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日立の炊飯器とオーブンレンジがおしゃれになった:

大手メーカーも注力「おしゃれ家電」

2019年07月18日 09時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)

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 2歳児くんの保護者をしています盛田 諒ですこんにちは。最近バルミューダなど新興メーカーの影響もあってか大手メーカーのおしゃれな家電が増えているのをごぞんじですか。

 たとえばシャープのドラム式洗濯乾燥機、パナソニックの紙パック式掃除機、三菱電気のブレッドオーブン。日立が6月22日に発売した炊飯器とオーブンレンジも落ち着いたデザインで、キッチンにしっくりなじみます。どんなことに気を配って開発したのか、日立の家電部門にあたる日立グローバルライフソリューションズが7月10日に開催したメディア向けセミナーで話を聞きました。

●シックな見た目の炊飯器

 炊飯器もオーブンレンジも「Less but Seductive」(控えめだけど魅了する)をコンセプトにすっきりとしたデザインになりました。

 炊飯器「ふっくら御膳」は黒を基調としたシックな見た目になりました。また本体には少量のお米もおいしく炊きあげる「少量」ボタンを用意。以前まではメニューから探し出す必要がありましたが目立つ位置にボタンをつけたことで使いやすくなっています。

 機能面では、京の米老舗・八代目義兵衛とコラボレーションした「極上ひと粒炊き」機能を搭載。橋本晃治八代目料理長の炊き方を再現し、外がしっかり、中がふんわりした「外硬内軟」の炊き方ができるようになっています。具体的には、(1)40℃の低温で浸水させる(2)火を入れるときは1.3気圧で一気に加熱する(3)火を入れながら高温で蒸らすという3工程がポイントだそうです。

「極上」ボタンを用意

 新しいふっくら御膳で炊いたコシヒカリを試食してみたところ、たしかに米粒同士がくっついてしまうようないやな粘りがない、すっきりした炊きあがりになっていました。口に入れた瞬間ではなく、噛んだ瞬間に甘みが広がる味わいがありました。

しゃっきりおいしい極上ごはん

●説明が減ったオーブンレンジ

 オーブンレンジのヘルシーシェフは大きくデザインが変わりました。

 キーコンセプトはスマートフォンなどと同様のフレーム(枠、額縁)です。上部のハンドルはフレームと同化して目立たなくなりました。パネルやボタンまわりの説明文はぐっと減り、よく使うボタンだけが目立つようになっています。また、時間などを設定するダイヤルリングは運転中だけ別の色で光るようになり、遠くからでも運転状況がわかるようになりました。カラー展開は特徴色だった赤がラインナップからはずれ、なじみのいい白と黒のモノトーンになっています。

ハンドルが同化したデザインに

 機能面では従来同様に、重さと温度を測る「Wスキャン」が特長。食材の分量にあわせて火加減を自動的に変え、加熱ムラをおさえる仕組みです。

 Wスキャン技術が活かされるのが自動調理機能。今年は新たな自動調理メニューとしてクックパッドの殿堂入りレシピ30種を追加しています。通常はお鍋やフライパンで作るためのレシピですが、日立がヘルシーシェフのためにレシピを開発しなおしたそうです。ロールキャベツを作るときは通常耐熱ガラスボウルを使いますが、新製品では耐熱プラスチックボウルも使えるということです。

 もうひとつの特徴機能はWi-Fiでスマホにつながるコネクテッド機能。家までの移動中、公式アプリにおすすめの献立が届くので、材料や作りかたをチェックしながら帰れるというもの。アプリからは自動調理レシピを本体に転送することもできます。先ほどのクックパッドレシピも転送可能です。

スマホから自動調理レシピを転送

 会場ではクックパッドの殿堂入りレシピのひとつからロールキャベツを試作・試食しました。あらかじめヘルシーシェフで加熱した玉ねぎとひき肉をボウルに混ぜ、タネにして、やはりヘルシーシェフで加熱したキャベツに包みます。スープを注いだらボウルを庫内に入れ、アプリでレシピを本体に転送。スタートすると食材の分量を自動で判断して、最適な火加減で調理をしてくれます。結果しっかり中まで火が通り、とろりとおいしいロールキャベツができました。

クックパッドで人気のロールキャベツ

●老舗も時代にあわせてきた

 日立には技術力勝負のメーカーというイメージがあったため、時代にあわせたコンセプトを入れたところには関心させられました。

 一方、今までのデザインは売り場で埋もれないことを意識して過飾ぎみになっていたという話には若干驚かされました。オーブンレンジのハンドル部分の主張が強いのは目立たせるため、ボタン周りの情報が多いのは多機能であることを主張するためのねらいもあったというわけです。消費者にとって売る側の事情は関係ないのではないかと疑問に感じるところもあり、家庭で使いやすいことを最優先とするコンセプトに変わったことは本当によかったと思います。

 クックパッドのレシピにしても若干惜しいと感じる部分がありました。

 日立は「時間はかけられないがおいしい料理をつくりたい」「スマホでレシピサイトを参考にしていることが多い」など働く親の悩みに応える形で「スマホアプリからオーブンレンジに転送する自動調理メニューにクックパッドの人気レシピを30種類追加した」といいます。私見では、忙しくてクックパッドを使っている人の多くは「じゃがいもたまねぎ豚ばらレシピ」など冷蔵庫にあるもので作れそうで比較的おいしそうなレシピを探すために使っています。連携自体は面白いのですが、レシピを30種類に固定してしまうと本来の価値とはややズレてしまいそうです。

 海外のいわゆるスマートキッチン業界では、家電メーカーWhirlpoolが2017年にレシピサイトYummlyを買収したような形で連携が進みつつあります。せっかくクックパッドと連携するなら「ヘルシーシェフレシピコンテスト」を開いてWスキャン調理ならではのレシピを集めたり、なんらかの業務提携をして調理行程のすべてにかかわるなど、もう一歩進んだ展開に期待したいところです。

自動調理に追加されたレシピ

 あるいはコネクテッド機能を活用して働く親の期待にこたえるなら、たとえば「耐熱ボウルにあけてヘルシーシェフでチンするだけで本格中華」といった調理キットを用意して、いつでもアプリで注文できるようにしておき、同じく自動調理の設定を本体に転送できるようになっていたらいいのではないかと思いました。「せめて一品くらいレトルトや冷凍食品ではないものを作りたい」と思い、生協などの調理キットを買ってフライパンや鍋でサッと料理している人は少なくないと思います。オーブンレンジを調理器具と考えて同じことができたら便利ではないかな、と感じました。

 家事育児の疲れもあってかねちねち言ってしまいましたが、大手の家電が時代にあわせて変わっているのはうれしいことです。日立の炊飯器やオーブンレンジは技術がすぐれているにもかかわらず、他の大手メーカーと比べてわりと手ごろな価格帯になっているのも特長のひとつ。コンセプトが現代的になってきたこともあり、購入検討時には選択肢に入れておくことをおすすめします。




※お詫びと訂正:橋本晃治八代目料理長の名前に誤りがありました。お詫びして訂正します。(7月20日)

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