セキュリティからパンケーキ教室、アナーキズムまで ―96時間ぶっ続け! のコミュニティイベント
“楽しいカオス”なイベント、ドイツ「36C3」に参加してきた
2020年01月08日 07時00分更新
いろんなことがあり過ぎてうまく説明できないけど、とにかく楽しかった――。2019年12月27日から30日の4日間、ドイツのライプチヒで開催された「36th Chaos Communication Congress(36C3)」は、そんなイベントだった。
単純に「○○がテーマのイベント」とは表現できない、その名のとおりカオスなコミュニティイベント。レポート記事も書きづらいことこのうえないのだが、とにかくこの“ごった煮感”をお楽しみください。
情報の自由とプライバシーを守るITコミュニティ
36C3を主催するのは、ドイツのITコミュニティ「Chaos Computer Club(CCC)」だ。
1981年に設立されたCCCは、ドイツ国内外に支部を置き、5500人近くの登録メンバー(CCC公式ページに記載)を抱えるヨーロッパ最大規模のコミュニティだ。インターネットが一般市民に普及し始めた際、情報統制を図ろうとした政府の動きに反発するかたちで始まったこのコミュニティは、新たなインターネット時代においても情報の自由、IT政策などの透明性、人権の尊重といったことが見失われないように、イベントやワークショップ、出版、議員に対するロビー活動などを展開している。
CCCの存在を一躍有名にしたのは、1984年に西ドイツ郵政省(当時)が運用するコンピューターネットワークをハッキングし、ハンブルク銀行から約13万ドイツマルクを引き出した事件だ。翌日、報道陣を前に全額を返金してみせたCCCメンバーは、脆弱性について以前から報告していたものの、「問題ない」として一向に対応しなかった運用側を批判。そうした行為は市民の資産や人権を侵害するものでであり、より良い社会を実現するためにもすぐに改善すべきだと訴えた。
それ以後も、ハッキングという手段で国内外のシステムにある脆弱性を指摘し続けた彼らだが、行動の過激さゆえに逮捕者も続出。「責任ある情報開示」や脆弱性の公表手法をめぐってCCC内では真剣な議論が繰り返され、最終的に「他人に損害を与えず、情報の自由と個人のプライバシーを守ること」を根幹とした活動を徹底することで一致した。現在ではドイツ政府からの信頼も厚く、政策に対する意見・提案を行うこともあるという。
すべてボランティアが運営する「Chaos Communication Congress」
さて、そんなCCCが毎年年末に開催し、今回で36回目を迎えたのが「Chaos Communication Congress」である。ケータリングや一部の清掃作業以外はすべて有志ボランティアが支えており、あらゆるテーマの講演やワークショップが4日間、24時間ぶっ続けで行われる。
――念のため繰り返すが、4日間、24時間ぶっ続けで、だ。
今回の36C3会場は、ライプチヒ郊外にあるCongress Center Leipzig。最大2万㎡強のホールが5棟あり、それぞれに会議室や展示会場などが配置されている。ホールどうしの連結点となる同規模のガラスホール1階にはケータリングが並び、また各ホールとは2階の回廊を使って行き来する仕組みだ。
36C3で使われたのは4棟だけだったが、それでもとにかく広い。移動用の電動スクーターを持ち込んでいる人も多く、ホール内の至る所に“駐車スペース”が設けられていた。
イベント用リストバンドは布製だ。最初の入場時に腕に巻き付け、手首から抜けないようにアルミの留め具で固定される。会期中の4日間、お風呂に入るときも寝るときも取り外せないくらい、それはもうしっかりと固定される。
このリストバンドは、会場の最寄り駅から一定区間内のトラム、電車、バスに無料で乗車できる乗車証にもなる。このシステムは今回の36C3で初めて導入したそうだが、イベント参加者にはとてもありがたいサービスだった。