(@igamiki0319)です。国内外問わず科学実験教室や特技のダンスを活かしたサイエンスショーを開催し、子ども達が科学の一端に触れるきっかけを創っています。
本連載では、科学実験教室やサイエンスショーで子どもたちからの人気が高かった実験や工作を、お家で簡単にチャレンジしていただけるようようアレンジしご紹介しています。
●1. みかんの皮で花火実験
みかんの皮に含まれるリモネンを使って、きれいな花火をつくることができます。
※火を扱うため、花火をするときのように消火の準備をして、必ず保護者の方と一緒に実験してください。
【用意するもの】
・みかんの皮
・ろうそく
・ライターやチャッカマン、マッチなど火をつけるもの
・ろうそく立てや灰皿
【実験の手順】
ろうそくをろうそく立てにのせて、火をつけます。ろうそく立てがない場合は、灰皿などにろうをたらし、その上にろうそくを立てます。
みかんの皮を折りつぶし、ろうそくの火に向かって汁を飛ばします。皮の外側を火に向けてぎゅっと折りつぶすと、うまく飛ばせます。汁が火にあたると、どのようなことが起こるでしょうか?
リモネンは引火点が48℃前後なので、火にあたると花火のように一瞬パチパチと燃えます。パチパチという音や汁の舞い方がまるで花火のようです。新型コロナウイルスの影響で花火を見る機会もする機会も少なくなっているため、私は本実験を通してお家で楽しんでおります。
●2. みかんの皮で風船爆発実験
リモネンを風船にかけると、手で風船を触ることなく風船を割ることができます。
【用意するもの】
・みかんの皮
・風船
【実験の手順】
風船をできるだけ大きくふくらませます。
みかんの皮を折りつぶし、風船に向かって汁をかけます。
そうすると…?バーンッと風船が割れました!
風船は、ゴムでできています。みかんの皮の汁に含まれるリモネンと風船のゴムの構造はよく似ているため、溶けあいます。リモネンがゴムに触れることで溶けて、周りのゴムが一気に縮み割れるのです。
風船を大きくふくらませたのは、リモネンをかける部分の風船のゴムを薄くして溶かしやすくするためです。
ちなみに、これを巨大風船でやってみるとどうなるでしょうか…!?
ブロアで(こちらも可能な限り)巨大風船を大きく膨らませてリモネンを塗ってみます。

巨大風船にリモネンを塗ってみる ※写真は「エネルギー館 あしたをおもう森 クリスマスイベント」より
少し時間が経ってから割れました!巨大風船はゴムが厚いため、小さい風船と比べるとゴムが溶けるのに時間がかかります。
リモネンを塗ってから巨大風船が割れるまでの時間はとても怖いのですが、サイエンスショーでは手袋にリモネンをダラダラに塗り、マイケルジャクソンのスリラーなどを踊りながら巨大風船につけて楽しんでいます!
●みかんの皮で発泡スチロールが〇〇実験
先ほどみかんの皮に含まれるリモネンで風船のゴムを溶かしましたが、発泡スチロールを溶かすこともできます。
【用意するもの】
・みかんの皮
・発泡スチロール
【実験の手順】
発泡スチロールにみかんの皮の汁をかけた様子を観察してみます。
汁がかかった部分の発泡スチロールが溶けてへこみました!
ちなみに、リモネンをたくさん用意して発泡スチロールを沈めてみるとどうなるでしょうか…!?

たくさんのリモネンを用意(※今回はImpactシリーズを使用)
これもまた、溶けました!発泡スチロールはポリスチレンでできています。これもリモネンと似た構造をしていて溶けあうため、溶けたということなのです。写真のとおり発砲スチロールが溶けいくにつれて体積を小さくできるため、ごみの処理やリサイクルなどに応用されています。
※発泡スチロールを溶かした後のリモネンは産業廃棄物となりますので、各自治体の指示に従って処分してください。/p>
●リモネンで立体的なお絵かき実験
【用意するもの】
・筆
・リモネン(※今回はImpactシリーズを使用)
・発泡スチロール(※様々な形の発泡スチロールは100円ショップや東急ハンズなどで購入できます)
【実験の手順】
筆にリモネンをつけて発泡スチロールに塗っていきます。塗ったところがどんどん溶けてへこんでいき、描いた形が徐々にあらわれます。リモネンを塗り重ねたぶんだけ溶けた部分がへこみ、立体的な絵を描くことができます。
平面の発泡スチロールにも描くことができます。平面の場合は、そのへこんだ部分とへこんでない部分の凹凸の差を利用してスタンプにすることもできます。
●まとめ
今回はみかんの皮に含まれるリモネンを使った、冬におすすめの実験をご紹介しました。同じリモネンでも、花火になったり、風船を割ったり、発泡スチロールを溶かしたり、スタンプを作ったりと用途が多様なので、それぞれどんな原理で起きているのか仮説を立てながら、気になったものをぜひお試しいただけると嬉しいです。
また、本日ご紹介した実験はすべて、みかんの皮以外も100円ショップなどで手に入れることができる身近なものを使っております。みかんの皮は捨てずに実験に利用していただき、子どもたちが科学の一端に触れるきっかけにしていただければ幸いです!
■注意事項
・小学生など低年齢の子どもが実験をするときは、必ず保護者の指導のもとで行なってください。
・みかんの皮の汁が目に入ったり、服などを汚したりしないように注意して実験してください。
・火を扱う際はやけどなどしないよう、また消火用の準備をして注意しながら実験してください。
■参考文献
安全データシート d-リモネン
リモネン(Limonene)
小学校理科における学び文化の創造-環境学習教材としてのリモネンを中心として-
仙台市天文台における化学実験教室の実践(1) : 光学活性物質のリモネンをテーマとして

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