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バルミューダがスピーカー発表「クレイジーと言われる自信がある」

2020年04月22日 11時30分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita) 編集● ASCII

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●「こいつらバカか」と言われる音作り

 オーディオとして肝心の音作りについては当初「これだけきれいに光るならまあまあ鳴ればいいんじゃないのと思っていた」(寺尾社長)ものの、作るうちにこだわりが出てきたそうです。当初めざしたものは意外なことにヤマハのスタジオモニターでした。

 「私が好きな音は、プレーヤーあがりなのでヤマハのスタジオモニター『YAMAHA NS-10M』だったんです。世界中のスタジオで使われたぱりっぱりの音。スタジオモニターはいかに解像度高く、どういうミックスになっているかわからせるためのものなので、リスニング用には疲れちゃう音。なんだけど、その音質がとても好きで。NS-10Mは20年前くらいに製造中止になったんだけど、そのあとにヤマハがHSシリーズというのを出して、かなりNS-10Mに近い音を作っている。それを普段は使ってるんです。その音が好きなので、まずは家から『YAMAHA HS5』というモデルを持ってきて『この音にしよう』ということにしたんです」(同)

試作で使ったドライバーユニットの数々

 ドライバーユニットを選んで音を調整し、音質はかなりHS5に近づきました。しかし試作機で音楽を聴いていると、ある違和感があったそうです。

 「『あれ、俺音楽聴いてるとき何してんだっけ』と。光もあって、ボーカルが近くにいるように感じるのがこのスピーカーの特長だった。そのとき俺が聴きたいのはいい音じゃない、聞きたいのは歌なんだと気づいた。それで途中で浦くんと結託して、ボーカルだけ聴かせようと。とにかくシンガーの声が世界一通るスピーカーを作ろうというふうにコンセプトが変わっていったんですよ。目指したのは録音されたステレオ音源をいかに忠実に鳴らすかではなく、その前の演奏したときの音。歌でいえば、マイクで録った空気の振動を、信号に変えてデータにする。そうじゃなくて口元で鳴った音。ミュージシャンは本当はそれを聴かせたいと思っているはず。自分がそうだったので」(同)

 そのとき音作りの参考にしたのがU2の「One」でした。

 「5本の指に入る好きな曲なんですが、楽器の倍音がすごく入ってる録音なので、普通のステレオで聴くのと実際に演奏したのはちょっと違うだろうなと。恐らくギブソン系のハムバッカーとVOXのアンプを使って甘ひずみさせてるんだろうなと思うんですが、それならもうちょっと暖かい音がしてただろうなと。HS5はかなりその音がするんですが、普通のリスニングステレオで聴くと倍音が多いから全部向こうにいっちゃうんです。ボノの声も遠くに行きがちなミックスだから、ちゃんと声が前に来るというのをやりたかったんです」(同)

 開発担当の浦純也さんは、「いろんなメーカーが最高の音をめざしてやっている中、うちの音はそれらには負けてないと思っています」と胸を張ります。「すべてがいいとは言えないですが、あるところではよくできている。社長の言葉で言うと、ボーカルがよく聞こえる、声がよく聴こえるようにできているというところでは、世界最高峰の音が作れているという自信はあります」

 世界最高峰とはいえ、一般的なスピーカーとはまったくアプローチが違う音作り。常識的とはまったく言えない味つけの音に、社長はむしろ自信を持っているようです。

 「本来は録音した音を忠実にというのがリスニングスピーカーの定石であり、常識。常識を破るのがバルミューダの仕事だと。バランスとれてる、周波数特性フラット、そんなの関係ねえ。ボーカル至上主義だと。音作りのプロがこれに入ってるDSPの設定見たら『バカかこいつら』と思うはず。何やってんだお前らと。音を聞いたときそう思うかわからないけど、設定見たらあきらかにこの人たちクレイジーと言われると思うんですよね。その自信がある」(寺尾社長)

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