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遠藤諭のプログラミング+日記第70回

公道走行可能なZERO9で浅草橋->アキバ->本郷->浅草橋と走ってきた

電動キックボードはドローンと同じく精神開放マシーンだ!

2019年12月10日 09時00分更新

文● 遠藤諭(角川アスキー総合研究所)

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 「ZERO9」といういい感じの電動キックボードに試乗させてもらえるというので、浅草橋のコワーキングスペース「技研ベース」に運んでもらって走らせてきたのでレポートさせてもらう。電動キックボードというと、とかく米国のシェアリングエコノミーやそうしたサービスの日本での実証実験など、ビジネス視点で語られることが多い。しかし、本コラムの読者の方々ならお察しのとおり電動キックボードというモノ自体が楽しいし、気持ちいい物体なのだ。

 ZERO9は、本体サイズは全長が111センチメートル、車体重量が18キログラム、前後輪に9インチの空気タイヤを履く(前輪ディスク・後輪ドラムのブレーキ)。米国で電動スクーターの代名詞となっているLimeの第三世代が1165センチメートル・22キログラムなので公道を走るには妥当なサイズ感なのでしょう。

バンに3台積んで運んできてくれた。小さい奴は公道走行できないタイプ。なんとなく戦の前に重火器を運んでいるような気分になる。

 ちなみに、ZERO9は、シンガポールFalcon PEV社製で日本での発売元K-Mobilityのトップがさまざまなキックボードを吟味しまくった結果これにたどりついたとのこと。たしかに、Limeのキックボードがなんとなく「ママチャリくささ」があるのに比べてカッコいい。

 取り回しがラクなのはさすがにキックボード、一般的なエレベーターならラクラク持って入れそう。シェアリング用との違いとして、折り畳み可能(ミニベロ系の自転車に比べるとハンドル下のノブで本当にワンタッチでした)。

二輪なので常時点灯というわけですが本体下のブルーのLEDがSF感漂う。

 電動キックボードは、どうやって乗るのか個人的に想像できなかった。バイクみたいにアクセル開いたらシートごと自分を運んでくれるわけじゃない。キックボードだけ先にいっちゃわないか? と思っていたが、そこは、今回、レクチャーしてもらってすべて氷塊。最初は、自分の足で蹴りだしてやり動いたところでアクセルレバーを倒すとパワーがかかる仕掛けだったのだ(したがって停止時にレバーをいじっても動かない)。

 乗り方は、以下のビデオを参照のこと。公道走行可能とするため保安部品としてベスパみたいにハンドルの端に方向指示ランプ。先端を押すことでフラッシャー状態となります。あまりにもラクチンなので、いいことづくめかというとタイヤ径が9インチなので地面を選ぶのは間違いありません。また、雨天走行には対応していないようだ。



最高速度が3段階で調整可能。全体に安心感のあるシッカリした作りになっている。

 これで、最大負荷100キログラム、トップスピード時速40キロメートル、充電4時間で40キロメートル走行可能(条件によるようです)。ということで、ZERO9のマーケティング・広報を担当されている新井秀美さんに先導されて、いざミニ走行会となりました。途中、写真撮影など3分くらいやったけど以下のようなルートを43分間の走行してきました。

浅草橋の技研ベース
↓(ほぼ道なり)
JR秋葉原駅

万世橋警察前通過

中央通り

明神下付近ぐるり

ラジオデパート
↓(記事冒頭の写真撮影)
中央通り

マルツ秋葉原本店

末広町交差点

中央通り

天神下
↓(登坂テスト)
本富士警察署前(本郷三丁目の手前)

サッカーミュージアム入り口
↓(坂をくだる)
湯島聖堂前交差点

神田明神下

ヨドバシアキバ横
↓(ほぼ道なり)
浅草橋の技研ベース

グーグルのロケーション履歴より。神田明神下のグルリがきれいに記録されていなようなので、実際には画面にある5.7キロメール以上の走行だったと思います。

 走行に際してZERO9のハンドル前にInsta360 ONE Xをとりつけて撮影。以下のビデオでは、カメラが大きく揺れるためハンドルがバタバタしているように見える部分がありますが、実際は、空気タイヤを履いているためこんな感じの振動はほとんどない。長時間走行は疲れそうに感じるが、むしろ18キロの軽い本体の取り回しのラクさのほうが印象に残った。ということで、ビデオをご覧あれ。ジワジワと楽しさが伝わってくるはず。



きわめてスムーズに走っている感じはいかがですねね? 道路条件がよいのはありますが。

 バイクや自転車と違い、なんとなく自分がツーッと並行移動して空間を滑る感じが気持ちいい! 視点が高いことと視界が限りなく開けていることで想像よりもずっとリラックスして走らせることができました。さすがに、中央通りや本郷通りから秋葉原の駅前に出る国道17号線など交通量の多いところは、十分に交通安全の配慮が必要。逆に、狭い道は歩行者の迷惑にならないように注意が必要なのはいうまでもありません。

 ZERO9の予約販売価格は10万9800円(近日中発売予定)。ちょっと高めの自転車という価格帯といえる。私は、本郷6丁目に住んでいるので秋葉原(家から2.5キロ)や神保町(家から2.3キロ)まで出かけるのにはちょうどよいゲタの感覚で使えそうな感じである。

 電動キックボードは、いろんなニュースが、毎週のように出てくるホットなジャンルである。その中でも驚いたのが、中国から米国への輸出品目として、1位「スマートフォン」、2位「PC・情報処理機器」のあと3位として「三輪や二輪のスクーター」が食い込んでいる。MIT Media LabのMacro Connectionsによって作成された可視化データをもとにした記事なのだが、「Tricycles, scooters and similar wheeled toys and other toys」という表現ながら図を見ると少なくともメインは電動キックボードのことを言っているようだ。これが、米中貿易戦争かまびすしきおり、実に、1億2000万ドルという金額になっている。

 Uberやフォードまでこの分野のベンチャーを買収するといった動きも目が離せない。個人的には、ホンダが「6輪時代」と謳った初代シティ+モトコンポみたいな世界も楽しいと思う。つまり、クルマのトランクルームに載せて移動先でチョコマカと活動する足にする。キックボードといえば、ホンダが1974年に発売した「ローラースルーGOGO」も楽しかった(いちどしか乗ったことはないが=ホンダが電動キックボードを出すとどうなるのか?)。

 電動キックボードには、セグウェイの登場のときほどの驚きはない。セグウェイが凄いのは「前に動きたい」と思った瞬間に動くことだ(「前に体重をかけると」などと説明されるが実際は気持ちだけで前に動くところが凄い)。しかし、2012年に上海にでかけたときに「市内は電動バイクしか走れない」という中国の電動モビリティ事情の勢いは衝撃だった(「上海の電動スクーターと鉄板三輪車の地獄ロード」ご覧あれ)。本当のところは、IT業界に閉じたシェアリングエコノミーに関する話題ではなく、100年に一度といわれるモビリティの世界の一大変化の中で見るべきなのだろう。自動運転やMaaSやそれによる都市交通や社会全体の変化の中でとらえられるものなのだ。個人の近所の移動はもう少し気軽にできてもいいですよね(必要なときにパッと使う傘なみに気軽になったらいい)。

ZERO9を折り畳んだ状態の前輪。ディスクブレーキのおかげでキックボードにありがちなギューッという停まり方よりも利きがよいとのこと。

メーターパネル部。モードボタンで3段階の最高速度の調整が可能。

ハンドル部分を折りたたむためのレバー。全体にかなりガッチリした作りになっている。

 ZERO9で「おっ?」と思ったのは、全体を起動するカギ(クルマやバイクのイグニッションキーのようなもの)がないことだ。停車してその場を離れる場合には車輪かハンドルにワイヤをかけるしかない。最初にキックして走らせないとアクセルが働かないからそれで十分なのか? このあたり思想的に、電動キックボードの気軽さがあらわれているということか。方向指示も一定時間で切れるしかけ。

 しかし、電動キックボードの本質は、やはり「いまここにいた自分が次の瞬間に5メートル先に移動している感覚」だ。それは、脳みその中で「あすこに移動したい」と信号が発せられたときにそれをスマートに形にしてくれる精神的な機械だ。なにしろ、SF映画の世界では、必ずそんなふうなスクーターがただし空中を浮いて飛んでいるでしょ。そういう子どもっぽい憧れの世界も電動キックボードには詰まっている。

 『メカ屋のための脳科学入門-脳をリバースエンジニアリングする』 (高橋宏知著、日刊工業新聞社)という私が近年読んだ中でも最も面白かった本の1つの中に「コサインチューニング」という言葉が出てくる。それは、人間の腕は文字どおりアーム構造になっているけど、脳から手を動かす信号は三角関数の極座標的な値になっているというような話だった。人間は、数学的に二次元とみなしてよい地表にへばりついて生きているから、電動キックボードを走らているときも同じような数学的な値が脳ミソの中でカラカラ動いているとしたら楽しい。

電動キックボードに吸い寄せられる人たち。浅草橋から秋葉原にはちょうどよいし、蔵前や御徒町のインド食材買い出しにもピッタリだ。


【参考リンク】
技研ベース http://real.gikenbase.com/
ZERO9 https://zero9.hop-on.jp/

遠藤諭(えんどうさとし)

 株式会社角川アスキー総合研究所 主席研究員。月刊アスキー編集長などを経て、2013年より現職。雑誌編集のかたわらミリオンセラーとなった『マーフィーの法則』など書籍の企画も手掛ける。角川アスキー総研では、スマートフォンとネットの時代の人々のライフスタイルに関して、調査・コンサルティングを行っている。著書に、『近代プログラマの夕』(ホーテンス・S・エンドウ名義、アスキー)、『計算機屋かく戦えり』など。キックボードは、アスキーが初台にいた頃フロアが広いので当時は誰も知らなかったRAZORを購入(その後ブームが来たのはご存じのとおり=スタッフは編集長が遊んでいると思っていたようだが仕事の一環である)。キックボードと旅行カバンが合体したMicro Luggageは、発売と同時に購入。こちらも私物なのにスタッフが仕事でイベント会場で使ったりした。

Twitter:@hortense667
Facebook:https://www.facebook.com/satoshi.endo.773


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