ミドルクラスのCPUやビデオカードがオススメ
H1が搭載するCPUクーラーは、簡易水冷型の高性能なタイプだ。8コア8スレッド実行に対応し、発熱の大きい「Core i7-9700K」をしっかりと冷やせるかどうかに注目したい。ビデオカードは内蔵する電源ユニットの出力が650Wであることを踏まえ、ミドルレンジの「GeForce RTX 2060 SUPER」を搭載するモデルを選んだ。
CPUクーラーのファンはマザーボードのCPUファンコネクターに、ポンプのコネクターはケースファンのコネクターに接続し、ファンの制御はGIGABYTEの独自ユーティリティー「System Information Viewer」(SIV)から行なっている。SIVではCPUファンをStandardモード、水冷ポンプは最大回転数に設定している。
CPU温度については高負荷時で96度と、やや不安の残る状況である。高負荷時は全コア4.6GHzで動作しており、冷却が足りずにクロックが下がる様子はなかったものの、夏など気温が高い状況でCPUに高い負荷をかけ続けて使うのは厳しい。安全性を優先するなら「Core i5-9600K」など、グレードが1つ下のCPUにしたほうがいいかもしれない。
安全にCore i7-9700Kを使いたいなら、UEFIからTDPを95Wに設定するのもいいだろう。UEFIの[Tweaker]の[Advanced CPU Setting]を選択し、そこにある[Turbo Power Limits]を[Enable]にする。さらに[Package Power Limit1-TDP]を[95W]に設定しよう。
これは、Core i7-9700Kを定格のTDPである95Wの範囲内で動作させるための設定である。こうすると、8コアがすべて100%で動作する高負荷時でも動作クロックが4GHz前後に抑えられ、CPU温度も63度前後まで下がる。これなら夏場でも安全に利用できるはずだ。
GPU温度は3DMark時や高負荷時で83度と、一般的なATX対応PCケースに組み込んだときと比べるとやや高めに感じた。ビデオカードのすぐ近くにメッシュ構造の側板があり、外気を取り込みやすい構造ではあるが、実際の温度の状況を考えると、これ以上のグレードのビデオカードを組み込むのは難しそうだ。
動作音に関しては、アイドル時はほぼ無音と言っていい状態だ。ポンプユニットはフル回転にしてもほとんど動作音はなく、CPUファンの回転数は500rpm前後と、耳を近付けなければ音はほとんど聞こえないレベルだ。書類作成やウェブブラウズ、動画再生程度の負荷なら、おおむねこの状態を保つ。
各部にメッシュ構造を採用している関係上、負荷が高くなる3DMark時や高負荷時の音漏れはほぼ防げない。とはいえゲームプレイ中はサウンドの音量も大きくしているはずなので、とくに問題はないだろう。
Mini-ITX対応PCケースの頂点に迫る
検証前は「このサイズで簡易水冷型CPUクーラー!?」と聞いて身構えてしまったのも事実ではある。しかし内部を見て実際に組み込んでみると、そうした不安や懸念は一切感じる必要がないことがわかった。考えつくされた構造とケーブル整理のおかげで、初心者でも簡単に組み込みができる。
実売価格はやや高めだが、比較的高価な80PLUS Gold認証取得で650WのSFX電源ユニットを装備、そして14cmクラスのラジエーターを組み合わせた簡易水冷型CPUクーラーがセットになっていることを考えると、許容範囲内ではある。
小型で設置に必要なスペースも狭く、デザイン性にも優れており、リビングのような場所にも違和感なく設置できる。最近のMini-ITX対応PCケースに求められる要件を過不足なく押さえた上で、さらに一歩先をいく優れたPCケースと言っていい。