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セキュリティからパンケーキ教室、アナーキズムまで ―96時間ぶっ続け! のコミュニティイベント

“楽しいカオス”なイベント、ドイツ「36C3」に参加してきた

2020年01月08日 07時00分更新

文● 谷崎朋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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講演:セキュリティだけでなく倫理や社会、政治、アートや文化まで網羅

 36C3の催し物は、大きく「講演」と「ワークショップ」の2つに分けられる(そのほかに午後から明け方までDJ/ライブパーティも毎日開催されている)。

 講演は「セキュリティ」「科学」「アートと文化」「倫理や社会、政治」「ハードウェア」「回復力と継続性」「エンターテインメント」「CCC」と、多岐にわたるテーマで分類されている。オープニングとクロージングのセッションまで含めると、合計で162セッションに及んだ。

講演のタイムスケジュール。お昼前からスタートし深夜0時過ぎまで講演が続くのもユニーク

 いくつか講演内容をピックアップしてみると、たとえば「ニンテンドー3DS」のすれ違い通信機能に内在するリモートコード実行可能な脆弱性、PDFの仕様や暗号関連設計が甘くパスワードを回避して内容が読める脆弱性、LHC(大型ハドロン衝突型加速器)から学ぶ技術とエンジニアリングの課題、配達ロボットを作りまくったシリコンバレーのベンチャー企業の話、香港民主化デモの背景と現状、メンタルヘルスの新アプローチ、Cookieを音に変換するプラグインを作ったアーティストが考えるプライバシー問題、土に関する考察、などなど。自分の知らない領域の講演でも、タイトルを眺めているだけでちょっとワクワクしてしまう。

ニンテンドー3DSのすれ違い通信機能に潜在する脆弱性についての講演

 3日目夕方には、ロシアに亡命中のエドワード・スノーデン(Edward Snowden)氏が、Web経由のライブ中継で登場する講演もあった。

 講演会場ではスノーデン氏の亡命を支援した弁護士のロバート・ティッボ(Robert Tibbo)氏が登壇し、権威主義に傾きつつある国際情勢に警鐘を鳴らし、人権の大切さに言及。またスノーデン氏は、政府による行き過ぎた監視や一部の権力者による情報の搾取に触れ、「“ハッキング”された私たちのインターネットを、一歩ずつでいいから取り戻していこう」と訴えた。

ライブ中継のスノーデン氏。「ディープフェイクじゃないか確認しに来たよ!」と、筆者にいたずらっぽく話しかけてくる聴講者もいた

 ちなみに、講演は英語またはドイツ語で行われたが、ボランティア通訳グループのC3 Lingoがいずれかの言語に同時通訳していた。つまり、どちらかの言語を理解できれば実質すべて聴講できることになる。C3 Lingoでは会期中もボランティアを募集しており、講演によってはスペイン語やフランス語、ロシア語、ポーランド語などの通訳もあったようだ。

 一部の講演は、すでに公式サイトCCCのYouTubeチャンネルで公開されているので、気になる方はぜひチェックしてほしい。

ワークショップ:会期中も増え続ける? 参加するのがいちばんの醍醐味

 だが、同イベントの醍醐味は、座学ではなく「参加する」ワークショップだろうと筆者は考える。

 ほかのセキュリティイベントやコミュニティイベントでよく見かけるワークショップ、たとえばCTF(Capture the Flag)、電子工作、ロックピッキング(錠前開け)体験、キッズスペースなどはもちろんある。

はんだゴテなどの工具が用意された、電子工作ワークショップのコーナー。会期中は常に満員状態だった

 しかし36C3ではそのほかにも、ありとあらゆる変わり種のワークショップが開催されていた。

 たとえば「お酒のテイスティングワークショップ」では、持ち寄ったウイスキーやビールをみんなで試飲している。一方で「日本語講座」の参加者は、ひらがなやカタカナの書き方を練習中だ。「初めての緊縛ワークショップ」(縄で縛るSMのアレです)では、安全なプレイの基本や正しい素材(?)の選び方を紹介している。さらに「パンケーキ教室」が、会場中にパンケーキの甘くいい香りを振りまく。「Hackers Beauty Palace」ではマッサージとネイルの施術を行っており、ヨガ教室も定期的に開催される。「踊って身体をほぐす教室」では、参加者が照れ笑いしながら手をつないで回ったり、背中どうしをやんわりぶつけ合ったりしている。――もうわけがわからない。

 そして、熱かったのがアナーキズムのエリアだ。アナーキズム入門講座から、大規模デモを開催する際に政府などからの干渉を受けずに多数の参加者と連絡をとる手段について検討するワークショップ、香港民主化デモの支援方法を考える会、刑務所の囚人に励ましの手紙を書く会など、さまざまなワークショップが開催されていた。

アナーキストビレッジ。ここではさまざまなアナーキズム関連のワークショップを開催

 36C3開催都市であるライプチヒには、ベルリンの壁崩壊と東西ドイツ統一への道を作った民主化運動の拠点、聖ニコライ教会がある。そんな街でアナーキズムについて話し合う人たちを見るのは、なかなか考えさせるものがあった。

激動の時代を見守ってきた聖ニコライ教会

 会場スペースに余裕があるためか、ワークショップは毎日、それこそ雨後の竹の子のごとく、何らかの追加や変更がアナウンスされていた。たとえば、前述した日本語教室は当初1回のみ開催される予定だったが、立ち見が出るほど人気が高かったため、急遽、翌日も開催された。こうした変更があっても、すべて専用のモバイルアプリで追うことができる。参加して体験しながら、みんなでイベントを作り上げていく。そんなライブ感が楽しかった。

 年末の忙しい時期で参加を迷う人も多いと思うが、ここでしか得られない刺激や学びも多かった。気になる方は、ぜひ一度、ドイツまで出向いてみてはいかがだろうか。

 ――あともうひとつ。ドイツビールは最高に美味しかったです。

ビール飲めない私でも美味しく飲めました

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