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IFA 2019レポート 第29回

IFA 2019で見えた、欧州スマート家電の現在地

2019年09月26日 09時00分更新

文● 山本 敦 編集● ASCII編集部

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 ドイツ・ベルリンで開催されたIFA 2019は、世界でも類を見ない大規模な「スマート家電の展示会」でもある。日本よりもスマート家電の普及が進んでいると言われるヨーロッパの現状を今年もIFAで取材した。

多くの来場者でにぎわうボッシュのブース

ヨーロッパではスマート家電が
「当たり前」になりつつある

 ボッシュとシーメンスがドイツを代表する世界規模の総合家電ブランドでもあることは、日本ではあまり広く知られていない。特に冷蔵庫や洗濯機などの白物家電はヨーロッパの人々から圧倒的に支持されている。

 ボッシュのグループ傘下の企業、B/S/H(Bosch Siemens Housegerade)は特にインターネットにつながるスマート家電の開発に積極的だ。2015年の創立以来、ソフトウェアの共通プラットフォームである「Home Connect」に対応するボッシュとシーメンス、両ブランドの製品ラインナップを勢いよく拡大してきた。ボッシュとシーメンスがIFA 2019に出展するブースを見るとヨーロッパのスマート家電の現在地がとてもクリアに見えてくる。

シーメンスがIFAで発表した洗濯機と乾燥機の新製品。Home Connectアプリにインテリジェントな操作ができるだけでなく、互いに連携して衣類の素材や色合に合わせた洗濯から乾燥までのプログラムをネットワーク経由で共有しながら効率よく行なう。

シーメンスの洗濯機やエスプレッソマシーンなど様々なカテゴリーの家電製品がスマートスピーカーによる音声操作ができることをしっかりとアピールする展示スペースもあった

 今年はボッシュ、シーメンスのブースにはともに表面上は目新しいスマート家電が置いていないように見えた。でも実は昨年までに洗濯機に冷蔵庫、オーブンやIHクッキングヒーターまで主要な白物家電の製品カテゴリーの“スマート化”を終えて、今年はラインナップの裾野をプレミアムレンジからミドルレンジにまで落とし込み、「Home Connect」のモバイルアプリはユーザーインターフェースの改善を絶えず行ない、料理の電子レシピを提供するコンテンツベンダーとの提携も増やした。スマートプラットフォームの足腰が徹底的に強化されていたのである。

シーメンスのレンジフードもアプリやスマートスピーカーによる操作に対応している

ボッシュが新しく発売するプレミアムライン「SilenceEdition」の静音性能を紹介する特別ルームでの展示。コースによっては洗濯機が稼働していることがわからないほど静かな操作音を実現していた

 IFAのブースでは、もはやスマート家電の存在感を前面に打ち出していなかった理由をボッシュのスタッフに訊ねたところ、「ボッシュ、シーメンスの白物家電はスマートであることがもう“当たり前”なのです」という力強い言葉が返ってきた。2年前ぐらいにIFAでボッシュとシーメンスのブースを訪ねたときには、スマート家電は両社のプレミアムレンジのモデルに位置付けられていたので、筆者の予想よりも速くラインナップが一気に拡大した印象を受けた。

ボッシュがコンセプトモデルとして出展した、ボタンによるインターフェースを極力廃した次世代の洗濯機。センサーやボイスコントロールにより必要な操作に賢く対応する

Home Connectアプリのパートナー。IoTデバイスにドイツの大手通信事業社、クッキング&ショッピング系のアプリベンダーが多数名を連ねている

Home Connectアプリは今秋にアップデートを予定している。収録されているレシピコンテンツの拡大、ユーザーインターフェースのブラッシュアップが行なわれた

 ボッシュの洗濯機や食洗機については、より本質的な家電の価値である静音設計を追求したプレミアムラインの「SilenceEdition」がIFA 2019の開催に合わせて発表された。多くの来場者でにぎわうブースの一角に、防音設計を施した特設展示スペースを設けて、新製品の“静かさ”を前面にアピールしていた。

 ドイツの高級家電ブランドのミーレも毎年IFAに大規模なブースを出展している。ミーレはスマート家電の立ち上げについてはボッシュやシーメンスよりもやや遅れた印象があるものの、今はメジャーなカテゴリーの白物家電のスマート化を完了していると同社のスタッフが話している。今年のIFAではキッチン家電を中心に実用性の高いソリューション「MIELE@HOME」として提案していた。

ミーレのブースでは「Cook Assist」サービスのデモンストレーションを見ることができた

Alexaに対応するスキル化されているサービスはスマートディスプレイを用意すると、レシピや調理法を目で見ながら便利に使える

 モバイルアプリの「Cook Assist」はタブレットに入れたり、Alexaを搭載するEcho Showなどスマートディスプレーにも最適化されている。作りたい料理のレシピを検索して、料理の進行をアプリに管理してもらったり、スマート家電の設定を調理の進行に合わせて自動で変更してくれるサポーター役を担っている。その便利な使い勝手をデモンストレーション付きで紹介していた特設スペースにはいつも多くの人だかりができていた。

ミーレのビルトイン型オーブンもAlexaによる音声コントロールに対応している

「Cook Assist」の画面。料理の手順を視覚と音声による情報で伝えながらナビゲーションしてくれる

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