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松村太郎の「アップル時評」ニュース解説・戦略分析 第89回

LiDARスキャナ時代にあらためて考える:

なぜアップルはiPhoneに「ノッチ」をつけたのか

2020年04月09日 09時00分更新

文● 松村太郎 @taromatsumura 編集● ASCII

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●内側の顔認証、外側の距離計測

 さて、TrueDepthカメラは、通常のFaceTime HDカメラに赤外線ドットプロジェクターとフロードイルミネータ、赤外線カメラの組み合わせから構成されます。3万ものドットを人の顔に照射して顔の深度マップと2D赤外画像を作成、これを数学的なモデル化し、登録しておいた顔と照合することで、ロックを解除する仕組みです。

 TrueDepthカメラはiPhone X、その後継モデルのiPhone XSシリーズ、廉価版のiPhone XR、そして2019年モデルのiPhone 11とiPhone 11 Proに採用され、さらにiPad Proに搭載されました。

 iPhone XRやiPhone 11に搭載されたことを考えると、iPad AirやiPad miniといったミドルクラスのiPad製品への採用や、現在Touch IDを搭載しているMacへも順次搭載されていくのではないでしょうか。

 たとえばキーボードが分離しているiMacであっても、TrueDepthカメラをディスプレー上部に配置することで、本体側で顔認証のデータを保存することができます。もっともMacの場合、搭載しているTシリーズチップがニューラルエンジンに対応するA11 Bionic相当以上の性能にアップグレードされる必要がありますが。

 2020年登場のiPad Proには、今度は背面にも測距可能なLiDARスキャナが搭載されました。こちらはiPad Proの背面から向こうへ5mまでの範囲で光を飛ばして帰ってくるまでの時間の測定により、正確な距離を測定することができます。

 こうしてiPad Proから、内側の人の顔、外側5mまでの環境ともに、正確な距離を計測、モデル化できるハードウェアへ進化したことになります。もちろんこれは拡張現実アプリのため、特にiPad Proの場合はARコンテンツ制作のための布石です。

 対象が異なるため違う技術を使いましたが、ARはまず対象となるオブジェクトや空間を正確に把握することから出発するということを、アップルは着々と準備している様子がうかがえます。

 

筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura

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