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足裏の感覚を再現、歩行を楽にする新しい義足

2019年09月11日 07時46分更新

文● Charlotte Jee

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ETH Zurich

神経系のフィードバック・ループを、人工装具で再現する実験が始まっている。

両足で歩行する人間は、神経と脳の間で絶えず交わされるフィードバックに依存して歩いている。だが義足使用者の場合、この脳と足の間で繰り返されるフィードバックを持っておらず、自然な歩行が難しい。9月9日、ネイチャー・メディシン誌(Nature Medicine)に発表された新しいバイオニック義足は、足を失った人が以前のように地面を「感じて」歩行を楽にすることを目指している。義足は、チューリッヒ工科大学、ベオグラード大学、フライブルク大学の研究者が開発した。

仕組みはこうだ。まず患者の大腿に残っている神経に、小さな4つの電極を埋め込む。次に、新たに開発したアルゴリズムで、義足の膝部分と靴底のセンサーから発せられるデータを電気信号に変換。これらの信号を電極を埋め込んだ大腿の神経を通して脳が解釈すると、患者はそれに合わせて足の動かし方を調節できる。

3カ月間の一連の試験に参加したボランティア被験者は、神経系フィードバックを使った場合と使わなかった場合を交互に繰り返した。すると、神経系フィードバックを使って歩行したときのほうが肉体的・精神的負担がはるかに少なかったことが分かった。人工装具の感覚フィードバック・システムに関しては、人間ラットを使った試験がいくつか実施されているが、リアルタイムで膝上切断者のこの種のフィードバックの復元が示されたのは、今回が初めてだ。

新しい義足は、切断患者の多くが経験する幻肢痛も軽減することが分かった。幻肢痛とは、体の失われた部分がまだそこにあるかのようにその部分に痛みを感じる症状で、不快なうえ現在治療法はない。幻肢痛に苦しめられていた2人の被験者のうち、1人は試験終了までに痛みが完全になくなったと話し、もう1人は痛みが80%軽減したと報告した。

ボランティアによる試験は3カ月間実施されたが、まだ概念実証段階に過ぎない。さらに長い期間、被験者を増やして試験を重ねる必要がある。成功すれば、患者への永久移植という希望が開かれるだろう。

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