このページの本文へ

ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第543回

スパイ事件で信用が失墜したHP 業界に多大な影響を与えた現存メーカー

2019年12月30日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

スパイ事件でHPの信用が失墜

 そして同年9月15日、NewsWeekが爆弾を投下した(オンライン版の日付は9月17日になっている)。この記事では、HPに雇われたリーク元調査チームが、当時は法的にグレーだった手法を思いっきり使ったことを明らかにした。

 具体的にはPretextingと呼ばれる、電話番号とSSN(社会保障番号:日本で言えばマイナンバー)を利用して通話記録を電話会社から取り寄せる手法を、自社の取締役に加えて少なくとも9人のジャーナリストに行なっていたことが後に明らかになる。

 また実行こそされなかったものの、SMSの傍受やウィルスメール(トラッキング機能を内蔵したウィルスを記者に送り付ける)、果てには清掃員や事務員に偽装した工作員をメディアに潜入させるアイディアもあったらしい。

 法的にグレーというのは、この頃はまだ解釈が曖昧だったという意味であって、やっても無条件に無罪という意味ではない。実際司法当局からすればこれは告発に十分値する行為である。

 まず米下院は11項目からなる情報リストを提示、9月18日までに開示することを要求し、後追いで9月25日までにもう1項目の要求も追加される。リストは以下のようになっている(項目12が後追いで追加されたもの)。

米下院が提出した情報リスト
項目 概要
1 SECに9月6日に提出された書類に引用された外部コンサルティング会社、及びリーク調査実施のためにHPと契約されたその他のコンサルタント会社の一覧
2 コンサルタント会社とのリーク調査契約にまつわる契約書やレターのすべてのコピー
3 HPないし外部のコンサルタント会社に雇用され、リーク調査に関わったすべての人物一覧
4 リーク調査の対象のリスト
5 HPの従業員を含む、リーク調査に関して知っていた人物の一覧
6 2005年1月1日から現在までの期間の通話記録あるいはその他の個人情報を取得した人物の一覧
7 2005年1月1日から現在までの間の、取得された通話記録あるいはその他の個人情報の一覧。更に取得した情報の説明
8 事前調査の妥当性、あるいは合法性に関するすべての分析/意見を含んだ、リーク調査の準備のためのレポートのコピー
9 リーク調査のために契約したWilson Sonsini Goodrich & Rosatiとの契約書のコピー
10 Wilson Sonsini Goodrich & Rosatiによって作成された、取締役会に対するすべてのレポートのコピー
11 リーク調査に関連する理事会の議事録のすべてのドラフト及び最終版議事録のコピー
12 外部のコンサルティング会社とのやり取り、HPの従業員または役員とのやり取り、および外部の弁護士とのやり取りを含む、リーク調査に関わるすべてのすべての記録。(ただし実際の電話番号や入手した記録そのものは含まないこと)

 これに続き、当時のカリフォルニア州司法長官のBill Lockyer氏は10月4日、Dunn氏と当時のHPのChief Ethics Officer(最高倫理責任者)のKevin Hunsaker氏、それと3人の外部調査員を、4つの項目に関するカリフォルニア州刑法違反として刑事告発するとともに逮捕令状を提出している。

 最終的にカルフォルニア州の訴訟はすべて原告敗訴となり、調査員の1人だけが連邦法違反(あるジャーナリストの社会保障番号を取得し、これを利用して個人情報を窃盗した)として有罪判決(禁固3ヵ月)を受けてこの一連のスパイ事件は幕を閉じた。

 結果から言えばHP自身は有罪になったわけではないのだが、この一連の騒動の中でHPのブランドイメージがさらに下落した(Fiorina氏の時代にだいぶ下落してはいたのだが、それが加速した)感は否めない。

 ちなみにHurd氏自身はこのリーク調査そのものには関わってこそいないものの、Dunn氏から説明を受けて知っていたことは明らかにされており、責任こそないものの、クリーンとも言い難い立場ではあった。もっともすぐにそんな話はどうでもいいくらいになっていくのだが。

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン