「仕事とプライベートの両方で使うユーザーが80%」同社幹部が語る、両領域での新機能と成長戦略

あいまいになる“仕事とプライベートの境界”を狙うDropbox

文●末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 テレワーク、在宅勤務、場所と時間を問わない“新しい働き方”――。仕事とプライベートの境界は、従来よりもあいまいになってきている。こうした変化は、コンシューマー向けのオンラインストレージとしてスタートしたDropboxにとってまたとないチャンスだ。同社によると、Dropboxユーザーの80%は「仕事とプライベートの両方で」Dropboxを使っているという。

 Dropboxが2020年8月17日に発表した新機能群は、まさにそうした状況をターゲットとしたものとなる。8月27日、米Dropbox幹部にオンラインインタビューを行い、新機能の詳細やDropboxが狙うものなどを聞いた。

Dropbox Core Dropbox部門SVP兼GMのティモシー・ヤング(Timothy Young)氏。個人ユーザー向け、チーム向け、エンタープライズ向けの各事業部を統括する

プライベート利用向けにパスワード管理、重要ファイルの“金庫”などの新機能

 Dropboxでは8月13日に新機能群を正式発表した。6月よりベータ提供していた機能群で、Dropbox Plus向けのプライベートユース機能が「Dropbox Passwords」「Dropbox Vault」、PCバックアップの3つ、Dropbox Professional向けの個人事業主/フリーランスの業務に適した機能がブランド共有、トラフィックとインサイトの2つとなる。

 Dropbox Passwordsは、同社が昨年買収したVaultの技術をベースとした機能で、ユーザーが使用する複数のデバイス間(PC、スマートフォンなど)で、保存したパスワードの同期ができるというもの。Dropbox Core Dropbox部門SVP兼GMのティモシー・ヤング氏は、「暗号化の知識ゼロでも安全に、ワンタッチでWebサイトやアプリケーションにログインできる」機能だと説明する。

「Dropbox Passwords」。パスワード情報を保存しているWebサイトを訪問すると、入力画面で自動的にID/パスワードが入力される

 2つめのVaultは、ユーザーが遺言書、財務書類などの最重要情報のファイルを保存する“情報の金庫”のような機能だ。データを暗号化して保護する一方で、家族や友人などには6ケタのPINコードを渡しておき、ユーザー本人が亡くなるなどの非常時に開けてもらえるよう設定することができる。

「Dropbox Vault」では6桁のPIN入力、暗号化などのセキュリティ機能により、重要な機能を保存し、家族などにアクセス権を付与できる

 3つめのPCバックアップは、その名のとおり、Windows/macOS上のファイルをDropbox上に自動バックアップする機能だ。「デスクトップ」「ドキュメント」「ダウンロード」といった、ユーザーファイルが保存される主要なフォルダを継続的に自動保存するので、PCが故障したり誤ってファイルを消去/上書きしてしまったりしたときに、すぐファイルを取り戻せる。これはユーザーからのリクエストが多かった機能だと、ヤング氏は説明する。

 「これまでDropboxは、“魔法のフォルダ(Dropboxフォルダ)”にファイルやフォルダを入れるだけで自動的にクラウド側と同期できるサービスとして人気と知名度を築いてきた。今回追加したPCバックアップ機能は、ユーザーが手作業でDropboxフォルダにファイルを動かすことすらなく、自動的にマシン全体(のユーザーファイル)をバックアップできる」(ヤング氏)

バックアップ機能のデモ。この場合は個人用のDropboxアカウントにMacを自動バックアップしている

フリーランスの業務を支援するDropbox Professionalの新機能

 上述したDropbox Plusの新機能群は、主にプライベートユースで役立つものだった。一方、Dropbox Professionalに追加された2機能は、個人事業主やフリーランスの業務を意識したものとなる。なおこれらの機能は、近日中に「Dropbox Business」各プランのユーザーにも提供される予定。

 1つめのブランド共有は、フリーランスのクリエイターなどがDropboxの共有リンクで取引先クライアントとファイルを共有する際に、特定のロゴや企業名、背景イメージなどを表示させることができるというもの。これにより「クライアントに自社ブランドを印象づけられる」としている。

 「フリーランスユーザーは、Dropboxを使ってクライアントとやり取りすることが多い。米国ではフリーランスで働く人そのものが増加しており、Dropboxではフリーランスを顧客ターゲットとした専門グループを社内に設けるなど、この市場を重視している」(ヤング氏)

 2つめのトラフィックとインサイトも、共有リンクをより便利にする新機能である。具体的には、共有リンクを使ってコンテンツを共有したあとで、共有相手が閲覧、ダウンロードしたかどうかを追跡できる機能だ。これにより、共有したファイルを相手が確実に受け取ったという「送達確認」ができる。

プライベートと仕事、2つの領域を橋渡しするサービス

 冒頭で触れたように、Dropboxはコンシューマー/プライベートユース向けのオンラインストレージとしてスタートし、その後ビジネスユース/企業向けにも領域を拡大してきたサービスだ。ヤング氏によると、Dropboxユーザーの80%は「プライベートと仕事の両方でDropboxを使っている」という。そのため、両領域で機能を追加しつつサービスを成長させ、2つの領域の“橋渡し”になるようなサービスを目指すという。

 Dropboxの設計思想も、プライベート/ビジネスの両方を意識したものとなっている。具体的には、1)シンプルな体験、2)コンテンツやナレッジが中心、3)信頼性と信用性、の3つで、ユーザーが抱える課題をこの3つの設計思想から取り組むのがDropboxだとヤング氏は説明する。新機能のDropbox Passwordsはその典型例で、多くのユーザーが覚えきれないパスワードをテキストファイルやWordファイルでDropboxに保存していることを受けて、もっと簡単かつ安全な方法を提供しようと開発したと明かす。

 Boxなど、ビジネス向けに特化した競合のオンラインストレージではセキュリティの高さを強調している。もちろんDropboxもセキュリティを強化しているが、他社とのアプローチの違いもあるという。

 「Dropboxのセキュリティアプローチは、(機能強化において)サーバー側にフォーカスしており、ユーザーは簡単に使えるものにすること。セキュリティをシステム側に組みこんでいるので、ユーザーは安心して使えると思ってもらえる」(ヤング氏)

 また「Microsoft 365」や「Google G Suite」など、SaaSスイートに組み込んだかたちでオンラインストレージを提供する競合もある。これらの競合に対する強みについては、まず市場の先駆者であること、高いユーザビリティと高いパフォーマンスを持つことを挙げた。

 「Dropboxは、クラウドストレージをコンシューマーが簡単に使えるかたちで提供した最初の企業だ。ファイルがバックグラウンドで自動同期される使いやさすさを提供したという点で、われわれは先駆者的な存在である。(転送速度の)パフォーマンスでもベストだと考えているし、信頼性も高い。Dropboxユーザーは、単にスプレッドシートを共有するのではなく、HD動画などリッチメディアの保存や共有に使っている。Dropboxは、さまざまなOSとデバイスで構成されるエコシステムの中心に位置している」(ヤング氏)

 2019年後半には、まったく新しいUIとしてチームの共同作業を支援する「Dropbox Spaces」を提供開始した。単なるファイル共有だけでなく、共同作業に関わるやり取りもそこに集約するという発想は、Dropboxにとって大きなシフトと言える。このDropbox Spacesに対するユーザーの受け入れも順調であり、「すでに40万以上のチームが使っている。これは当初の目標を上回るチーム数だ」と自信をのぞかせた。

 なお、Dropboxは大規模企業向けのDropbox Enterpriseも提供しているが、こちらについては今年後半に新機能を発表する予定だと述べた。

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