ワコムは4月7日、自治体向けの導入事例として、渋谷区役所の窓口業務において同社の液晶ペンタブレット「DTH-1320」が導入された事例を紹介した。
2019年1月15日に新庁舎へ移転した渋谷区役所は、これを機にICTを活用した区民サービスの向上と職員の働き方改革を実現すべく、新庁舎プロジェクトを進めてきた。その一環として取り組んだのが住民戸籍課における窓口業務の改善だった。
これまで住民は転入・転出・出生などの届出をする際に、関連する複数の書類に同じような項目を何度も記入する必要があった。また、手続きの窓口が分散しており移動に手間がかかるほか、 窓口での手続きも長時間化していたという。こうした住民の負担を軽減するため、「書かせない」「移動させない」「待たせない」という目標を掲げ、申請書の電子化(ペーパーレス化)によるワンストップ窓口を目指した取り組みが始まった。
渋谷区役所は、ワコムのパートナー会社と一緒に構築した住民異動受付支援システムを導入。 住民が持参した転出証明書をOCRで読み込みテキストデータ化することで、書かせることなくシステム上で住民異動届を作成する。住民は、ワコムの液晶ペンタブレットDTH-1320でその届出内容を確認し、電子的にサインするだけで手続きが完了する。
また、住民異動届と同時に住民票の写しの申請などがあった際、基本項目である氏名・住所などは自動で印字できるようになったため、同じことを何度も書かせることが解消した。
合計33台導入された液晶ペンタブレットは、本庁舎や渋谷ヒカリエの区民サービスセンターをはじめ、区内各所の出張所にも分散配備され、2019年(1月15日~12月27日)の1年間で、転入5513件、転出3488件、転居1559件の住民異動届をペーパーレスで処理した。高齢の住民も違和感をもつことなく液晶ペンタブレットを利用しており、「とても便利になった」と好評だという。
DTH-1320の導入により、これまで職員が手書きされた各届出書類の確認や修正、仕分け、保管など時間を要した煩雑な手間を解消し、現時点での届出件数などの統計情報も簡単かつ即時に出力することが可能になった。 こうした業務効率化の効果をコスト換算すれば、今回のシステム投資は十分に回収できているという。また、DTH-1320を使い窓口で記入することにより、住民と様々な会話をする機会が増えたという。
今後は、新住所をタブレット上でタッチペンにより選択しながら届出書を作成するなど、手間をさらになくしていくという。また、将来的には住民異動受付支援システムと住民情報システムとのデータ連携を実現し、住民票の作成入力業務を軽減していく予定。さらに、住所の異動のタイミングによらずいつでも住民票や印鑑証明の申請書に対応できるようにするという計画もあり、住民サービスのより一層の向上を目指す。