OpenShiftをベースとした「Red Hat Kubernetes Operator Project」、3年間で国内100アプリの認定目指す
レッドハット、ISV向けのKubernetes Operator対応/認定取得支援を開始
2020年12月11日 07時00分更新
レッドハットは2020年12月9日、ソフトウェア開発企業(ISV)を対象とした、Red Hat OpenShiftのパートナーエコシステム支援プロジェクト「Red Hat Kubernetes Operator Project」を開始した。日本市場独自の取り組みとなるこのプロジェクトは、ISVに対してソフトウェア製品の「Kubernetes Operator」対応に向けた各種支援を行い、コンテナ環境で自律的な運用が可能なアプリケーションの開発を促すもの。今後3年間のうちに、国内で100以上のアプリケーションをOperator認定することを目指す。
自社ソフトウェアのOperator対応を進める同プロジェクトの賛同ISVパートナーとして、伊藤忠テクノソリューションズ、SCSK、オージス総研、サイオステクノロジー、セゾン情報システムズ、ソリトンシステムズ、日商エレクトロニクス、NEC、日立製作所、富士通の10社が発表されている。
ISVソフトウェア製品のOperator化と認定取得を包括的に支援
Kubernetes Operatorは、コンテナアプリケーションの運用をソフトウェアが管理し、繰り返し作業を自動化して省力化した「自律的運用」を可能にする技術。レッドハット 常務執行役員 パートナー・アライアンス営業統括本部長の金古毅氏は、ソフトウェアをOperatorに対応させることで「適切なリソース配置」「運用の効率化」「信頼性の向上」という価値が得られると説明する。
今回発表されたRed Hat Kubernetes Operator Projectでは、レッドハットおよびパートナーがISVに対してOperator開発環境の提供やトレーニングを行い、ISVの製品がRed Hat OpenShiftのOperator認定を取得できるよう支援する。Operator認定を受けたソフトウェア製品は、OpenShiftによるハイブリッド/マルチクラウド環境での稼働が保証され、Operatorによる自律的運用が実現する。
「レッドハットではOperatorの認定プロセスを確立しており、ノウハウから製品の信頼性までを提供できる。顧客(ソフトウェアのエンドユーザー)も、アプリケーションのライフサイクル管理が自動化された製品を、安心して利用できるというメリットがある。レッドハットとISVが連携して、顧客の課題解決に取り組む体制が整う」(レッドハット 金古氏)
上述のとおり、同プロジェクトではISVに対して「開発環境」「トレーニング」「認定取得支援」の3つを提供する。
まず開発環境については、OpenShiftパートナーである日本IBMから無償でOperator開発環境を提供する。さらに、コムチュア、サイオステクノロジー、リアルグローブ・オートメーティッドの3社が、開発支援パートナーとしてOperatorの開発支援サービス(有償)を提供する。これらのパートナーは今後さらに拡大していく方針。
トレーニングでは、レッドハットのパートナー向けオンライントレーニングシステム「OPEN」を用いたOpenShift/Operatorトレーニングのほか、半日のOperator認定ワークショップの実施を予定している。また、Operator認定プロセスへの問い合わせ対応や有償コンサルティングサービスを通じたOperator技術支援、Operator対応を有償実装する支援パートナーの紹介などを行うという。
さらに、Operator対応アプリケーションをアピールする場として、レッドハットとマイクロソフト、グーグル、AWSが共同でローンチしたKubernetes Operatorのポータルサイト「OperatoreHub.io」や、レッドハットの認定製品ポータルサイト「Red Hat Ecosystem Catalog」に加えて、2021年にはRed Hat OpenShiftのOperator認定ソフトウェアを提供するマーケットプレイス「Red Hat Marketplace」を国内で開設すると発表した。
国内における「OpenShift Partner Ecosystem」展開の第2弾
今回のISV向けプロジェクトは、レッドハットが国内市場で推進する「OpenShift Partner Ecosystem」展開の第2弾と位置づけられている。
レッドハットでは2019年12月に、その第1弾として「Red Hat OpenShift Managed Practice Program(OMPP)」を開始した。このOMPPには現在、伊藤忠テクノソリューションズ、NTTコムウェア、NTTデータ、日本IBM、NEC、野村総合研究所、日立製作所、富士通の8社が参画している。
さらに今後の第3弾としては、インテグレーター向けのOpenShift活用を支援するパートナープログラムの展開を計画しているという。レッドハットの金古氏は、OpenShiftを中核に据えたパートナーエコシステム拡大を図る理由について、次のように語る。
「IDCによると、2023年までに現在の約5倍となる5億本以上のアプリケーションが稼働すると予測されている。だが、クラウドネイティブ化の動きがそれに追いついていない。リソースの散在、運用の複雑化、信頼性の欠如といった課題も顕在化しており、これらの課題を解決しないと世界の流れに日本が取り残されてしまうという危惧がある。レッドハットは、そうした課題を解決できるソリューションを、オンプレミスからパブリッククラウド、エッジまでの一貫性を担保している点が強みである。アプリケーションの可搬性と信頼性を提供できる環境がOpenShift上で整っている」(金古氏)
またレッドハット 製品統括・事業戦略 担当本部長の岡下浩明氏は、「ひとつのシステムのなかで、さまざまななコンテナを組み合わせる必要がある。ここで生まれる複雑性を人手で管理するのは難しい。コンテナ化によって、ソフトウェアの粒度が変わっても、運用に関しては負荷をかけないというメリットがある」と述べた。