このページの本文へ

百麺人・山本剛志の「語りたいラーメン店」 第11回

豚⾻⿂介で⼀本勝負の潔さ らーめん はやし(東京・渋⾕)

2020年04月30日 12時00分更新

文● 山本剛志 編集●ラーメンWalker

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 ラーメン店に⽋かせない「メニュー」は、その店のスタイルを明確にする。「醤油」「塩」「味噌」「豚⾻」といった味の種類に加え、最近は「つけ麺」「まぜそば」も定番にしている店も多い。トッピング・ご飯物などのサイドメニューも組み合わせ、「限定ラーメン」を加えることも。現在のラーメン界は、バラエティに富んだメニューを展開して、幅広い⼈の好みに合わせようとする店が主流である。

井の頭線「渋谷駅西口」から坂を登り徒歩2分

 渋⾕駅から坂を登った⼀⾓に、2003年11⽉に開店した「らーめん はやし」。多くの⼈がやってきて⾏列もできる⼈気店だが、メニューは「らーめん」「味⽟らーめん」「焼き豚らーめん」の3種類のみ。スープの味が⼀種類で、具を増やしたメニューに絞っている。「つけ麺」も「まぜそば」もなければ、夏に「冷やし」を出す事もしない。「ライス」も「大盛り」もないというストイックなメニュー構成は、開店以来⼀貫している。店主が味に自信を持っていなければ、できることではない。

味玉らーめん(950円)

 「はやし」の味は豚骨魚介と呼ばれるが、単なる「豚骨+魚介」ではない。スープには豚骨と煮⼲し・サバ節の他、国産鶏もたっぷり使って長時間煮込み、鶏油をかけて仕上げている。まろやかな動物系のとろみに魚介系のシャープさもプラスされて、しなやかに茹でられた中太ストレート麺と調和している。

 営業時間は昼だけ。繁華街で駅にも近いのだから、営業時間を伸ばせば売上アップが見込める。しかしそれをしないのは、店を閉めてからスープの仕込みに取り掛かっているから。「支那そばや」創業者である佐野実氏は「数を売るな、味を売れ」という⾔葉を残したが、この店は短い営業時間の中で、⼀種類のラーメンに絞り、確かに味を売っている。

 ……と書いておいて矛盾するかもしれないが、実は「はやし」には裏メニューが存在する。食券を出す時に「塩で」と伝えると、醤油ダレを塩ダレに変えた「塩らーめん」が味わえる。醤油味と同じスープを使いつつ塩味ではまた違った印象を残すもの。ただし、これはあくまで「裏メニュー」なので、今回は敢えて写真は掲載しません。まずは通常メニューを食べた後、気になったら食べてみてください。

山本剛志 Takeshi Yamamoto (ラーメン評論家)

2000年放送の「TVチャンピオンラーメン王選手権(テレビ東京系列)」で優勝したラーメン王。全国47都道府県の10000軒、15000杯を食破した経験に基づく的確な評論は唯一無二。ラーメン評論家として確固たる地位を確立した現在も年に600杯前後のラーメンを食べ続けている。

百麺人(https://ramen.walkerplus.com/hyakumenjin/

本人Twitter @rawota

カテゴリートップへ

この連載の記事
もぐもぐ動画配信中!
アスキーグルメ 最新連載・特集一覧