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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第528回

ワークステーションをRISC設計に移行させたHP 業界に多大な影響を与えた現存メーカー

2019年09月16日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII.jp

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小型、高性能化した
HP 9000シリーズを出荷

 CS-1に続き、当時としてはもう少し現実的なNMOS(NMOS-III:1μmプロセス)を利用して製造されたのが1987年のNS-1である。

さすがにワンチップにはならなかったものの、1ボードで完結する程度には小型化された。おそらくこれはローエンドのHP 9000/825S用のもので、ハイエンドのHP 9000/840Sでは8チップ構成となっている

 こちらは最大で30MHz駆動が可能とだいぶ高速化され、性能も最大で14MIPSまで向上した。ただNS-1はTS-1の各ボードをそのままNMOS VLSIに置き換えたような形になっており、例えばキャッシュは16KBと128KB、TLBサイズは2048エントリーと4096エントリーの2種類があるという、あまり他では見ない構成になっている。

 これを利用したのはHP 9000シリーズで、1987年にHP 9000/825S・835S・840Sという名前で発表され、1988年から出荷が開始されている。

HP 9000シリーズ。いずれもデスクサイドタイプで、価格はローエンドのHP 9000/825Sで3万5000ドル、ハイエンドのHP 9000/845Sで5万9500ドルほどだった

 このNS-1はプロセッサーバスとして32bit幅のCTB(CenTral Bus)が、I/O Busとして16bit幅のCIB(Channel I/O Bus)が用意されており、CTBはCPUボードそのものの動作周波数にあわせてバスのスピードも可変になっていた。

 またCTB経由で2枚のCPUを装着することも可能で、実際デュアルプロセッサー構成の製品もカタログには掲載されていた(実際に出荷されたかは謎)。パイプラインは3段で、物理アドレスは29bit対応となっている。

 これに引き続き、1989年に開発され、1990年に製品出荷が始まったのがNS-2というチップである。

NS-2。LSIのパッケージが大型化しているほか、WEKTEKのFPUが搭載されているのも目を引く。CPUの周囲にキャッシュ用と思われるSRAMが密集して配されているのも特徴的

 プロセスは引き続き1μmのNMOS-IIIながらパイプラインが5段になり、またCPUボードは7チップ構成ながらオンボードキャッシュが命令/データ分離で最大1MBまで利用可能となった。

 さらにTLBも最大16384エントリーまで増強されるなどしており、動作周波数そのものは最大で30MHz(製品としては27.5MHzどまり)ながら性能はやや改善している。このNS-2はHP 9000/822・832・845・855・860の各モデルで採用された。

 HP 9000シリーズだけでなく、HP 3000シリーズにもNS-1/NS-2プロセッサーは採用された。1988年4月に発表され、1988~1989年に出荷されたのが、NS-1を搭載するHP 3000/925・925LX・935・955の各シリーズである。

 このうちHP 3000/925・925LXは即時出荷開始、HP 9000/935は1988年末・HP 3000/955は1989年の出荷となった。

 ローエンドの925と925LXは3.2MIPS、ハイエンドの955は11MIPSという性能で、その分価格も925LXで5万ドルから955で39万ドルとずいぶん開きがある。

 ちなみにLXは32bitの意味で、つまり925は従来のHP 3000(Classic 3000という言い方もある)とのソフトウェア互換性があるが、925LXは新しい32bit版のみの対応という形である。

 ただNS-1や後継のNS-2で、当初約束していた「HP 3000 Series 68比で互換モードでは2倍」の性能が実現できたかと言われると微妙なところで、これは次のPCXまで待つ必要があった(続く)。

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