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AIによる自動運用監視と“快適な利用”の保証を実現「Juniper Mist WAN Assurance」

ジュニパーが「AIドリブンエンタープライズ」をWANに拡大、構想完成へ

2020年08月06日 07時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 ジュニパーネットワークスは2020年8月4日、エンタープライズネットワーク向けの最新サービス「Juniper Mist WAN Assurance」など3製品を発表した。これにより、AIを用いてネットワークを自動運用する「AIドリブンエンタープライズ」構想をWANにも拡張した。

ジュニパーの「AIドリブンエンタープライズ」製品ポートフォリオとMistクラウドサービス

ジュニパーネットワークス エンタープライズ担当 上級副社長のスジャイ・ハジェラ氏、日本法人 Mist事業部 事業部長の鈴木良和氏

 AIドリブンエンタープライズとは、ジュニパーが2019年に買収したミストシステムズ(Mist Systems)が2015年から展開/製品化してきた技術構想だ。ネットワークの運用監視にAI技術を適用することで、障害予測を行ったり、インサイトを得たり、障害修正のためのアクションを自動化し、さらにはエンドユーザー体験(UX)の可視化も実現する。

 ジュニパーではこれまで、無線LAN(AIドリブンエンタープライズ 1.0)、有線LAN(同 2.0)、セキュリティインテリジェンスの組み込み(同 3.0)と、Juniper Mistの製品範囲を拡大してきた。そして今回の新製品「Juniper Mist WAN Assurance」によって、AIドリブンエンタープライズを“バージョン4.0”にアップグレードし、WANも対象範囲に加えた。

新製品「Juniper Mist WAN Assurance」の追加により、AIドリブンエンタープライズはは“バージョン4.0”に

 このWAN Assuranceでは、ジュニパーのファイアウォール「SRX」からクラウド上のMist AIエンジンにテレメトリデータをストリーム送信することで、ユーザー/アプリケーションレベルまでドリルダウンしたWANのパフォーマンスに対するインサイトのほか、障害やトラブルの事前検出やその修正を自動化できる。ジュニパーでエンタープライズ担当SVPを務めるスジャイ・ハジェラ氏は、「WAN分野への拡大によってAIドリブンエンタープライズの全体像をカバーした。完璧になった」と説明した。

WAN Assuranceで提供されるダッシュボードのひとつ「サービスレベル期待値(SLE)」の画面。詳細な稼働状態の

 合わせて、Mist AIを利用した仮想ネットワークアシスタント「Marvis」による対話型インタフェースも追加された。ネットワーク管理者は、たとえば「昨日の○○さんのZoom通話では何が問題だったのか?」といった具合に、特定のユーザーやアプリケーションの通信についてMarvisに自然言語の会話形式で問い合わせることができる。「これはチャットボットではない。(AIOpsの)インターフェイスだ」とハジェラ氏は強調する。

自然言語での問い合わせができる、仮想ネットワークアシスタント「Mavis」の対話型インタフェース(現時点では英語のみ対応)

 Wi-Fi 6対応の無線LANアクセスポイントもラインアップを強化している。新たに屋外向けの「AP63」、屋内ウォールプレート型の「AP12」など4機種を発表している。「屋外から屋内、大学の教室、病院の病室、ホテルの個室など、すべてのフォームファクタに対応した」(ハジェラ氏)。なおWi-Fi6は、小売業、教育、公共機関、企業のリモートワークなど、業界とユースケースの両面で導入拡大が続いているという。

Wi-Fi6 アクセスポイントでは新たに4機種を投入した

 ハジェラ氏は、AIドリブンエンタープライズというコンセプトの特徴を「エンドユーザー体験へのフォーカス」だと語る。

 「アクセスポイント、スイッチ、ルーターといった機器が稼働しているかどうかが重要なのではない。ユーザーがネットワークにきちんとつながり、すぐれた体験を享受できるかどうかが大切であり、われわれの製品はそこまでを保証する」(ハジェラ氏)。こうしたユーザー体験へのフォーカスが、今後10年間のネットワークに求められることだと続ける。

 ジュニパーのMist事業は、2020年第2四半期に前年同期比で172%増の成長を遂げたという。また、市場全体がマイナス成長となる中で、エンタープライズ事業では2020年上半期のスイッチ収益が前年同期比7%増、キャンパス/ブランチ向けスイッチ収益が同10%増と成長している。

 日本市場における取り組みとして、ジュニパーネットワークス Mist事業部 事業部長の鈴木良和氏は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策ソリューションを2つ紹介した。鈴木氏によると、新型コロナ対策ソリューションの引き合いは多いという。

 1つめは、2020年4月にリリースした「Mist Premium Analytics」を使ったソリューションである。Mist Premium Analyticsは、Wi-Fi以外のデータソースやサードパーティ製品とのデータ連携機能と、BI機能を備えた、ネットワーク使用状況の高度な分析サービスだ。

 これを活用することで、Wi-FiとBLE(Bluetooth Low Energy)のデータから社員デバイスのオフィス内位置情報を取得し、誰が/いつ/どこにいたのかを細かく分析できる。この技術をCOVID-19対策に応用し、オフィスを複数ゾーンに区分して、同一ゾーンに何人の社員がいるのかを可視化(=“3密”のモニタリング)したり、陽性診断の出た社員の行動履歴から濃厚接触者を確認したりすることができる。

 もう1つは、迅速な在宅勤務開始を支援するソリューション「Enterprise at Home」だ。これは、社員にMistの無線LANアクセスポイントを支給し、自宅に設置してもらうだけで、社内ネットワークとのVPN接続(IPsec/L2TP L2トンネル)を自動的に確立して通信可能にするソリューションだ。

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