Unified Communicationをプライベートクラウドで利用可能
シスコ、テレワークを支援する電話サービスの選択肢に「UCM Cloud」追加
2020年08月24日 09時00分更新
シスコシステムズは、ホスティッド型プライベートクラウドによる新たな電話ソリューションとして、「Cisco Unified Communications Manager Cloud(UCM Cloud)」の提供を開始すると発表した。UCM Cloudは音声やビデオ、メッセージなどの統合コミュニケーションをWebexデータセンターで運用およびホストし、顧客ごとの個別環境として提供。これにより、在宅勤務やリモートワークが広がるなかでも、オフィス内で利用するオンプレミスでの運用と同様に、安心、安全な環境を実現できるという。
顧客の個別環境で電話サービスを利用可能に
日本でのサービスは、日本およびシンガポールのWebexデータセンターを活用し、全世界60カ国以上で利用できる。250ライセンスから利用が可能であり、1000ユーザー以上の企業が主なターゲットとする。まずは、金融や公共分野などを中心に提案活動を行なっていくという。
新型コロナウイルスの感染拡大とともに、在宅勤務が広がり、いつでも、どこでも、誰とでもコミュニケーションを確立することが求められているが、会社の電話が利用できない、携帯電話端末の費用がかかるなど、電話に関する課題なに直面している企業が多い。
シスコシステムズでは、2000年からオンプレミスで利用できるCUCM(Cisco Unified Communications Manager)の提供を開始し、2019年10月からは、Webexの技術を活用したパブリッククラウドベースのCisco WebexCallingの提供を開始している。
シスコシステムズ クラウド&ホスティッドコーリング営業部 マネージャの泰道亜季氏は、「CUCMを利用している企業から、安全な環境でクラウドに移行できないかといった問い合わせや、WebexCallingをプライベートクラウド上で利用できないかといった相談が増加している。新たに提供するUCM Cloudは、こうしたニーズに対応していくことになる」と位置づける。
CUCMをすでに導入している企業は、同じ機能を、クラウド環境で利用できるため、音声やビデオ通話、メッセージング、モバイルなどを、オフィスと同じ環境でどこからでもコミュニケーションでき、IP Phone やゲートウェイ機器の流用も可能になる。また、クラウド移行により、つねにUCMの最新機能が提供され、業務アプリケーションと電話システムの連携を柔軟に行える特徴も持つという。さらに、Cisco Webexデバイスや、Cisco Webex Teamsアプリケーションの利用も可能だ。
「Webex Edge Connectは、SD-WANなどの専用線でクラウドに接続するため、これまではセキュリティの問題からリモートでの電話業務に移行できなかった企業も導入できる。さらに、会社の電話を利用するためだけに出社しなくてはならないといった課題も解決できる」(同)としている。
価格については、パートナー経由で販売するため明確にしなかったが、「WebexCallingが、1ユーザーあたりコーヒー代程度としていたが、UCM Cloudはランチ代程度になる」としている。
同社では、従来から提供しているCUCMおよびWebexCallingも、継続的に提供する予定であり、「短期間で、低コストで利用したいというユーザーには、WebexCallingを提案していくことになる。あらゆる電話サービスを提供できる唯一の企業として、日本の企業のさまざまなニーズに対応したい」と述べた。
Webexの会議参加数は5億人以上に 日本でも1050万/月に成長
一方、同社のコラボレーションツールである「Cisco Webex」の利用状況についても説明した。
同社によると、2020年6月時点で、Cisco Webexによる会議への参加者は、全世界で延べ5億人以上となり、250億分以上の会議が開催されたという。また、日本における顧客数は、今年2月に比べて3倍に増加。会議開催数は5倍、会議参加者数8倍、無料トライアルの登録者数は40倍に増加。日本におけるデータセンターの大規模増強は5回に及んでいるという。
シスコシステムズ 代表執行役員社長のデイヴ・ウェスト氏は、「昨年の同じ日(8月21日)に記者会見を行なったが、その際には、東京オリンピックの開催時を想定し、柔軟な働き方や、通勤の課題などを解決するための準備として、Cisco Webexを提案し、無料トライアルも用意した。だが、その後、想定していなかった新型コロナウイルスの感染拡大という状況に陥った。この状況をみると、昨年の段階でツールを用意し、試してもらえる機会を設けていたことがよかった」と前置きする。
その上で「2020年8月には、日本における毎月の利用者数は120万人であったが、いまは毎月1050万人にまで増えた。また、開催される会議の回数は、35~40万回であったものが、160~170万回に増加している。在宅勤務での利用や教育分野での利用、医療分野や中小企業の利用などが進んでいる。日本では、急速にデジタルシフトが起きており、フレキシブルな働き方のためのコラボレーションツールが必要となっている。オフィスとリモートによるハイブリッドな働き方をサポートするコラボレーションソリューションとして、また、セキュアなビジネスプラットフォームとして、Cisco Webexが日本のユーザーに活用されている。シスコでは、新型コロナウイルスの感染拡大以降、日本の顧客のために、シスコが提供するテクノロジーやツールにアクセスしやすくし、さらには、事業変革の領域にも貢献し、企業文化や働き方にも変革も支援している」などと述べた。
これまで同社では、「働き方改革支援特別プラン」として、3カ月無償トライアルおよび初年度契約金額は全従業員の15%だけで済む特別価格プランを用意していたが、これをリニューアルして、2年目以降も特別価格で利用できるようにした。このプランを利用すると、1000人の利用者がいる場合でも、150人分のライセンス費用で済むことになる。
また、新たに「働き方改革支援特別プラン(ビデオ端末版)」を、2020年9月以降に開始する考えも示した。「快適なテレワークを実施可能にするために最適なハードウェアを、特別価格で提供する」(シスコシステムズ 執行役員 コラボレーション アーキテクチャ事業担当の石黒圭祐氏)という。
ニューノーマル時代の働き方を実現する3つのポイント
今回の会見では、同社のニューノーマル時代に向けた取り組みについても言及した。
シスコシステムズ 執行役員 コラボレーション アーキテクチャ事業担当の石黒圭祐氏は、同社の事例を示しながら次のように語る。「シスコジャパンでは、新型コロナウイルス発生前は、週4日間以上、オフィスに出社していた社員が74%に達していたが、発生後は、必要なタイミングだけ出社したり、まったくオフィスに出社する必要はないと考えている社員が62%に達している。これまで想定していた働き方や働く環境を変えていかないと、社員とのエンゲージメントができないのが実態である。つねにオンラインでつながり、場所を選ばずに社内外と安全にコミュニケーションを行なう環境を整える必要がある」と語る。
同社では、今後の働き方として、「オフィスとリモートを統合したハイブリッド環境の実現」、「対顧客への営業活動やイベント対応のオンライン化」、「自宅でオフィスと同等に働く環境の提供」という3点が重要になるとする。 「一部の社員の自宅に、ビデオ会議専用端末を配備することも行なっているが、これは、自宅でオフィスと同等の環境で働けるようにしたり、イベント運営や営業活動においても、自宅から安全に配信できる環境を整えたりする狙いがある。次のチャレンジは、安全につなぐことであり、テレワークの生産性向上や外部向けオンライン営業の品質向上だけでなく、経営層間のコミュニケーション向上や事業継続、社員の安全配慮にも貢献していく」と述べた。
さらにウェスト氏は、「日本のニューノーマル時代の働き方として、3つのポイントにフォーカスしている」とし、社員の安全や健康、セキュリティを確保するという観点での「人」、全社を無理なく、継続的に機能させる「ブロセス」、必要なインフラをセキュアに利用可能にする「ツール」をあげた。
「シスコは、人、プロセス、ツールという観点から、すべてのセキュアリモートワーカーを支援する。常時接続してフルタイムで在宅勤務する人たちや、現場を持っていたり、占有ワークスペースを持たないオンデマンドで働くワーカー、あらゆるデバイスからアクセスするBYOD環境で仕事をするワーカーといったさまざまなペルソナを想定し、質の高いエクスペリエンスを提供することができる。さらに、すべてのリモートワーカーを管理できるように、可視化したり、セキュリティを強化したりといったIT運用ソリューションも提供している。シスコは、エンドツーエンドのソリューションによって、どこでも、どのような働き方をしても、どんなデバイスを使用しても、セキュアなリモートワークを実現し、これらによって、顧客の成功を支援することになる」(ウェスト氏)。