超高速で自動運転の技術を競う
インディ・オートノマス・チャレンジとは
北米で開催中の「CES2021」において11日、「Indy Autonomous Challenge(インディ・オートノマス・チャレンジ)」の詳細が紹介された。これは、大学生向けの自動運転ソフトウェアの開発競争であり、最終的にはリアルな車両を走らせる。特徴は「head-to-head」、つまり直接対決すること。タイムトライアルではなく、複数の車両が同じコースを走る。まさにレースなのだ。
会場となるのは、1909年に作られた現存する世界最古のサーキット「インディアナポリス・モーター・スピードウェイ」。コースはオーバル(楕円)になっており、客席からはコース全体を見渡すことができる。そしてシンプルなコースゆえに、高速走行を得意とする。世界三大レースと呼ばれる「インディ500」は、時速350㎞以上で繰り広げられる迫力の高速バトルが、レースの人気の理由のひとつとなっている。
そして、このコースの開設の目的はレース開催だけでなく、技術開発も想定されており、自動車だけでなく、オートバイや熱気球、飛行機などの開発にも利用されていたという。最新のテクノロジーである自動運転技術の開発を競うイベントの場所としては、うってつけと言えるだろう。
車両はダラーラ製「IL-15」を自動運転用に改良したもの。「IL-15」はインディカーレースの下位カテゴリーであるインディライツで使われるもの。ガソリンエンジンを搭載する本格的なレース用のフォーミュラーカーだ。これに自動運転用のカメラやレーダーなどのセンサー類を搭載する。公開された写真を見ると、ドライバーシートの部分にカメラなどのセンサーが設置されていることがわかる。また、決勝の予選では最低で時速120マイル(時速約192㎞)で走ることが求められている。ちなみに、最高速度は時速200マイル(時速約320km)とある。この手の自動運転チャレンジとしては、異例なまでのハイスピードなのだ。
予選は、単独走行によるタイムトライアルでスタートポジションが決まり、決勝は「head-to-head」のライバルとの混走となる。オーバルのコース20周(1周2.5マイル×20周=50マイル)を25分で走り切らなければならない。そのためには平均速度で時速120マイル(約時速192㎞)以上が求められる。
そして1位となったチームには100万ドル(約1億500万円)、2位チームに25万ドル(約2625万円)、3位チームに5万ドル(約525万円)が授与される。また、事前のシミュレーションのレースでも1位チームに10万ドル(約1050万円)、2位に5万ドル(約525万円)が授与される。賞金の合計は145万ドル(約1億5225万円)にもなるのだ。
このイベントに参加するのは、世界11ヵ国からの約30の大学チームだ。2020年2月のエントリーに始まり、参加計画書の提出、ビデオなどによる技術デモンストレーションが既に実施されている。2021年2月にはシミュレーションによるレースが予定され、5月にレース車両が支給され、6月からコースでの練習走行が開始。最終レースの予選は10月21~22日、そして本コースによる決勝レースが2021年10月23日に開催される。
レベル4以上の完全な自動運転車のテストは世界各地で実施されているが、その多くが時速20㎞以下の、まるで歩くようなゆっくりとしたスピードというのが実情だ。そうした中、最低でも時速200㎞、出せるのであれば時速300㎞もOKというのが「Indy Autonomous Challenge(インディ・オートノマス・チャレンジ)」の大きな特徴だ。フォーミュラーマシンをオーバルコースにおいて時速120マイル(時速約192㎞)以上で走らせるというのは、普通のドライバーにとっても容易なことではない。挑戦するチームだけでなく、観客として見るだけでも十分にエキサイティングな競技となることだろう。
筆者紹介:鈴木ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。
最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。
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