松村太郎の「アップル時評」ニュース解説・戦略分析 第89回

LiDARスキャナ時代にあらためて考える：

なぜアップルはiPhoneに「ノッチ」をつけたのか

●多分ノッチは小さくなる、なくなる方向

　ノッチによって、ディスプレーの画面上部は左右に分離され、ロック画面では、左にキャリア表示、右に電波強度とデータ通信の種類もしくはWi-Fi電波強度、そして電池アイコンが表示されます。ホーム画面やアプリ画面では、左側が時計に変わります。

　また、AirPodsなどBluetoothヘッドフォンを接続したとき、充電を開始したとき、ノッチの右側の領域に、ヘッドフォンや充電などのアイコンが大きく表示されるアニメーション要素も用意されています。

　ハードウェア的な面で見ると、ノッチはディスプレイとして日表示領域となっています。しかしソフトウェア的には、そこにピクセルが存在しています。

　iPhone X移行の全画面モデルは角も丸められていますが、スクリーンキャプチャを撮ると、切り落とされた角やノッチ部分も含めて画像が生成されます。つまりソフトウェア的にはそこにピクセルが存在しているのです。

　つまり、ノッチについては、ハードウェアがソフトウェアに近づいていく可能性はあるのではないか、と考えています。ノッチが小さくなったりしまいにはなくなったりする可能性があるのではないかという意味です。

　おそらくノッチが小さくなったり、なくなったとき、アップルは新製品発表会で誇らしげにアピールするかもしれません。確かに表示領域が増えることは大きなハードウェア実装の上での改善だと評価できます。多分盛り上がること間違いなし。

　でもそもそも、ノッチを作ったのはアップルだし、それを小さくするという課題を設定したのもアップルのはずです。ときには問題を内部化して、あるいは自ら問題を設定して、その解決に向けて技術やアイデアを絞り出すことも、その問題の認知が深くなるほど「イノベーション」と呼ばれる可能性が高くなるのかもしれませんね。