――今後の展開について教えてください。
まず現状はフィットネストレーナーやスポーツクラブに向けたBtoBtoCのビジネスモデルになっていますが、将来的にはエンドユーザーに直接使ってもらえるようなツールの開発を考えています。
また、オンラインツールの提供だけでなく、オフラインでの展開として自社ジムの運営も検討中です。ただ、アメリカに比べれば日本の個人のフィットネスの需要は小さい。その理由のひとつに、保険制度の違いがあります。アメリカでは病気や怪我をしてから病院に行けば多額の治療費がかかるため予防としてフィットネスへの関心が高いのです。一方、日本は比較的簡単に病院へ行くことができます。
前提の違いがある限り、海外の模倣ではうまくいきません。日本独自の形を模索していきたいと思います。あとは、ハードウェアの開発も考えていきたいですね。ハードウェアはデータの起点になりますから。
私たちがこの事業を開始するにあたって「スポーツは儲からないから辞めたほうがいい」という声をいただくこともあります。私自身は「自分の身体に合ったスポーツ指導を届けたい」という創業時からの想いを大切にしていますが、『スポーツ=儲からない』というイメージがあることは事実です。そして、そのイメージは変えなければいけない。そのために必要なのは『結果』。AIによるコーチングでプロアスリートを輩出できるようなレベルを目指してプロダクトを磨いていきたいと思います。
――データを活用したスポーツ・フィットネス指導ができれば、トレーナーやジムはコストが削減でき、彼らの顧客は定量的な情報を元に個人に合わせたトレーニングを受けることができる。それは業界全体の優秀な指導者不足や、スポーツ現場での怪我や事故を防ぐことにも繋がる。スポーツ産業は、テクノロジーやデータ活用によって、もっと改善していくことができるのだ。しかし、それがなかなか進まないのも事実だ。後半では高久代表が感じた、スポーツ業界の指導現場とビジネス現場それぞれ課題について伺った。