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夢の技術! 自動運転の世界 第16回

テーマパーク化が成功し注目の箱型EVも続々登場した東京モーターショー

2019年11月14日 12時00分更新

文● 鈴木ケンイチ 編集●ASCII編集部

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テーマパーク型モーターショーは正解だった

 「第46回東京モーターショー2019」は10月24日(木)に開幕し、3連休の最終日となる11月4日(月・休)に閉幕となった。12日間の会期中の来場者数は130万900人。前回の2017年は77万人から大幅に増加しただけでなく、100万人を突破するのは約142万人を記録した2007年以来。つまり12年ぶりに盛況なショーとなったのだ。そんなモーターショーも終わって1週間。改めて総括してみたい。

 正直、今回の東京モーターショーは2つの大きなハンディがあった。ひとつは東京オリンピックの都合により、会場が2ヵ所に分散してしまった。動線は過去最悪と言っていいだろう。また、海外ブランドの大多数の欠席という問題もあった。参加したのはメルセデス・ベンツとスマート、ルノー、アルピナだけ。

 そうした逆境を跳ね返すべく主催者が設定したのが「OPEN FUTURE」というテーマだ。自動車メーカーだけでなく、家電やIT系企業、さらにはキッザニアなどにも参加を要請。クルマに留まらぬ、未来の生活を提案するという内容になった。実際に見て回った印象としては、“クルマのテーマパーク”という雰囲気のショーとなっていた。その筆頭がトヨタブースだ。量産車はゼロ。数十年先の自動車社会を体験できるテーマパークだった。

 同じようにメガウェブを使った「FUTURE EXPO」や、パーソナルモビリティを揃えた「OPEN ROAD」、同乗イベントを開催する「DRIVE PARK」などを揃え、“並べたクルマを見る”だけではなく、“体験する”ショーとなっていたのだ。

 ちなみに来場者数は、無料エリアである「FUTURE EXPO」を含むものであり、会場となったお台場エリアはもともと観光地。東京モーターショー目当てではない人もいたであろう。それにしても130万という数字は立派なもの。そもそも先進諸国のモーターショーは、どこも低調なのだ。どの国も海外ブランドの出展撤退にともなうドメスティック化が進んでいる。

 そうした中、いち早く従来とは違う形のショーを模索したのが今年の東京モーターショーなのだ。そして、その結果が130万人という数字として出た。次回の東京モーターショーも、こうしたテーマパーク路線が踏襲されるのではないだろうか。

自動運転や電気自動車は多く展示され
未来への提案になった

 一方で、展示された内容はというと、これも悪くなかった。トヨタは、自動運転の箱型電気自動車である「e-pallet」の進化版を出品。2020年の東京オリンピックにて運用を行うと発表した。また、2020年に発売予定の軽自動車以下の新規格EVコンセプトと、次世代の水素自動車であるMIRAIも出品している。ホンダは新型フィットとEVのホンダeを出品。日産はSUVと軽自動車サイズのEV、三菱はガスタービンPHVのコンセプトと軽自動車の新型モデル(コンセプト)だ。マツダは量産EVであるMX-30であり、スバルは新型レヴォーグ。スズキは新型ハスラー(コンセプト)と自動運転の箱型EVを含むコンセプト2台、ダイハツは新型の小型SUVと同じく自動運転箱型EVを含むコンセプト4台という内容だ。

 量産EVや自動運転のコンセプトだけでなく、人気の量産モデルが並ぶなど、話題の車両が数多くあり、内容は充実していたと言えるだろう。

 個人的には、ライドシェアを前提にした自動運転の箱型EVの提案が数多くあったところが、今回のショーの注目ポイントではないかと感じた。いわゆるMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)を体現するのが、自動運転の箱型EVだ。

 トヨタの「e-Palette(東京2020オリンピック・パラリンピック仕様)」を筆頭に、「TOYOTA e-4me」「TOYOTA e-Care」、ダイハツの「Ico Ico(イコイコ)」、スズキの「HANARE(ハナレ)」が出品されていた。MaaSで重要なのは、クルマ自体ではなく、それをどのように使うのか? というところ。A地点からB地点まで自動で運ぶだけではビジネスにならない。何らかのサービスと組み合わせて、はじめて世界を変える可能性が生まれるのだ。そういう意味で、今回の提案は未来に向けての重要なヒントとなることだろう。

 現在は5G実用化の直前だ。あと数年もすれば、次世代通信である5Gが普及する。そうなればCASEは一気に進化することが予想される。コネクテッドは当然のこと、自動化も新サービスも生まれやすくなる。つまり、2年後の東京モーターショーは、通信といった土台がアップデートすることで、技術全体が大きく進化する。

 つまり、技術や通信インフラの進歩といった土台がアップデートしてくれなければ、なかなか魅力的な提案もできないということ。いわゆる足踏み状態だ。しかし、2年後には5Gも実用化されているだろうし、自動運転技術も進化しているはず。進化した技術をベースにした、100年に一度の大変革期にふさわしい、あっと驚くような提案を期待したい。

筆者紹介:鈴木ケンイチ


 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。

 最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。



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