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企業の「DX連携プラットフォーム」として非IT部門のビジネスユーザーも含めた浸透を図る

誕生20年目の「DataSpider」、セゾン情報が新戦略を説明

2020年05月13日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 セゾン情報システムズは2020年5月12日、データ連携ソフトウェア(EAI)の「DataSpider Servista」およびクラウドサービス(iPaaS)の「DataSpider Cloud」に関する記者説明会を開催した。初版発売から20年目となる今年度、DataSpiderを「DX連携プラットフォーム」と位置づけ、より幅広い企業への導入を促すべく“Non-ITユーザー”(非IT部門ユーザー)でも利用しやすいデータ連携ツールとしての方向性をさらに強化していく。

DataSpiderの製品特徴。50種類以上の連携先に対応しており、ノンプログラミングでデータ連携処理が開発できる

2001年の初版発売から今年で20年目となる。現在は同等機能を備えるクラウドサービス版「DataSpider Cloud」もラインアップしている

今年度は「全社一丸となってHULFTやDataSpiderを広げていく」組織体制に

 説明会ではまずマーケティング部長の野間英徳氏が、DataSpiderやシステム間/企業間通信ミドルウェア製品「HULFT(ハルフト)」など、最新の“データマネジメントソリューション”関連ビジネスについて、ビジョンや戦略を説明した。

 HULFTやDataSpiderを通じて同社が目指してきたものは、システム間/企業間やデータの自在な連携=「業務をつなぐ」ことである。それは、現在の「働き方改革」や「業務自動化」「在宅勤務/リモートワーク」といった課題解決においても有効利用できると考えられ、実際にHULFTやDataSpiderは幅広いシーンで活用されてきた。

DataSpiderの主なユースケース4つ。システム間連携だけでなく、業務オートメーションのような“現場課題”解決にも使われている

 野間氏によると、セゾン情報では今年度、DataSpiderやHulft、BIのTableauを活用した「リンケージ・サービス」の提供を本格化させる。その動きも背景として、これまでHULFT事業部の傘下にあったDataSpiderやHULFTの開発/マーケティング/テクニカルサポートの各部門を独立させ、全社横断的な組織として位置づけ直している。

 「セゾン情報システムズは今期で50周年、またDataSpiderは誕生から20年目を迎えた。これを契機に、今年度からあらためて、全社一丸となってHULFTやDataSpiderを広げていこうという体制になった」(野間氏)

DataSpiderは時代の変遷に合わせてコンセプトを進化させてきた。今後は「DX連携プラットフォーム」を掲げるという

 国内企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた取り組みと課題を調査したデータ(ITR「IT投資動向調査2020」)によると、部門横断的なデータ活用が求められている一方で、それを実現するデータ基盤の欠如、その基盤を運用するエンジニアの不足、それを活用してデータ分析を行える人材の不足といったポイントが浮かび上がる。こうした課題の解消を目指した製品を提供していくというのが、セゾン情報の考えるデータマネジメントソリューションの製品戦略だ。

 なお、DMBOK(ディンボック、Data Management Body of Knowledge)ではデータマネジメントの要件として11項目が定義されているが、同社ではそのうち「データ統合と相互運用管理」「メタデータ管理」「データ品質管理」がDX推進において重要な要件だと捉えており、これらを重視した製品開発を行っているという。

国内企業におけるデータ活用ニーズと課題をふまえ、データマネジメントソリューションの製品戦略を打ち出した

非IT部門ビジネスユーザーへの浸透も図り「DX連携プラットフォーム」へ

 続いて、DataSpiderやHULFTの製品開発や研究に携わるテクノベーションセンター長の有馬三郎氏が、今年度実施された開発組織改変の狙い、データ連携ツールに対するニーズの変化と、それに基づくDataSpiderのアダプタ開発方針などを説明した。

 2016年4月の設立から昨年度(2019年度)まで、テクノベーションセンターは先端技術のR&D専任組織として、製品開発部門とは独立して運営されてきた。だが今年度から、このテクノベーションセンター/先端技術部と、HULFT/DataSpiderの製品開発部とが統合した組織形態へと変更された。

これまでHULFT/DataSpiderの製品開発部門はHULFT事業部門の配下にあったが、R&D組織であるテクノベーションセンター内に統合された

 今回の組織統合に期待するメリットについて、有馬氏は「ユーザーニーズと技術トレンドを取り入れたR&Dの高速化」「顧客価値をさらに増大させる」といった点を挙げた。

 「最近は技術トレンドの変化がめまぐるしく、他方で顧客ニーズも“百社百様”になっている。そうした状況下で、われわれはトレンド変化に追随すると共に、ニーズに合致する製品を提供していかなければいけない。トレンドを把握し、アジリティを持って決定し、迅速に(プロトタイプを)作る。作ったら顧客に使ってもらい、良いフィードバックが得られれば製品化する。さらには『これ、HULFTらしくないけどいいね!』と顧客を驚かせるような面白いものも発見していきたい」(有馬氏)

R&Dと製品開発の部門を統合したことで、情報を双方向に共有し、顧客ニーズに対応した製品を迅速に開発できる仕組みを整える狙い

 それでは、実際の顧客ニーズはどうなっているのか。有馬氏が示した調査データ(日経BPコンサルティング)によると、「データ連携ツールが必要/やや必要だと思う」企業ユーザーは6割超(66.5%)を占めている。特に「Salesforceやkintone、BlackLine、Concu、KyribarといったSaaSを利用する企業が増え、それをオンプレミスのシステムともつなげたいというニーズが高まっている」と、有馬氏は説明する。

 ただし、ツール導入が進んでいる/具体的に計画されているとした企業は従業員1000人以上規模の層が多く、それよりも小規模な企業ではまだ具体的なツール導入に至っていないケースがほとんどだった。

 「従業員数1000人未満、300人未満といった企業では、まだまだデータ連携ツールの導入や検討が進んでいない。こうした企業のニーズを拾っていくためには、“Non-ITユーザー”(非IT部門のユーザー)に対して、いかに使いやすい製品を提供するかにかかっているのではないかと考えている」「Non-ITのビジネスユーザーには、日本語で安全に使える、直感的に使える、そして自分たちだけでも簡単に利用できるものが求められている」(有馬氏)

データ連携ツールに対する国内企業のニーズは高いが、中小企業層では導入が進んでいない。Non-ITユーザー向けの施策が鍵を握る

データ連携ツールをめぐる環境変化。SaaSとの接続、Non-ITユーザーでも使える直感的UI/UX、シンプルさなどが求められていると説明した

 こうしたNon-ITユーザーの獲得に向けて、どのような開発方針をとっていくのか。有馬氏は、DataSpiderと外部システム/データソースを接続するアダプタの開発方針を例に挙げて説明した。

 DataSpiderのようなデータ連携ツールでは、多様な外部システムとの接続が求められる。業種特化したシステムに加えて、たとえば人事、経理、マーケティング、サポートなど部門特化したシステムへの接続対応も必要だ。ただし、品質を維持しつつ安価に提供するためには、あらゆる接続先に専用アダプタを用意することもできない。そこで、JDBCやファイル接続、APIといった汎用アダプタと専用アダプタを組み合わせて適用し、カバレッジをできるだけ広める。これがDataSpiderの戦略だ。

 「こうすることでITとNon-ITの壁、業務ごとの壁をデータ連携で“溶かし”、顧客ニーズを満たしていきたいと考えている」(有馬氏)

業種ごとのソリューションの壁だけでなく、ITとNon-ITの間にも壁は存在する。DataSpiderによってこうした壁を乗り越える基盤構築を提案していく

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