このページの本文へ

さとうなおきの「週刊アジュール」 第111回

VMのHBv2/Dav3/Eav3/NVv4シリーズがプレビューに

Azure Storageの地理ゾーン冗長ストレージ(GZRS)が登場

2019年08月30日 10時00分更新

文● 佐藤直生 編集 ● 羽野/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 こんにちは、さとうなおきです。「週刊アジュール」では、2019年8月4日~2019年8月10日の1週間に発表されたMicrosoft Azureの新機能から、筆者の独断と偏見で選んだトピックについて紹介していきます。

Azure Storage:地理ゾーン冗長ストレージ(GZRS)、アーカイブアクセス層の値下げ、FilesのAzure AD DS認証

 ストレージサービス「Azure Storage」の一機能「Azure Blob Storage」は、オブジェクトストレージサービスを提供します。

 Azure Storageは、これまで、次の4つの冗長オプションを提供していました

  • ローカル冗長ストレージ(LRS)
  • ゾーン冗長ストレージ(ZRS)
  • 地理(geo)冗長ストレージ(GRS)
  • 読み取りアクセス地理(geo)冗長ストレージ(RA-GRS)

 今回、新たな冗長オプションである「地理(geo)ゾーン冗長ストレージ」(GZRS)、「読み取りアクセス地理(geo)ゾーン冗長ストレージ」(RA-GZRS)のプレビューが始まりました。

 GZRSでは、ZRSと同様に、プライマリリージョン内の複数の可用性ゾーンにわたって3つのデータレプリカに同期的に書き込きます。さらに、GRSと同様に、そのデータをリージョンペアになっている別リージョン(セカンダリリージョン)の単一ゾーンに非同期でレプリケートします。

 GZRSでは、レプリケート先の別リージョンで読み書きできませんが、RA-GZRSでは、レプリケート先の別リージョンで読み取り可能になります。GZRS、RA-GZRSでは、セカンダリリージョンにフェールオーバーした後は、セカンダリリージョンで読み書き可能になります。

 GZRS/RA-GZRSは、GRS/RA-GRSとZRSの両方の特性を兼ね備えることで、可用性ゾーンの障害、リージョンの障害の両方に対応可能な冗長オプションとなっています。

 現時点では、GZRS、RA-GZRSは、米国東部リージョンでのみ利用可能であり、今後、利用可能なリージョンが追加される予定です。

Azure Storageの冗長オプション

 Azure Blob Storageは、ホット、クール、アーカイブという3つのアクセス層を提供しています。

 今回、アーカイブアクセス層の価格が、最大50%値下げされました。

 ストレージサービス「Azure Storage」の一機能「Azure Files」は、SMBプロトコルベースのファイル共有サービスを提供します。

 Azure Active Directory Domain Servicesは、Active Directoryドメインコントローラーのサービスを提供するサービスです。

 今回、Azure Active Directory Domain Servicesを使ったAzure FilesのActive Directory認証が、GA(一般提供)になり、次の新機能も追加されました。

  • アクセス許可を割り当てる際の、Windowsエクスプローラーとのシームレスな統合
  • 新たに組み込まれたロールベースのアクセス制御(RBAC)による、共有レベルのアクセス管理の簡素化

 詳細は、次のページをご覧ください。

Azure Active Directory Domain Servicesを使ったAzure FilesのActive Directory認証

Azure Virtual Machines:HBv2/Dav3/Eav3/NVv4シリーズ

 IaaSの仮想マシン(VM)機能を提供するAzure Virtual Machinesで、次のシリーズが発表されました。

  • HPC:AMD EPYC 7002プロセッサを搭載する「HBv2シリーズ」(プレビュー)
  • 汎用、メモリ最適化:AMD EPYC 7452 プロセッサを搭載する「Dav3、Eav3シリーズ」(プレビュー)
  • GPU:AMD EPYC 7002プロセッサ、Radeon MI25 GPUを搭載する「NVv4シリーズ」(秋にプレビュー開始予定)

 現時点では、HBv2シリーズは米国中南部、西ヨーロッパリージョンで、Dav3、Eav3シリーズは米国東部リージョンで利用可能です。NVv4シリーズは、米国中南部、西ヨーロッパ リージョンで利用可能になる予定です。

 詳細は、次のページをご覧ください。

HBv2、HBv1を比較したベンチマーク結果

 Azure Virtual Machines上のRed Hat Enterprise Linux(RHEL)向けのHigh Availability Add-Onで、次のアップデートがありました。

  • Pacemakerのアップデート(Azure Fencing Agentのパフォーマンス改善、フェールオーバー時間短縮)
  • High Availability Add-Onを備えたRHELの従量課金(PAYG)イメージの提供

 詳細は、次のページをご覧ください。

Azure Site Recovery:Azure Disk Encryptionを使うWindows VMのDR

 Azure Site Recoveryは、様々な環境のVMや物理サーバー間のディザスターリカバリー(DR)/移行サービスです。

 Azure Site Recoveryで、Azure Disk Encryptionが有効にされたVMのディザスターリカバリー(DR)がサポートされました。

 マネージドディスクを使うWindows VMがサポートされており、マネージドディスクを使うLinux VMも間もなくサポートされる予定です。

Azure Disk Encryptionを使うWindows VMのディザスターリカバリーの構成

Azure Migrate:移行プロジェクトの地域としての日本のサポート

 Azure Migrateは、オンプレミス環境のAzureへの移行を支援する無料サービスです。オンプレミス環境の検出、アセスメント、依存関係のマッピング、VMのサイジングなどが可能です。そして、Azure Site Recoveryを使ったAzure Virtual Machinesへの移行、Azure Database Migration Serviceを使ったAzure SQL Databaseを行うことができます。

 Azure Migrateの「移行プロジェクト」の地域(検出されたメタデータの格納先)として、これまでサポートされていた米国、ヨーロッパ、アジア太平洋、英国に加えて、日本、カナダ、オーストラリア、インドがサポートされました。

Azure Cloud Shell:Azure Functions CLI、Puppet Bolt、HashiCorp Packerなど

 Azure Cloud Shellは、ウェブベースの管理コンソール「Azure Portal」、iOS/Android アプリの「Azureモバイルアプリ」、shell.azure.comで使えるCLI環境です。

 Azure Cloud Shellで、次の新しいツールが利用可能になりました。

  • Azure Functions CLI
  • Puppet Bolt
  • HashiCorp Packer

 また、Azure Cloud Shellで、次のツールがアップデートされました。

  • Java Development Kit 8.40.0.25
  • Azure PowerShell
  • Azure CLI

 詳細は、次のページをご覧ください。

Azure Cost Management:新しい予算作成エクスペリエンス

 Azure Cost Managementは、マルチクラウド環境での使用料金の管理、監視、最適化のためのサービスです。

 Azure Cost Managementで、新しい予算作成エクスペリエンスがリリースされました。予算の作成時に、次のことが可能になりました。

  • Azure Cost Managementの標準ディメンションに基づいて、予算をフィルター処理する
  • 予算に関係する以前のコストと予想されるコストを表示して、適切なしきい値を特定する
  • 将来の期間について予想される最大のコストに基づいて、推奨される予算を表示する

 予算APIの新バージョンでは、Azure Cost Managementのすべてのディメンションをサポートするフィルター機能が、利用可能になりました。

Azure Cost Managementでの、将来の期間について予想される最大のコストに基づいた推奨される予算の表示

Azure App Service:App Service Diagnosticsのナビゲーター

 Azure App Serviceは、ウェブアプリ、ウェブAPI、モバイルバックエンドをホストするためサービスです。

 WindowsベースのAzure App ServiceのApp Service Diagnostics(App Service診断)で、「ナビゲーター」が利用可能になりました。

 ナビゲーターは、アプリとその依存関係に関する変更が含まれた、一元化されたビューを提供します。これによって、ウェブアプリの依存関係を特定し、トラブルシューティングで変更を確認できます。

App Service Diagnostics(App Service診断)のナビゲーター

Azure API Management:8月のアップデート

 Azure API Managementは、既存のAPIに対するAPIゲートウェイのサービスです。

 6月19日のアップデートに続いて、Azure API Managementの8月のアップデートがリリースされました。OpenAPI仕様のエクスポートに対する機能強化などの新機能があります。

Azure Kubernetes Service (AKS):監査ログ

 Azure Kubernetes Service (AKS)は、マネージドKubernetesサービスです。

 3月にプレビューになっていたAzure Kubernetes Service (AKS)の監査ログが、GAになりました。

 監査ログを使うと、Kubernetes APIサーバー(コントロールプレーン)に対して行われた呼び出しの記録の維持、不審なAPI要求の調査、統計の収集、望ましくないAPI呼び出しに対する監視アラートの作成を行うことができます。

Azure Kubernetes Service (AKS)の監査ログ

Visual Studio App Center:WPF/Windows Formsサポート

 Visual Studio App Centerは、iOS、Android、Windows、macOSアプリケーションのビルド、テスト、配布、監視のためのサービスです。

 Visual Studio App Centerで、WPF、Windows Formsのサポートがプレビューになりました。

Visual Studio App Centerでの、WPFアプリケーションの診断

 HockeyAppからVisual Studio App Centerへの移行に関する、7月のアップデートがまとめられています。

  • HockeyAppからVisual Studio App Centerへのアプリの移行
  • ビルド番号によるクラッシュグループのフィルター
  • tvOSアプリの作成

 詳細は、次のページをご覧ください。

HockeyAppからVisual Studio App Centerへのアプリの移行

Azure DevTest Labs:共有イメージギャラリー

 Azure DevTest Labsは、VMベースの開発/テスト環境の用意を容易にするサービスです。

 Azure DevTest Labsで、Azure Virtual Machinesの共有イメージギャラリーを使う際に、これまでは、共有イメージの最新バージョンしか使えませんでした。

 今回、共有イメージの以前のバージョンも使えるようになりました。

Azure Cognitive Services:Azure Active Directory認証、カスタムサブドメイン

 Azure Cognitive Servicesは、画像認識、音声認識、自然言語処理といった、AIを活用したAPIサービスです。

 Azure Active Directory(Azure AD)は、ID/アクセス管理機能を提供するサービスです。

 Azure Cognitive ServicesのAzure Active Directory認証(パブリックプレビュー)を使用すると、Azure Active Directory、またはユーザープリンシパルを使ってAzure Cognitive Servicesに対する認証を行うことができます。

 現時点では、Azure Cognitive Servicesの一部のサービスがAzure Active Directory認証をサポートしており、残りのサービスは近日中にサポートする予定です。

 また、Azure Cognitive Servicesで、カスタムサブドメインがパブリックプレビューになりました。カスタムサブドメインを使うと、リソースごとに固有のエンドポイントを利用できます。Azure Active Directory認証を使うには、カスタムサブドメインを使う必要があります。

Azure Database for PostgreSQL/MySQL/MariaDB:New Relic

 Azure Database for PostgreSQLAzure Database for MySQLAzure Database for MariaDBは、PostgreSQL、MySQL、MariaDBベースのリレーショナルデータベースサービスです。

 監視サービス「New Relic」が、Azure Database for PostgreSQL/MySQL/MariaDBの監視をサポートしました。Azure MonitorのメトリックなどをNew Relicに取り込んで、監視とアラートのために利用できます。

  • Azure Database for PostgreSQL/MySQL/MariaDBのデータを、New Relic Oneダッシュボードで表示する
  • カスタムクエリを実行し、New Relic Insightsでデータを視覚化する
  • アラートの条件を作成し、データの変更について通知する

 詳細は、次のページをご覧ください。

Azure Cosmos DB:Python SDK

 Azure Cosmos DBは、複数のデータモデル/APIをサポートしたグローバル分散型のNoSQLデータベースサービスです。

 Azure Cosmos DBのPython SDK V4のプレビューがリリースされました。

Azure Cache for Redis:4.0

 Azure Cache for Redisは、インメモリデータストアであるRedisベースのキャッシュサービスです。

 Azure Cache for Redisが、Redis 4.0にアップデートされます。このアップデートは自動的に行われます。

Azure Databricks:ユニットの事前購入プラン

 Azure Databricksは、Apache Sparkベースの分析プラットフォームのサービスです。

 Azure Databricksユニット(DBU)の事前購入プランの提供が発表され、GAになりました。事前購入プランでは、1年間、または3年間のAzure Databricksユニットを事前購入することで、従量課金より最大37%コストを節約することができます。

Azure Databricksユニットの事前購入

Azure Data Factory:タンブリングウィンドウトリガーの依存関係

 Azure Data Factoryは、データ統合サービスです。

 Azure Data Factoryで、タンブリングウィンドウトリガー間に依存関係を追加できるようになりました。依存関係を作成すると、依存するトリガーが正常に実行された後に限り、トリガーが実行されることを保証できます。

Azure Data Factoryでの、タンブリングウィンドウトリガー間の依存関係の構成

 Azure Data Factoryパイプラインを、ガントビューで監視できるようになりました。

Azure Data Factoryパイプラインのガントビューでの監視

Azure IoT Edge:Azure Blob Storage on IoT Edge

 Azure IoT Edgeは、分析やビジネスロジックをクラウド側ではなくエッジ側で実行できるようにするサービスです。

 「Azure Blob Storage on IoT Edge」は、Windows、Linuxの両方でGAになりました。

 Azure Blob Storage on IoT Edgeは、ローカルのブロックBlobストレージを提供する、軽量でなAzure IoT Edgeモジュールです。ローカルのブロックBlobストレージからAzureへの、データの自動アップロードも可能です。

Azure Active Directory:カスタムロール

 Azure Active Directory(Azure AD)は、ID/アクセス管理機能を提供するサービスです。

 Azure Active Directory向けのカスタムロールが、パブリックプレビューになりました。

Azure Active Directory向けのカスタムロールの作成

 それでは、また来週。

カテゴリートップへ

この連載の記事