2019年7月9日、Slackの導入事例を紹介するセッション「Why Slack?」が開催された。今回で7回目となるWhy Slack?には文藝春秋やハフポスト日本版、電通デジタルなどメディア関係の企業が登壇。Slackを導入し、活用するまでの興味深いエピソードが紹介された。
紙の文化が強い文藝春秋で部署間コミュニケーション強化のためにSlackを導入
文藝春秋は大正12年に創設された老舗。今では「文春砲」のイメージが強いが、芥川賞や直木賞の幹事も行なっている。創業100年近くが経った今でも、編集現場の力が強い、紙文化の会社だという。
「21世紀になってコンテンツを横断して扱うウェブメディアが生まれ、2017年に文春オンラインというウェブメディアができました。週刊文春の記事を中心として、独自のコンテンツも取り入れています。そのため、部署を横断することによって、調整業務が増え、関係者間の情報格差が広がっていきました」と文藝春秋 オール讀物・別冊文藝春秋編集長 大沼貴之氏は語る。
当時、すでにSlackは導入されていたのだが、そのまま放置されていたそう。そんな時に、デジタル・デザイン部の浪越あらた氏が入社し、社外の開発者と仕事をする際に、コミュニケーションツールとして眠っていたSlackを掘り起こして使うようになった。これを機に部内のコミュニケーションをSlackに切り替えられないか、と浪越氏は考えた。
Slackのフリープランを導入してから1年くらいはほとんど使われていなかったが、文春オンラインで本格活用が進み、社内コミュニケーションに使われ始めた。加えて、オール讀物や出版営業や電子書籍でも使い始めた結果、ワークスペースが乱立するという課題が発生したという。
そこで浪越氏は乱立しているワークスペースを統合することにした。すると、やりとりされるメッセージ数や利用するメンバー数が右肩上がりに増えていくようになった。その後、半年経過すると、メンバーが社員の3分の1を占めるようになる。そこで、Slack Japanから担当者を呼んで、役員向けと社員向けに説明会を行なった。
「役員はSlackを使っていませんでしたが、『役員プレゼンまでしたSlackってなに?』と社員が興味を持ったのが大きかった」と大沼氏。2019年7月時点では、社員の54.6%が導入済みになったそう。
Slackを導入することで、多数の変化が起きた。情報を探す時間が激減したうえ、状況確認のための会議がなくなった。鮮度のいい情報のやりとりが可能になり、作業ボリュームも把握できるようになった。
「個人で抱えていた情報の資産が会社の資産として蓄積されてきました。たとえば、プロモーションをするときに過去の良かった事例をSlackから探して活用するといったことが実際に起きています」(浪越氏)
もちろん、他部署とのコミュニケーションは円滑に行なわれており、課題だった情報の格差も縮まりつつあるという。