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HTCがVR空間上で「VIVEビジネス・デー」を開催、最新のビジネス向けシステムを紹介

2020年06月25日 13時00分更新

文● 高橋佑司/ASCII

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 HTC NIPPONは6月24日、法人向けのVRカンファレンス「VIVEビジネス・デー ~VR導入が丸わかり!最新VRソリューションと導入事例を紹介~」を、VRカンファレンスプラットフォーム「ENGAGE」上にて開催した。

 「VIVEビジネス・デー」は、5回にわたって実施されるVR機器やソリューションについて紹介するカンファレンス。今回はその第1回目になる。「無線VR」「安全教育」「VRビジネス」「VR空間ビジネス」をキーワードに、これからVRの導入を検討している法人を対象に、最新の製品情報やソリューション、導入事例などを紹介した。

 VRヘッドマウントディスプレー「VIVE」シリーズを展開するHTCならではともいえるVRカンファレンス。HTCでは、去年までオフラインにてカンファレンスを開催していたが、今回は新型コロナウイルス感染症の影響もあり、初めてオンライン上のVR空間で、「VIVEビジネス・デー」を開催するに至った。

 HTCとしても初めての試みになる今回のVRカンファレンスの様子をレポートしていく。なお、カンファレンス全体のアーカイブについては、以下の動画から確認できる。

HTCならではのVR空間でのカンファレンス

 会場となったのは「ENGAGE」。ユーザー登録してアプリをダウンロードすれば、無料でカンファレンスイベントに参加できるVRカンファレンスプラットフォームだ。なお、VRヘッドマウントディスプレーが無くても、通常の液晶ディスプレーを使用してカンファレンスに参加できる。

「ENGAGE」のメニュー。開催されるイベントが一覧で見られる

自分のアバターはカスタマイズ可能。写真から顔を制作することも

 「VIVEビジネス・デー ~VR導入が丸わかり!最新VRソリューションと導入事例を紹介~」では、まず始めにHTC NIPPONの代表取締役社長 児島全克氏が開会の挨拶をした。VR関連事業のデータから市場予測や、VIVEでエンタープライズ向けに展開している製品「VIVE Focus/Focus Plus」「VIVE Pro Eye」「VIVE Cosmos/Cosmos Elite」について紹介。

 各製品の特長などを、ビジネスでの使用用途も含めて解説した。また今回、一体型VRヘッドマウントディスプレー VIVE Focus Plusにて、PCでレンダリングした高画質コンテンツを無線でストリーミングして表示する「VIVE Enterprise Remote Rendering」をサポートすることが発表された。

 従来のVRヘッドマウントディスプレーは、PCに有線で接続し、映像を出力するものが多かった。そうした中VIVE Focus Plusは、PCに接続する必要がなく、単体で手軽にVRコンテンツを楽しめるスタンドアローン(独立型)のデバイスになっている。

 ただ、手軽ではあるものの、やはりPCに接続せずに単体で映像の処理を行なう都合上、PC接続型のVRヘッドマウントディスプレーに比べて、描画負荷の高い高画質なコンテンツを表示するのは難しいところもある。

 しかし、今回対応が発表された「VIVE Enterprise Remote Rendering」は、映像の描画処理をPCで行ない、その映像を無線でVIVE Focus Plus側にストリーミング表示することで、VIVE Focus Plusでもより負荷の高い高画質なコンテンツを表示できるようにするものだ。

 NVIDIAとAMDのグラフィックスに対応しており、PCとはオフラインのイントラネットを利用して接続が可能。現在この機能は、法人向けのソリューションとして、βサービスを開始中だ。

 そのほか、VIVE Pro Eyeの視線追跡機能を利用したユーザーの行動分析など、VIVEプラットフォームを用いたビジネスの利点を紹介している。

VRを利用したビジネスをサポートする
「VIVE エコシステム」を紹介

 次いで登壇したのは、「VIVE エコシステム」を担当するHTCの政田雄也氏。HTCが展開しているさまざまなプログラムから、エンタープライズ向けのサービスなどを紹介した。

 ここで紹介されたのは、複数のVIVE Focus Plusを管理用のPC・デバイスから一括管理できる「VIVE Central Control Platform」など。このプラットフォームを利用すると、展示会やイベント、講義や会議などの際に、複数のVIVE Focus Plusをモニタリングしたり、同時にコンテンツを再生したりといったコントロールが可能になる。「VIVE Central Control Platform」は法人向けに近日公開予定だ。

 また、VIVEを用いた研究・開発用に無料で提供している「VIVE SDK」についてもここで紹介し、3Dの空間サウンドの設定や、目元だけにとどまらない顔全体のトラッキング、片手21点のハンドトラッキングなど、豊富な対応機能を解説した。

 そのほか、昨今の外出自粛などの情勢に合わせて、“リモートワーク”をテーマにした取り組みも紹介。5月にソーシャルVRアプリ「VRChat」上にオープンしたバーチャルショップ「VIVE VR Store」や、VR会議アプリ「VIVE Sync」、そして今回のVRカンファレンスに使用した「ENGAGE」などについて取り上げ、幅広く展開する同社のエコシステムについてアピールした。

ゲスト5社がVR導入事例を紹介

 ここからは、今回ゲストとして参加したVR関連事業を展開している5社の代表より、それぞれの事業紹介が行なわれた。

●Tokyo XR Startups 若山泰親氏

 Tokyo XR Startupsは、VR/ARなどのXR関連事業を展開するスタートアップ企業に対して、インキュベーションプログラムを提供している企業。投資や知識・ノウハウの提供などを通じて、スタートアップの支援はもちろん、XR業界全体のオープンイノベーションを推進している。

 6か月単位の育成プログラムを実施しており、本プログラム出身の企業としては、InstaVR、ハシラス、よむネコ、カバー、MyDearestなど、VR業界の一線で活躍する企業も名を連ねる。

 昨今、オンライン上での業務の需要が高まっていることもあり、今後はVRなどを活用した事業の重要性が増していく中で、同社ではそうした事業を開始するスタートアップの支援を実施していくという。

●イマクリエイト 山本彰洋氏

 イマクリエイトは、XRを活用したトレーニングアプリケーションの開発などを行なっている。同社の開発したゴルフトレーニングアプリ「CanGolf」は、未経験者や初心者が気軽にゴルフのトレーニングができるように開発されたもので、現実にはなかなかハードルが高いゴルフの練習も、VRでプロのお手本を見ながら練習できるのが強みになっている。

 スポーツ選手などの熟練の技は、なかなか見ただけで真似することは難しいが、VR空間で体の動きをトラッキングしながら練習することで、プロの動きと重ね合わせてどこが違うのかより視覚的にわかりやすくすることもでき、そもそも家の中では練習がしづらいようなことも、VRではそうした物理的制約を超えてトレーニングができる。

 同社では、そうしたVRを活用した新しい技能伝承の形を実現することを目指している。

●サイバネットシステム 荒井葉月氏

 サイバネットシステムでは、前述のVIVE Focus Plusの無線VR機能「VIVE Enterprise Remote Rendering」を用い、3DのCADデータから設計レビューを行なう「バーチャルデザインレビュー」の開発を行なっている。「バーチャルデザインレビュー」では、CADデータをアプリから直接VR空間に表示し、遠隔地を含む複数人でレビューできるソフトウェア。プロダクトデザインの設計段階において、試作品を作る前にVR空間でプロダクトを確認したり、メンテナンス時のシミュレーションをしたりといったことが可能だ。

 日本の製造業で使用されている80種類以上のCADおよびCAEソフトに対応しているといい、データ変換や加工の手間をかけず、手軽にVR空間に持ち込める。VR空間では、実際のサイズ感などを直感的に理解できるほか、自由な角度から見回せたり、オンラインで遠隔地からも参加できるなどの利点がある。レビュー時の音声やメモなどは、付箋の形で記録できる。

 VIVE Focus Plusは手軽に使えるものの、単体では大きなCADデータなどを読み込むことは難しい。しかし「VIVE Enterprise Remote Rendering」を用いることで、手軽かつ大きなデータも読み込めるようにしているという。ケーブルに引っ掛かったりといった安全性の面でも使いやすく、日本の製造業をサポートするプロダクトとして展開を目指している。

●理経 石川大樹氏

 理経は、BtoBの非ゲーム分野でVR事業開発に注力している企業。VIVE Pro Eyeのアイトラッキングと脳波の測定を組み合わせて、運転時に注視する場所や脳の働きを測定し、より効果的な自動車デザインを提案したり、自動運転におけるAIの映像学習で、VRで作成した走行時の映像を学習させることで、コストを削減しながら自動運転の開発をしたりといった取り組みを行なっている。

 また、消防士の訓練として、火災における火の状態変化などを目で見て理解し、危険度を判断できるようになるためのトレーニングや、地震などで停止したエレベーターから乗客を救出する際の訓練などをVR化することで、コストを削減しながら教育を実施するためのコンテンツを開発している。

 非ゲーム分野では、VRを用いることで一定の費用対効果が期待できることがプロジェクトの重要な要件であると語り、BtoB事業においてコスト削減を実現するVRプロジェクトをアピールした。

●Gugenka 三上昌史氏

 Gugenkaは、VTuber「東雲めぐ」やデジタルフィギュア「HoloModels」といった事業を展開している。「HoloModels」は、アニメキャラクターなどの3Dモデルを用いたバーチャルフィギュアで、スマートフォンのAR機能と組み合わせて、現実空間の映像にアニメキャラを合成したり、デジタルフィギュアのポーズや大きさを変えたりして楽しめる。

 またGugenkaでは、VRChat内に「Gugenkaバーチャルショップ」を展開しており、VR空間上の店舗で、現実の店舗と同じようにデジタルフィギュアを眺めたり、場合によってはVTuberから製品説明を受けたりといったことも可能。オンラインでどこからでもこのバーチャルショップを体験できるのも強みだ。

 同社ではこうしたバーチャルショップによる製品販売を「バーチャルコマース」と称し、「HoloModels」アプリのダウンロード数やデジタルフィギュアの販売数がこれによって3倍になったなど、バーチャルショップの可能性を紹介した。なお、上記の「VIVE VR Store」もこの「Gugenkaバーチャルショップ」の上階に設置されており、製品販売数において一定の効果を確認できたとのこと。

VR上での懇親会も実施
VRビジネスに興味がある人は必見

 「VIVEビジネス・デー」は、全5回のシリーズで開催を予定しており、次回もオンラインで実施する。今回はメインイベント後にVR空間での懇親会も行われており、登壇したゲスト企業なども含め、ビジネスの相談をするのにもまたとない機会だ。

 オンライン上での開催ということもあって、地理的な制約がないのも大きな利点といえる。VR事業に興味がある人、法人向けでのVR展開などについて知識を深めたい人などもぜひ次回の参加を検討してみてはいかがだろうか。

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