リコー 飛躍を目指す、3ヵ年計画
こうした成果をもとに、新たにスタートする第20次中期経営計画は、「リコー飛躍」を目指す3年間になる。
具体的な目標については、「新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、その影響が、十分に織り込めない状況で発表することは失礼である。新型コロナウイルスの影響がもう少し見通せた段階で報告したい。できれば、2020年5月8日に予定している2019年度決算発表時に公表したい」と述べたが、それでも、2022年度にROE9%以上、ROIC7%以上という目標値は公表した。
「利益額が多少振れたとしても、ROE9%は、経営の意思として実現したい」と意欲をみせる。2018年度のROEは5.4%であり、2019年度はこれを上回る計画。だが、高い目標値になることは明らかだ。
純利益や調整後営業利益の目標についても公表する予定だが、このほかにも、ステークホルダー別目標やESG(環境、社会、ガバナンス)を経営指標に用い、顧客調査での評価スコア、サプライヤーをはじめとする各パートナーからの評価スコア、社員エンゲーシメントスコアなども盛り込む考えだ。
「ROEを重視し、経営環境や競争環境の変化にあわせて、成長性と効率性のバランスを取りながら企業価値向上を目指す。新たな中計では、絶対値ではなく、効率指標を目標値にする」と語る。
デジタルサービス会社への変貌を目標に
第20次中期経営計画の基本的な方針は、「事業競争力の強化と、資本収益性の向上の両輪で企業活動を推進し、持続的な企業価値向上に徹底的にこだわる」とする。
そして、「リコーの事業競争力の強化は、OAメーカーからのデジタルサービスの会社へと変貌することで達成できると考えている」と語る。
山下社長が語るように、リコーが、第20次中期経営計画で目指すのは、「デジタルサービス会社」への変貌だ。
山下社長は、「私が考えるデジタルサービス会社とは、働く人の創造力を支え、ワークプレイスを変えるサービスを提供する会社であり、オフィスと現場をつなぎ、デジタル技術で生産性向上を実現する会社である」とする。そして、「OAメーカーとしては重荷になっていたことが、デジタルサービス会社であれば、それを強みに変えていくことができる」とも語る。
その意味を、次のように説明する。
「リコーは、2016年度まではグローバルプロダクトの複合機を、アジアで集中生産して、全世界に届け、保守およびメンテナンスを行う事業モデルが成立していた。これに最適化してきた開発、生産、販売体制がリコーの競争力の源泉であった。だが、プリンティングの相対的な価値の低下とともに、この体制が重荷になってきた」とする一方、「リコーは、サービス事業に着手してから30年の歴史があるものの、かつては、サービスは無償という意識が強く、収益は、長らく低迷を続けてきた。だが、ここ数年で顧客の意識が変わり、サービスの有償化への納得感が広がってきた。また、対価をもらうことが難しく、人手がかかるサービスを長年続けてきたことも、信頼をえることにつながった。他社を圧倒する保守サービス網は、顧客密着型の人的インフラであり、適切なサービス対価を得られれば、固定費が回収され、収益性が健全化する。長い道のりであったが、他社が入り込むことが難しい領域で、競争力を確保できることができた」とする。
オフィスサービス事業は、2017年度後半に、オフィスサービス事業の黒字化を達成し、その後も増収増益を継続している。
山下 「第19次中期経営計画で、成長を遂げたオフィスサービス事業は、大手ITベンダーが手を差し伸べない中小企業に寄り添ってきたリコーの歴史がモノを言った。これがリコーグループの強みであり、他社に真似ができない部分である」
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