戦わずにチャンピオン獲得!
翌日に行なわれた追走トーナメントは、やや肌寒い曇り空の中で開催されました。小橋選手と藤野選手の走りをただただ見つめる以外に、何もできない横井選手。小橋選手がベスト4、藤野選手が決勝まで進んだ段階で、横井選手のシリーズチャンピオンはなくなります。
小橋選手のベスト16対戦相手は、今年D1デビューでヴァリノタイヤ勢のエース・中村選手。過去全戦全勝している相手です。しかし、小橋選手はミスをしてまさかの敗退。これに横井選手は「中村よくやった」と大喜びです。
いっぽうの藤野選手は、ベスト16戦を難なくクリアしベスト8戦へ。対戦相手はベテランで小橋選手のチームメイト末永選手。追走1本目は両者コースアウトでほぼイーブン。注目の2本目、先行する藤野選手に対して末永選手が詰め寄って末永選手の勝利。この瞬間、横井選手のシリーズチャンピオンが決定しました。
勝たずにチャンピオンというのは、D1の歴史の中でもそうないのではないでしょうか。「神は僕を選んだ」と冗談を言う横井選手ですが、内心はかなりヒヤヒヤだったようで「正直99.9パーセント、チャンピオンが取れないと思った」そうです。
決勝戦は中村選手と末永選手の対戦。中村選手は勝てば自身はもちろん、ヴァリノタイヤ勢としても初勝利。末永選手も約6年ぶりの勝利になります。ここで中村選手が見事な走りを魅せて勝利。勝ち名乗りを受けた中村選手は雄たけびを上げて喜びを爆発。そして表彰式ではファンと関係者の前で「色々な人に恩返ししたくて……ありがとうございます。長かったですけれど……ヴァリノタイヤが優勝できてよかったです。ホンマにダメな自分だったんですけれど……ありがとうございます」と涙ながらに語るや、場内は暖かい拍手に包まれました。
2019年シリーズチャンピオンとなった横井選手は「本当に尻下がりなシーズンだったんですけど、前半でしっかりポイントが取れてよかったと思います。また2連覇は難しいことなのでうれしく思います。来年はニューマシンを投入し、スリータイムズチャンピオンを目指します」と力強く宣言。
さらに「去年2連覇して世界も取ると言ってFIAに挑んだものの、上手く走れなかったので、もう一度チャンスを得たと思って頑張りたいと思います」と12月に筑波サーキットで行われるドリフト世界一決定戦「FIAインターコンチネンタル・ドリフティングカップ」に向けての意気込みを語りました。
来年20周年を迎えるD1グランプリ。開幕戦は4月25~26日の2日間、聖地である福島県・エビスサーキットで開催されます。今シーズンのように横井選手が開幕ダッシュを決めるのか、それともチームの地元であり、エビス3勝をしているエビス・マイスターの小橋選手をはじめ、ライバルが阻止するか。注目です!