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オヤジホビー-ワタシが好きな物はみんなも好き、かもしれない- 第239回

故障したパトカーのエンジン不具合の原因が判明、「アレ」が侵入していました

2020年08月09日 17時00分更新

文● にゃかむら(@TK6506) 編集● ASCII

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どこかがおかしいけど、どこだかわからない

 ただいま絶賛不調中のウチのCHPパトカー仕様のクラウンビクトリア。

 「カオスだもんね!PLUS」でこのクルマの取材を受けることになったんですが、待ち合わせ場所に行く途中でエンジン警告灯のCHECK ENGINEランプが点灯してしまいました。エンジンのどこかに何らかの不具合があるという、割とザックリとした警告です(第237回「『カオスだもんね!』取材前にCHPパトカーに起こった悲劇」)。

CHECK ENGINEランプが点灯。すぐに止まってしまうようなことはないものの、エンジンのどこかに不具合が発生しています

 取材後に、いつもハンヴィーの点検でお世話になっているスカイオートさんに立ち寄り診断機でチェックしてもらったところ、結果は【不特定のシリンダで失火を検出】とこれまたザックリ。エンジンが正常に爆発していない失火であることは確かめられたものの、それが8つあるどのシリンダーで発生しているのかがわかりません。原因を特定したいのに不特定っていう(第238回「パトカーの故障が思ったより深刻な事態でした」)。

 すぐには原因がわかりそうになかったので、その日はクルマを預けて帰宅しました。

混合気と圧縮、点火がポイント

 クラウンビクトリアのエンジンは、多くのクルマが採用しているのと同じ4サイクルエンジンです。4ストローク1サイクルの略で、吸入、圧縮、燃焼、排気の4つのストローク(工程)がひとつのサイクル(一連動作)となっています。

 最初の工程は吸気。吸気バルブが開き、ピストンが下がることで、ガソリンと空気が混ざった混合気がシリンダー内に吸い込まれます。

 次は圧縮。吸気バルブが閉じ、ピストンが上がって混合気を圧縮していきます。圧縮すればするほど燃焼時の膨張率が上がるためパワーも増すんですが、同時に混合気の温度も上がるため、圧縮しすぎると点火と無関係に着火してしまうなどの異常燃焼を起こしてしまいます。どのぐらい圧縮するかを比率で示す圧縮比は、クラウンビクトリアでは9:1。つまり1/9まで圧縮するということですね。

 そして燃焼。点火プラグの先端に火花が飛び、圧縮された混合気に点火されます。燃焼ガスは爆発的に膨張してピストンを押し下げ、その押し下げる力がエンジンが発生するパワーとなります。

 最後は排気。燃焼により下がりきったピストンが慣性で上昇を始め、排気バルブが開かれて、燃焼し終わったガスが外に排出されます。ピストンが上がりきって排気が終わると1サイクル終了で、新たに吸気工程が始まります。

 前回も書いたとおり、エンジンが正しく動くには良い混合気、良い圧縮、良い点火の3つの要素が必要です。逆に、調子が悪い時は、そのどこかにエラーが発生しているということになります。

混合気と圧縮は大丈夫そう

 混合気についてはその場のチェックで異常がなかったので、残るは2つ。圧縮と点火です。

 圧縮のエラーは、たとえば吸気バルブや排気バルブがきちんと閉じていないため混合気が外に出てしまっているとか、ピストンの周囲にはめ込まれているピストンリングが摩耗して隙間から下に漏れ出ているなどが考えられます。

 ただ、圧縮不良の時は、エンジンがかかりにくい、マフラーから白煙が出る、アイドリングが不安定、オーバーヒートになるなどの症状が出ることが多いそうで、たぶん違うだろうとのこと。最悪エンジンのオーバーホールが必要になる可能性もあったので、ひと安心です。

火花が飛んでいませんでした

 クルマを預けて数日後、どうやら原因がわかったという連絡がありました。

 点火系のチェックでまず最初にやるのは点火プラグの確認です。

 クラウンビクトリアはプラグコードのないダイレクトイグニッションを採用しています。そのせいなのかどうかはわからないですが、点火プラグを外すのがめっちゃ大変。

 エアクリーナーにつながるホースを外し、8本の点火プラグそれぞれに付いているイグニッションコイルの配線を外し、イグニッションコイルを固定している7mmのボルトを外し、コイルを引き抜いて、ようやく点火プラグにアクセスできるという感じ。自分でやったらチェックするだけでも一日仕事です。

ぱっと見、どこに点火プラグがあるのかもわかりません

丸い穴が点火プラグが入っている部分。これが8個もあるんだから点検も大変

 チェックの結果、3、4番シリンダーのプラグがベタベタに濡れていたそうです。で、失火はこれが原因だろうと。

上が異常な点火プラグ。先端部分が濡れて黒っぽくなっています

なんとオイルが侵入

 濡れていると失火するのは火花が飛びにくくなるせいなんですが、ここで問題なのはなぜ濡れているのかということ。よくあるのは燃焼しきれなかったガソリンが付着する「プラグかぶり」で、これは混合気のガソリン比率が高く濃い状態になっているために起こる現象です。余計な空気を吸い込んでしまっている時の逆ですね。

 でも、今回は違いました。オイルで濡れていたのです。

 通常、シリンダー内にオイルが入りこむことはありません。オイルが侵入するのはどこかしら本来あるべきでない隙間がある証拠で、たとえばピストンリングが摩耗すると下からオイルが入り込むオイル上がりが起こり、吸排気バルブに隙間があると上から入り込むオイル下がりが起こる可能性があります。

 ただ、いずれも圧縮不良と原因は同じなので、症状からするとそのどちらでもなさそう。じゃあいったいこのオイルはどこから来ているのか追いかけたところ、ようやく突き止めたとのことです。エンジンに空気を送り込むインテイクマニホールド(インマニ)でした。

 1996年〜2001年製のクラウンビクトリアのインマニはプラスチック製で、亀裂が入り、クーラントが漏れてオーバーヒートするという不具合があり、対策品が出ているそうです。1999年生まれのウチのクラウンビクトリアはバッチリ当てはまっています。

左がウチのクルマに付いているインマニ。右は対策品。左上と右下が変わっています

 オイルの侵入は亀裂とは関係ありませんが、対策品ではほかにもいろいろ改良されていて、たとえばホースの差し込み口が別部品だったのが一体化されたりしています。ウチの不具合はこの部分が原因で、隙間からオイルが入り込んでしまったようです。

 入り込んだオイルがごく少量だったので、マフラーから白煙が出るほどでもなく、オイルが目に見えて減るということもなかったんでしょうね。

 新しいインマニはアメリカのショップから現在取り寄せ中。送料を入れても国内の半額以下とはいえ、工賃と合わせると価格は6桁になっちゃうなぁ。とほほ。

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