東京には「ラーメン激戦区」と呼ばれるエリアがいくつかあるが、その筆頭に挙げられるのが「高田馬場」。
その激戦区「高田馬場」で、大学生が行き交う早稲田通りから一本入った路地で2002年に開店した「渡なべ」は、創業から20年近く経つ今でも人気を集めている。
店主の渡辺樹庵(じゅあん)氏は高校生の頃からラーメンを食べ歩いていた。私がラーメンに興味を持ち始めた2000年頃には、ラーメンサイトの掲示板で情報発信をしていた「先輩」にあたる人物。この時期からすでにラーメン店のコンサルティングを行っていた。
「濃厚豚骨魚介」を一大ブームにした「渡なべ」の味は、この時期(渡なべ開店前)から考えていたものだという。
「渡なべ」の濃厚豚骨魚介には、ルーツと言える味が3軒あったという。西新宿の「晴れる屋(閉店)」のとろみ、白楽の「すっごいよ(閉店)」の濃厚さ、駒沢大学の「せたが屋」の魚介のインパクト。それらを足して一杯にまとめたという。そこに低加水の細ストレート麺を合わせることで、スープと共にするすると啜りやすい。大きく切ったメンマや厚切りチャーシューの存在感、女性でも入りやすい店づくりも功を奏して、一気に行列ができる人気店になった。
自身の店の成功は、コンサルタントとしての説得力も高める事になった。池袋の「瞠」、横浜の「るい斗」、富山の「えびすこ」など、多くの店のコンサルティングに関わる事になった。一方で、「渡なべ」で修業して独立した人も多い。仙台の「くろく」、青梅の「いつ樹」、練馬の「GOTTSU」、そして町田の「パパパパパイン」。店名を並べただけでも、個性溢れる店を輩出している事が分かると思う。
現在の「渡なべ」は、「らーめん」と「つけめん」の他、不定期で提供される様々な「限定らーめん」がある。渡辺樹庵氏が食べ歩いた全国のラーメンから、印象に残った店やご当地の味を再現して提供している。
また、同じ店に何度も足を運んでその特徴を掴み、再現した味をラーメンイベントで提供する事もある。2015年から2020年にかけては、池袋でご当地ラーメンを入れ替わりで提供する期間限定店舗も営業していた。
様々な味を作る事が、「他にない味」を見つける事に繋がっている。今では全国的に人気を集めている「濃厚豚骨魚介」だが、「渡なべ」の味は今でもオンリーワンの個性を保っている。
人気の秘訣を伺った時、店主の答えは「味づくりで手を抜かない」だった。
※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策により、営業日・営業時間・営業形態などが変更になる場合があります。
山本剛志 Takeshi Yamamoto (ラーメン評論家)
2000年放送の「TVチャンピオンラーメン王選手権(テレビ東京系列)」で優勝したラーメン王。全国47都道府県の10000軒、15000杯を食破した経験に基づく的確な評論は唯一無二。ラーメン評論家として確固たる地位を確立した現在も年に600杯前後のラーメンを食べ続けている。
百麺人(https://ramen.walkerplus.com/hyakumenjin/)
本人Twitter @rawota
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