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eスポーツ専用スタジオを緊急開設したトヨタの狙い

2020年05月10日 10時00分更新

文● 鈴木ケンイチ 編集●ASCII

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レースができないならオンラインで!
プロドライバーの発信からトヨタが動く!

 コロナ禍の影響により、国内のモータースポーツイベントは、そのほとんどが中止、もしくは延期となっている。そうした中、トヨタはeスポーツ専用のスタジオ「e-Motorsports Studio supported by TGR」(以下e-Motorsports Studio)を4月17日に開設。さっそく29日には、国内トップドライバーが多数参加するオンラインイベント「TGR e-Motorsports Fes」を実施した。

先日開催された「TGR e-Motorsports Fes」

 e-Motorsports Studioは、レーシングドライバーとeスポーツのトッププレイヤーに向けて用意された施設で、PlayStation 4の「グランツーリスモSPORT」用レーシングシミュレーター4台が備えられている。その場所はトヨタの事業所内というだけで、詳細は非公開だ。

詳細は非公開だが、内部はこのようになっているようだ

 今回は、この施設の担当者であるGAZOO Racing Company GRブランドマネジメント部の佐藤 潤氏と、4月29日開催の「TGR e-Motorsports Fes」に参加した小林可夢偉選手、大嶋和也選手に話を聞いた。

リアルとバーチャルの枠を超えたコンテンツを発信したい!

――「e-Motorsports Studio」をオープンさせた経緯を教えてください。どういったきっかけで実施することになったのでしょうか?

佐藤 潤氏(以下敬称略) レーシングドライバーの方々の「このような時だからこそ、一人でも多くのファンの方にモータースポーツの魅力を届けたい」という想いを受けて、メーカーとしてもその活動を支えていきたいと考え、e-Motorsports Studioの開設に至りました。開設に向けてはレーシングドライバーの皆さんや、ポリフォニーデジタル様をはじめとする関係者の皆様から多大なるご協力を頂き、皆で意見を出し合いながら進めてきました。短期間での立上げは大変でしたが、関係者の皆様の前向きな思いが結集したことで、なんとか良いものが作れたと思っています。今回携わっていただいた皆様に、改めて感謝を申し上げたいと思います。

――e-Motorsports Studioオープン後の手ごたえを教えてください。

佐藤 4月29日に、開所後初のイベントとなる「第1回 TGR e-Motorsports Fes」を配信しました。これは、TGRのドライバー総勢14名が参加してトークやレースを繰り広げる、というものでした。白熱したレース内容はさることながら、SUPER GTのオフィシャルアカウントやモリゾウ(豊田章男社長)からのサプライズでのコメント投稿もあり、多くのファンの方々にお楽しみいただけたのではないかと思っております。その他にも、各方面から多くのお問合せをいただいております。内容はまだお話できませんが、お話させていただく中では、たくさんの新しい、面白いアイデアが出てきています。できるだけ早くファンの皆様へお届けできるよう頑張りますので、楽しみにしていてください。

オンラインイベント開催中の様子

――今後、eスポーツへの取り組みはどのように考えているのでしょうか?

佐藤 まずは、現在の状況下において、業界やファンの皆様に少しでも元気になってもらうことができるよう、さまざまなコンテンツを発信していきたいと思っています。TGRとしても、従来のモータースポーツでは見ることのできない、メーカーやレースカテゴリー、更にはリアルとバーチャルの枠を超えたeモータースポーツならではのコンテンツを発信してまいります。モータースポーツに触れたことのない方にとっても、新たなエンターテインメントの一つとして楽しんでいただければと思います。このような活動を通じて、モータースポーツやスポーツカーをより身近に感じ、楽しんでもらい、この世界のことをより多くの方に知ってもらえればと思っています。

 一般的にモータースポーツは敷居の高い世界だと言われていますが、eモータースポーツはその解決策のひとつになりうる存在だと考えています。現実の世界ではなかなか体験することのできない限界領域での走行や、プロのレーシングドライバーとのレースなどが、いつでも、だれでも、気軽に楽しめます。この様な体験を通じて、より広く、深くモータースポーツを楽しんでいただくきっかけになれば良いと思います。さらには、eモータースポーツ出身のトップレーシングドライバーが誕生! なんていうことも実現するかも知れませんね。

――モータースポーツに興味を持っている読者にメッセージを!

佐藤 まず医療従事者の皆様、輸送関係など我々の生活のために働き続けてくださっている皆様、それを支えるご家族の皆様に心より感謝を申し上げます。さまざまな活動を自粛し、新型コロナウィルスの終息に向けて皆で協力している中ではありますが、我々はeモータースポーツを通じて、皆さんに少しでも元気になっていただけるように頑張ります。レース活動が再開された際には、思い切りモータースポーツを楽しめるようにさまざまな企画を準備し、サーキットでお待ちしております。また、皆さんとサーキットでお会いできる日を楽しみにしております。

一番のメリットは通信環境さえ整えば、どこにいてもできること

 続いて、イベントに参加した小林可夢偉選手へ話を聞いた。

――ご自身の、これまでのeスポーツへのかかわり方を教えてください。

小林可夢偉選手(以下敬称略) これまではイベントで走ったり、ゲームに収録される車のセッティング出しをさせていただいたりしていましたが、家でレースのゲームをすることはなかったです。ただレースができない状況になって、大嶋選手とファンの皆様に向けてなにかできることはないか相談していたなかで、オンラインでレースをする話になり、この4月からやり始めました。

小林可夢偉選手

――eスポーツの魅力・メリットは、どんなところだと考えていますか?

小林 一番のメリットは通信環境さえ整えば、どこにいてもできることかなと思います。コース上で戦っているドライバーとコミュニケーションをとりながらレースできるのも新鮮でした。

――29日に参加したイベントの結果は、どのようなものになりましたか? 

小林 イベントは1レース目が9位、2レース目が2位でした。2レース目のSF19のレースはガチで走っていたのでめちゃめちゃ悔しいですし、とても疲れました。身体も熱くなってかなり汗をかきました。

――読者にメッセージがあればよろしくお願いします。

小林 いま我慢の日々が続いていると思いますが、一緒に頑張りましょう。そしてレースができるようになった時には、最高のレースをお見せします。楽しみにしていてください。

僕と可夢偉の個人的なYouTube配信を
トヨタが見て、協力してくれました

 最後に、29日のイベントに参加した大嶋和也選手に話を聞いた。

――ご自身の、これまでのeスポーツへのかかわり方を教えてください。

大嶋和也選手(以下敬称略) 昨年末に、僕のスポンサーが運営するeスポーツチームに加入した事もあり関心は持っていて、準備を進めていたところでこのような状況になってしまったので、急いで自宅に機材を揃えてグランツーリスモの配信を始めました。

大嶋和也選手

――今回、e-Motorsports Studioを利用することになった経緯を教えてください。

大嶋 僕と可夢偉選手で個人的にYouTube配信をしていたのをトヨタが見てくれて、協力してやっていきたいと言ってくれました。そこから短期間でスタジオを準備していただきありがたいです。

――イベントの結果は、いかがでしたか?

大嶋 すごく面白い企画だったと思います。ただ今回は準備期間が少なかったのと、外出自粛もあり人が集まることができなかったため、苦労した部分がたくさんありました。次回に向けて改善していきたいです。

――e-Motorsports Studioの感想を教えてください。

大嶋 今は外出自粛で、スタジオを拠点にドライバーはそれぞれの自宅からの参加になってしまっていますが、今後落ち着いたらスタジオに手ぶらで行けばドライバーが自由に配信をできるようになるといいなと思います。

――最後に読者にメッセージをお願いします。

大嶋 なかなかレースができず、僕たちもそうですが、ファンの方々も寂しい思いをしていると思います。eスポーツを活用して少しでも楽しんでもらえるような企画を考えていきますので楽しみにしててください!

緊急事態宣言が後押ししたが
コロナ収束後も長期的に続く取り組み

 なんと、トヨタのeスポーツ用スタジオは、小林可夢偉選手と大嶋和也選手のアイデアがきっかけだったとは驚くばかりだ。今回は、政府による緊急事態宣言が誕生を後押しした形だが、eスポーツ自体はこれからさらに盛り上がること違いなしのムーブメントである。緊急事態が解除された後に消えてなくなるのではなく、トヨタによる取り組みが今後も続くことを期待したい。

筆者紹介:鈴木ケンイチ

 

 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。

 最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。


 

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