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成田悠輔(イェール大学、半熟仮想)

2021年01月20日 12時00分更新

文● minamoto-c

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データやアルゴリズムが、機能不全に陥った社会の価値制度インフラを変えていくという理念の下で、複数の国や文化、業界をまたいで活動する「革命家」。

人工知能(AI)や機械学習と社会科学・哲学を融合し、政策や事業に組み込むことで、まだ見ぬ社会をデザインする——。それが、イェール大学の助教授であり、スタートアップ企業「半熟仮想」の代表取締役社長を務める成田悠輔の目指すところだ。そういった意味では彼は、AIの専門家というよりは、AIとの融合によって社会を変革しようとする「革命家」と呼べるかもしれない。

成田は自身の活動の軸を、(1)「研究開発&技術解放」、(2)「ビジネス&政策(特に教育)」、(3)「22世紀の社会構想」の3つに置き、昼は日本で半熟仮想の代表として(2)と(3)に、夜は米国でイェール大学助教授として(1)に取り組んでいる。「複数の国や文化、業界をまたいで、分裂もいとわず多様なアイデアを融合し、他の人や組織には創れない価値を作っていきたい」と成田は言う。

1つ目の軸となる「研究開発&技術解放」に関しては、データとアルゴリズム、数学を組みあわせて世の中の市場や制度をゼロから設計する「社会制度設計」と、世界を構成する因果関係をデータから見つけ出す「因果機械学習」の研究を進めている。機械学習ビジネスから教育政策まで、幅広い応用に使える「意思決定・資源配分アルゴリズムをデータ駆動にデザインする手法」を開発し、AI・経済学・応用数学・経営工学などの難関学術誌に査読付論文を出版すると同時に、オープンソースソフトウェア化にも取り組み、「米中の独占企業に集中しがちなデータとアルゴリズムの力をより広い社会に解放」(成田)することを目指す。

こうした成果に基づく「ビジネス&政策」を軸とした活動では、数十の企業・自治体・非営利団体と連携し、作成した技術の社会的実装に取り組んでいる。連携先はニューヨーク市・シカゴ市教育委員会などの公的組織から、非営利団体、デジタル企業、伝統アナログ企業まで幅広く、最終的な目標を「教育や医療をはじめとする公共政策の機械化・知能化」に置く。

日本の大手メディア・広告代理店であるサイバーエージェントとの共同プロジェクトでは、因果関係を考慮してユーザーの行動により大きな変化をもたらすことが可能な広告配信技術を作るべく、因果推論と機械学習の融合や実験における制度設計について議論・研究。限られた情報から最適な選択肢を探索する「バンディットアルゴリズム(Bandit Algorithm)」など機械学習を応用した意思決定の評価において、評価における不確実性が従来の手法より少なくなる方法を提案した。

成田は、データやアルゴリズムは、個別の事業・政策課題を超えて、政治・経済・宗教と言った社会の価値制度インフラを変えていくといい、「22世紀の社会構想」について思考・執筆する著者でもある。「自分の人生を機械とデータが選んでくれる『幸福なデータ奴隷』」など物議を醸しかねない論を張ることもいとわず、未来の社会をデザインすることを訴え続けている。

(中條将典)

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