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百麺人・山本剛志の「語りたいラーメン店」 第9回

「濃厚豚骨魚介」を一大ブームへ押し上げた名店 渡なべ(東京・高田馬場)

2020年04月16日 12時00分更新

文● 山本剛志 編集●ラーメンWalker

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 東京には「ラーメン激戦区」と呼ばれるエリアがいくつかあるが、その筆頭に挙げられるのが「高田馬場」。

 その激戦区「高田馬場」で、大学生が行き交う早稲田通りから一本入った路地で2002年に開店した「渡なべ」は、創業から20年近く経つ今でも人気を集めている。

ラーメン店としては異色の落ち着いた店構え

 店主の渡辺樹庵(じゅあん)氏は高校生の頃からラーメンを食べ歩いていた。私がラーメンに興味を持ち始めた2000年頃には、ラーメンサイトの掲示板で情報発信をしていた「先輩」にあたる人物。この時期からすでにラーメン店のコンサルティングを行っていた。

 「濃厚豚骨魚介」を一大ブームにした「渡なべ」の味は、この時期(渡なべ開店前)から考えていたものだという。

「らーめん」880円

 「渡なべ」の濃厚豚骨魚介には、ルーツと言える味が3軒あったという。西新宿の「晴れる屋(閉店)」のとろみ、白楽の「すっごいよ(閉店)」の濃厚さ、駒沢大学の「せたが屋」の魚介のインパクト。それらを足して一杯にまとめたという。そこに低加水の細ストレート麺を合わせることで、スープと共にするすると啜りやすい。大きく切ったメンマや厚切りチャーシューの存在感、女性でも入りやすい店づくりも功を奏して、一気に行列ができる人気店になった。

 自身の店の成功は、コンサルタントとしての説得力も高める事になった。池袋の「瞠」、横浜の「るい斗」、富山の「えびすこ」など、多くの店のコンサルティングに関わる事になった。一方で、「渡なべ」で修業して独立した人も多い。仙台の「くろく」、青梅の「いつ樹」、練馬の「GOTTSU」、そして町田の「パパパパパイン」。店名を並べただけでも、個性溢れる店を輩出している事が分かると思う。

 現在の「渡なべ」は、「らーめん」と「つけめん」の他、不定期で提供される様々な「限定らーめん」がある。渡辺樹庵氏が食べ歩いた全国のラーメンから、印象に残った店やご当地の味を再現して提供している。

過去の限定「岡山笠岡ラーメン」

 また、同じ店に何度も足を運んでその特徴を掴み、再現した味をラーメンイベントで提供する事もある。2015年から2020年にかけては、池袋でご当地ラーメンを入れ替わりで提供する期間限定店舗も営業していた。

過去の限定「旭川ラーメン~焦がしラード~」

 様々な味を作る事が、「他にない味」を見つける事に繋がっている。今では全国的に人気を集めている「濃厚豚骨魚介」だが、「渡なべ」の味は今でもオンリーワンの個性を保っている。

 人気の秘訣を伺った時、店主の答えは「味づくりで手を抜かない」だった。

 ※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策により、営業日・営業時間・営業形態などが変更になる場合があります。

山本剛志 Takeshi Yamamoto (ラーメン評論家)

2000年放送の「TVチャンピオンラーメン王選手権(テレビ東京系列)」で優勝したラーメン王。全国47都道府県の10000軒、15000杯を食破した経験に基づく的確な評論は唯一無二。ラーメン評論家として確固たる地位を確立した現在も年に600杯前後のラーメンを食べ続けている。

百麺人(https://ramen.walkerplus.com/hyakumenjin/

本人Twitter @rawota

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