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トップダウンとボトムアップで進めたDXはそのままアフターコロナ対応へ

社員にDXを体感させるべくTeamsを活用する東洋エンジニアリング

2020年04月17日 09時00分更新

文● 大河原克行 編集●大谷イビサ

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Teamsを使って感謝や称賛を送りあう文化を醸成

 まず同社が開始したのが、IT部門を通じて、週に何度も開催する丁寧なTeamsセミナーの実施や、Tipsの発信だった。

 「最初の一歩が肝心であり、すべて社員が必ず最初のサミナーを受けられる環境を作り、数多くのセミナーを用意した」(飯田氏)。だが、この取り組みは、多くの企業に共通したものだろう。

 そうした意味で、同社独自の浸透策として取り入れたのが、Teamsを使って、感謝や称賛を送りあう仕組みだった。

 TOYO未来推進部のなかには、「ありがとう」が増える企業になることを目指した「ありがTOYOワーキンググループ(WG)」があり、このWGが、サンクスカードの採用によって、Teamsの利用を促進することを提案した。

ありがとうを増やすサンクスカード

 サンクスカードでは、業務だけに留まらず、業務以外のことを含めたコミュニケーションのなかで、いいことがあったり、励ましたり、称賛したりといった場合に、感嘆、感謝、称賛のメッセージを送りあうことができ、これを全社員がタイムライン上で閲覧することができる。そして、サンクスカードを送る件数には上限がないという。

 さらに、送りあった感謝や称賛は、Smileポイントとして貯めることができ、それを使って、社内の自動販売機で飲み物を入手することも可能な仕組みとした。Smileポイントに対応した自動販売機は、コカ・コーラの協力によって設置。スマホのQRコードを使って利用できるという。

「前向きなコミュニケーションが社内にあふれることで、ポジティブな効果を生み出すことができた」(飯田氏)。

 ここで活用しているのが、Microsoft Teamsと連携するコミュニティオの「TeamSuite」である。

 コミュニティオ 代表取締役の嶋田健作氏は、「TeamSuiteは、Teams上で動くソフトウェアであり、一緒に働いていても、なかなわからないメンバーのことを知ったり、組織のなかにあるさまざまな障壁をなくすことで、より強い組織を作ることができるツールを目指したものである。メンバーの感謝や称賛などを見える化し、積極的な行動を促すことになる」と語る。

コミュニティオ 代表取締役の嶋田健作氏

 TeamSuiteは、感謝や称賛の気持ちを表すステッカーをつけたサンクスカードを送りあうことができる「TeamSticker」のほか、チームのタスクをみんなで実行するための「クエスト機能」、ポイントをQRコードで決済する「社内通貨・ポイント機能」で構成している。

「もともとスマホゲームの開発、運営を行なうオルトプラスで、ブロックチェーンなどの研究開発を行なっていたチームがスピンアウトしたスタートアップがコミュニティオ。ブロッチェーンとゲーミフィケーションに由来する技術で、コミュニケーションや行動、価値を可視化するプラットフォームを目指している。経営層と従業員、拠点間や部門間、世代間、上司と部下といった距離を、『ありがとう』、『いいね』といった言葉を通じて縮めることができる。従業員エンゲージメントを高めることで、売上げ向上、顧客満足度向上につなげることができる」(嶋田氏)。

 そして、「在宅勤務で、一人の環境で働くことが増えたいまだからこそ、チームのメンバーのことをよく知り、貢献の見える化によって、組織のアウトプットを高めることを、TeamSuiteで目指したい」と述べた。

 東洋エンジニアリングでは、2019年11月にTeamsを社内公式ツールとし、同時にTeamSuiteの運用を開始。その後、Teamsの利用は順調に増加しているという。Smileポイントに連動した自動販売機の設置は2020年2月28日であり、その翌週である3月4日からは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって、原則在宅勤務となったサンクスカードの効果やSmileポイントの成果を推しはかるのは時期尚早とのこと。とはいえ、緊急事態宣言が発令される前の3月30日の週でも、在宅勤務率は85%を超えており、それをTeamsが下支えしているのは明らかだ。

Teamsのユーザーアクティビティ推移

 「役員会議での利用のほか、海外6拠点を結び、約100人の社員が出席した会議もTeamsで行った。在宅勤務が本格化する前に、幹部や社員が基本的な操作をマスターしていたことが大きい。いまは、次なるステージに向けた挑戦と、日々発見される課題の解決に取り組んでいる」とした。

 そして、「新型コロナ禍が過ぎ去ったあとには、東洋エンジニアリングのワークスタイルはすっかりと変化しているだろう。進化した働き方により、劇的な生産性向上の実現につなげ、DXoTの取り組みを成功させたい」と今後の抱負を述べて講演を締めくくった。

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