男なら、助手席に彼女を乗せてデートする夢を一度や二度、妄想したことがあるハズ。屋根を開けてのオープンドライブに、女の子も大喜び。筆者もその御多分に漏れず、その夢を抱いたドリーマーです。
筆者がホンダの軽スポーツカー「S660」を買った理由は、100%仕事の足なのですが(もともと車そのものを買うつもりがなく。詳しくは初回を参照)、女の子とオープンカーデートしたいという野望(欲望)がなかったのかというとウソになります。正直申し上げるなら、ぜひともしてみたい。
S660は「究極のデートカー説」を提唱したい!
恋愛の教科書というかハウツーサイトによると「女の子と対面で食事をするレストランより、バーなどのカウンター席がオススメ」というのを読んだことがありませんか。それによると目線が合わずに近い距離になる環境が、緊張せず親密になるコツなのだとか。助手席に女性が座る車デートはまさにその状態で、さらに言えば二人だけの密室。つまり自動車は恋愛成就にうってつけの環境で、その昔は「デートカー」という言葉も生まれました。
デートカーの代表といえば、ホンダのプレリュードでしょう。リトラクタブルのヘッドライトを採用したスタイリッシュなボディーラインに、サンルーフ装備の2ドアクーペ。今見てもカッコイイ1台です。男子はそんなカッコインテグラなクルマを買い求め、東京Walkerのような総合情報誌を熟読し、最新トレンドや話題を頭に叩き込んでデートプランを考案。
「親が出てきたらどうしよう」と思いながらドキドキしながら女の子の自宅に電話をしてデートの日程を取り付けて、イタリアレストランを予約してティラミスを食べ、夜の海や山でサンルーフ越しに2人で星空を見上げたとか。それはそれは就職戦線異常ナシのバブル全盛期、日本が輝いていたよき時代のことでした。
あれから30余年。数多くの恋を実現したプレリュードを世に送り出したホンダから誕生したS660は、よく見るとデートカーの要素が満載。リトラクタブルではありませんが、LEDヘッドライトを搭載したスタイリッシュな2ドアのボディーは、誰が見てもカッコインテグラです。さらに軽自動車規格ゆえの、運転席と助手席がとても近く、否が応でも女の子と接近するレイアウト。しかも、サンルーフどころか屋根がガツンと開くではありませんか。
まさにロマンチックが止まらない、とはこのこと。何よりホンダの企業コピーは「Power of Dreams」。女の子とデートしたいという男の子の夢に力を与えてくれるのです。理論上、いや私の妄想上においてS660は「究極のデートカー」といっても過言ではありません!
ですが筆者は購入して3年半、S660でデートをしたことはありません。なぜなら彼女がいないから。よって今回「本当にS660はデートカーになりうるのか」を検証してみたいと思います。
オープンカーデートに大興奮! のハズが……
別記事で出演されているコスプレ・バイク女子の美環さんに、筆者は持てる勇気をすべて振り絞り「あ、あの……っ、次の現場まで、お送りしましょうか? せっかくですので……」と、何がせっかくなのか、自分でもよくわからないまま、挙動不信な声をかけてみました。まさに女の子の家に電話をする時のような気分です。
すると美環さんは愛らしい無邪気な笑顔で「いいんですか? じゃあお願いしまーす」と即返答のOKサイン。マジ天使ではありませんか。美環さんのパパはNB型のロードスターに乗っていらっしゃるので、きっと親子でオープンドライブを楽しまれているでは、と誘ってから思い出したのですが「あの……オープンカーって初めてなんですけど」と意外な一言まで。これは期待できそう。
しかし、美環さんが車の前に来た途端、大問題が発生。彼女「荷物多い系」の女子だったのです。街で大きなカバンやトートバッグを持つ女性は珍しくもない光景ですが、まさかのバッグ2つだったという予想外の展開。
2座席のクルマを見るや美環さんは「荷物はトランクに入れますね」とさも当然かのような対応。しかし「え? トランクないんですか? ホントにないんですか? 後ろはエンジン? 前は? 何これ? って、これクルマですよね?」と、驚かれている様子。世の中の車、すべてにトランクがあると思ったら大間違いなのです。結果どうなるかというと、彼女の足元に2つのバッグを置くことに。フロアマットはいつもダイソンのハンドクリーナーで綺麗にしているのですが、申し訳ない気持ちになります。
そして私が運転席に座ると、あまりの近さに思春期に戻ったかのような心臓の高鳴りを抑えることができません。これがどれだけ近いのかというと、サイドブレーキを解除しようとすると、左手が美環さんの太ももに触れそうになるのです。当然ながらここで触れたらセクハラですので、かなり神経を使います。
そんなうろたえる筆者をよそに、美環さんは「え? まぁ近いですけれど、私小柄だから全然気になりませんよ」とのこと。ちなみに美環さんのバッグは足元の運転席側に寄っているため、彼女は少し体を斜めにして座る形になっているのも影響しているのでしょう。
それより美環さんの心配は「あの、風が入り込んで髪の毛が乱れないんですか? 寒くないんですか?」といったところに集中。「大丈夫ッスよ。空気は頭の上を通過するだけですし、そもそも天井から頭出ていませんから」ということで、いざ発進。
オープンカーの助手席に女子。これから俺の東京ラブストーリーが始まるぜ! とルンルン気分を抑えることができません。途中、原宿駅前を通り、冬はイルミネーションがきらめく表参道の並木道へ。オープンカーで走ると満天の綺羅星に圧倒されるこの通り道。きっと美環さんも、ときめきメモリアルな気分になること間違いナシで「ここ、クリスマス時期はすごいですよねー」などと世間話をしつつミラー越しでご尊顔を拝したところ、ややご機嫌ナナメに。
次第に車内はかなり気まずい空気が流れ、ついに美環さんから「あの……屋根、閉めていただけませんか?」との一言が。こうして10分と絶たずに美環さんのオープンカー体験は強制終了。「オープンカーって素敵ですねっ」という筆者の妄想および予定原稿は見事なまでに打ち砕かれたので、原稿を大幅に書き直しました。
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