このページの本文へ

特別企画@プログラミング+ 第47回

日本ディープラーニング協会がオンライン勉強会を開催

DXとAI、withコロナ時代のディープラーニングを語る!

2020年06月03日 09時00分更新

文● ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 ディープラーニングを中心とする技術による日本の産業競争力の向上を目指して設立された一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が、「#今こそ学ぼう」と銘打ち、無料公開中の学習コンテンツの紹介や、オンライン勉強会を積極的に実施している。

 JDLAが実施しているG検定は、AIを産業応用するために必要なディープラーニングの知識を問うもので主に一般のビジネスマン向け、E資格が、ディープラーニングの実装能力を問うエンジニア向けの資格である(詳細は前回記事「ITの新常識、日本ディープラーニング協会の「G検定」が受験料半額で実施!」参照)。

 そのG検定・E資格の合格者コミュニティ「CDLE(Community of Deep Learning Evangelists)を対象にした「CDLE勉強会#2」が5月26日、ABEJA代表取締役社長CEO 兼 共同創業者の岡田陽介氏を講師に招いて開催された。

自然言語処理(NLP)でも人間を超えつつあるディープラーニング

 岡田氏は「ABEJAのデジタルトランスフォーメーション~AIが実現するプロセス革命~」と題して、AI(人工知能)の進化について解説した。

 画像認識においては、AlexnNetが2012年に登場したことにより、AIはすでに人間の精度を超えているが、岡田氏は2018年にELMo(Embeddings from Language Models)、BERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)が発表されたことで、自然言語処理(NLP)においてもブレイクスルーが起こったと評価。「ディープラーニングは画像認識の分野で進化したが、自然言語処理でも目覚ましい進歩を遂げている。自然言語処理でも人間に匹敵する力を持つ日もそう遠くないと思う」と述べた。
 

岡田氏が紹介した、自然言語処理のモデルを評価するGlueベンチマーク。人間が現在12位となっている。baiduのERNIEやgoogleのT5など多くの言語モデルが人間を超えている(「CDLE勉強会#2」岡田陽介氏の講演より)

 良質なAIモデルをつくるためには、質の高いデータを一定量集めることが極めて重要だ。しかし、逆に言えば、現実空間の情報をいかにしてサイバー空間のデータに変換するか、これができていない企業が多く、それがAI導入の大きなボトルネックとなっているのだ。このデータの問題について、岡田氏はテクノロジーだけの話ではなく、全体の中で、どうやってビジネスをドライブさせていくかが問われるとしたうえで、AI導入のポートフォリオや、人間が介在してAIを学ばせる「Human In the Loop」(人間参加型の機械学習)の概念を紹介した。そして、次のように述べた。

 「これまでは業務の改善をフィジカル空間上だけでやればよかったが、デジタル空間で行うにはDigital Operationが必須になる。これは日本が得意な分野だと思っている。もし、このプロセスを最適化することができれば、世界で勝てる部分になる」
 
 その後、AI導入に際して、PoC(概念実証)の期間を少なくするために、AIのシステムに人間を介在させたABEJAの取り組みや事例、アノテーションしながら実業務にAIを活用する方法を紹介。さらにCDLE会員からの「アノテーションのために専門知識が必要な領域があるが、その場合はどのように対応するのか」「(画像などの)解像度の高さは学習効率や適合率に影響するのか」といった質問に答えた。


質疑応答で岡田氏は、AIが認識できる画像の解像度について問われると、「アノテーションの際、人が見てわからないものは、AIも判定できない。わからないものはわからないとして、お客様にお返しするフローまでを定義しておくことが重要」と答えた(「CDLE勉強会#2」岡田陽介氏の講演より)

withコロナ時代、ディープラーニングで何ができる?

 5月19日には、JDLAの委員会活動の一つ、産業活用促進委員会主催の「JDLA内部勉強会」がオンライン開催され、connectome.design株式会社代表取締役社長の佐藤聡氏(JDLA理事)をファシリテーターに、デロイトトーマツコンサルティング合同会社執行役員で株式会社メルカリ R4D顧問の森正弥氏、エクサウィザーズ代表取締役社長の石山洸氏、株式会社Preferred Networksフェローの丸山宏氏が、wtihコロナ時代のディープラーニングについてディスカッションした。

 新型コロナウイルス感染症のパンデミックをきっかけに、リモートワークやオンライン会議など、デジタルトランスフォーメーションの機運が高まっている。勉強会ではまず、AIで今できることや、AIのクリエイティビティについて意見が交わされた。

 丸山氏は「(AIの創造物は)見栄えが良いと創造的に見えるが、人間は、アインシュタインのように、今までにないものを考えることがあり、そこについてはギャップがある」と問題提起。それに対して石山氏は、新型コロナウイルスにより外出自粛を余儀なくされた人々に向けて、毎晩ピアノのソロライブを配信している、ジャズピアニストの小曽根真氏に触れ、「例えば、小曽根さんが1日弾いただけだとジャズのピアニストがピアノを弾いているだけだが、毎晩弾くことにより、祈りみたいになっていく。こういうシンボリックなところをAIでどうやって設計するのかは、個性との兼ね合いがあるので難しい」と述べた。一方、森氏は人間の創造性に関わるファクターとして、飽きに着目。単純作業を繰り返すロボットに対して、人間は飽きることでモデルを変えたくなり、その点が創造性につながっているという見方を示した。
 
 ディープラーニングのビジネスへの応用は進んでおり、記事や広告の作成、創薬系の事例、想像力が重要だと思われていた味覚の部分でもフル活用されているという。

 また、wtihコロナ時代においては、データサイエンスやデータリテラシーの重要性が高まっている。新型コロナウイルスによるロックダウンなどで、ゼロリスクに対する倫理観が変わりつつあり、今まではリスクを恐れてAIを導入できなかった企業にも影響を与えるのではないかという見通しなどが語られた。

 JDLEでは、Slackやconnpassを使ったCDLE合格者向けの情報発信や、合格者同士の交流が行われており、今後も継続的に、勉強会がオンラインで実施される予定だ。
 

【日本ディープラーニング協会推薦図書『AI白書2020』】


人工知能(AI)のビジネス化に必要な情報をまとめたベストセラー『AI白書』の最新版。G検定の試験範囲(シラバス)である、産業への応用、法律、倫理、現行の議論も掲載しており、G検定の対策に最適!

発売日:2020年3月2日
編:独立行政法人情報処理推進機構 AI白書編集委員会
発行:株式会社角川アスキー総合研究所
発売:株式会社KADOKAWA
ISBN:978-4-04-911034-0
定価:本体 3,800円+税
版型:A4判 536ページ 2色刷(冒頭のみ4色)
購入はこちらまで

カテゴリートップへ

この連載の記事
ピックアップ